第4話 チートの解除、無理すぎね??
朝。
俺は教室に入って三秒で悟った。
今日も……モテすぎて……しんどい……!!
「ユウくん、おはよう!」
三条アカリが爽やかに腕を組んでくる。
「あ、あのっ……昨日書いた詩の続き、読んでほしいの……。」
百瀬ユキがノートを差し出す。(題名:『君の呼吸のリズムで世界が脈打つ』なんか怖い)
ほんとチートって……便利じゃなくて……災害じゃん……!
「ほらあんたら、ユウの心のキャパオーバーするから離れなさい。」
ひよりがずいっと間に入ってくる。
まるで編集者に守られる売れっ子新人作家みたいな扱いだ。
「あ、ありがとう……ひより……。」
「礼なんていらないわよ。あんたがこのままじゃ、精神的に倒れて保健室で点滴コースだから。」
「そんな未来予知やめて!そんなことにはならないから。」
でも確かに限界は近い。
このままじゃ……俺、社会的にも精神的にもダメになる……。
よし、決めた。
チート解除だ!!
◇
俺は放課後、ひよりを引っ張って砂場へ向かった。
「ちょ、いきなり腕つかまないでよ! 誰かに見られたら――。」
「ひより、一緒に来て。チートスキル解除の手伝いをしてほしい。」
「……は?何を言ってるの?」
砂場の前に立つ。
そして――お約束のように呼んだ。
「神さまぁぁぁ! 出てこい!!」
ズボッ。
「呼んだか?」
「出てくるの早すぎ!」
「今日は浅めに埋まっておったのでな。」
「砂に埋まる前提をやめろ!!」
とにかく、俺は神に訴えた。
「チートスキル……解除したいです!」
「ふむ。」
神はヒゲをしごきながら言った。
「解除方法は三つある。」
「三つもあるの!?」
「だが全て困難だ。」
「もう既に嫌な予感しかしない!」
横でひよりが腕を組む。
「……神様にチートスキルってほんとのことだったのね。それで、その3つって何よ。」
神は指を1本立てた。
「うむ。1つ目はスキルを上回る純粋な愛を、誰かから向けられることだな。」
「つまり、チートより強い愛情を受ければ……スキルは無効化されると。」
「そんな都合よく本気の愛なんて向けられないよ!!」
「ユキちゃんから既に向けられてる気がするけど?」
ひよりが冷静に言った。
「いやユキちゃんのポエムは純粋というより熱量100%だから……!もはや何か怖いぐらいだから!」
「失礼よ。それはそれで純粋よ。」
「ひよりが普通に擁護してるの珍しい!」
「失礼ね。ユウ以外には私も普通に優しいのよ。」
「なんで、俺以外なの!?」
ちょっとした絶望感に浸っていると、神から声がかかった。
「そろそろ、次にいっていいかの?2つ目の解除方法は、スキルを授けた神より上位の存在に頼むことだな。」
「上位……って、何?」
「わしの兄とか姉とかだな。」
「神様って家族制なの!? 設定ゆるっ!」
「兄が管理職でな。わしは下っ端でな……。」
「身内の事情暴露しないで!なんか切ない!?」
「ただし、上位神は滅多に出てこぬし、気まぐれだ。」
「つまり現実的じゃないと」
「そういうこと。」
ひよりが小声でつぶやく。
「……あんた、下っ端の神なんかにチートスキル任せるからこういうことになるのよ。」
「返す言葉もない。いや、下っ端とはいえ、神様なんだけどさ!?」
「おぬしら、下っ端下っ端っというでない。神じゃぞ。」
神の後ろに哀愁が漂っている。
「3つ目の解除方法は、スキル対象外の人物と両想いになることだな。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
3人とも無言になった。
「え、それ……ひよりしか……いなくない?」
「気づいたか。」
「ちょ、ちょっと待って!?その理屈おかしくない!?なんであたしなのよ!」
「スキルが効かぬ者と両想いになれば、スキルは必要なしと判断されて消えるという仕様なのだ。」
「そんな乙女ゲーム的仕様ある!?」
ひよりが顔真っ赤になる。
「てか待て、両想いって……。」
俺もなぜか急に心臓がドキッとした。
ひよりは、耳まで赤くなりながら言う。
「べ、別に!あたしがユウを好きとか、そういうんじゃないから!!解除方法として言ってるだけで!」
「じゃあ俺は――。」
「言わないでいいから!!」
「ひよりの反応が青春すぎるんだけど!?」
「うっさい!!」
神はしれっと言った。
「まあお主達が両想いになれぬのなら、解除は無理じゃな。あきらめよ。」
「放置しないでください!?こっち修羅場になりそうなんですけど!?」
「ではな、人間よ。わしは砂に戻る。」
「帰るの早っっ!!」
神はズボンッと沈んでいった。
本日の仕事、終了らしい。
残された俺とひよりは――沈黙。
砂場の前で、妙に距離が近い。
「……あのさ、ひより。」
「な、なによ。」
「解除……どうする?」
「……知らない。でも、あんた1人がしんどそうなのは、見てられないわよ。」
ひよりが目をそらしながら、ぽつりと言った。
その横顔が、いつもよりちょっとだけ可愛く見えてしまった。
ああもう……チートより……ひよりが一番厄介だ……!
俺は心の中で頭を抱えた。




