第3話 幼なじみは今日もツンデレ
―― 天海ひより視点 ――
最近、ユウが騒がしい。
いや、元々騒がしいんだけど……その、なんていうか。
違った意味で騒がしい。
教室に入れば女子がわらわら寄っていくし、廊下を歩けば誰かしらが声をかけてくる。
まるで学園のアイドル。
いや、チヤホヤされすぎて、もはや宗教の教祖みたいでもある。
なんなのよ、あれ……。
私は机に頬杖をつきながら、ユウの横顔を見る。
女子たちに囲まれて困ってる顔。
困るくらいなら最初からヘラヘラ笑わなきゃいいのに。
……とうか、完全に変よね。
だって少し前まで、ユウなんか友達さえ少なかったというのに。
……神ねぇ。
まあユウだし、空想の友達くらい出来てもおかしくないけど。
でも……昨日のあれは……。
三条アカリちゃんは、ユウの隣で目をキラキラさせて、「ユウくんと特訓する!」なんて宣言するし。
百瀬ユキちゃんは、真っ赤な顔でポエム渡してたし。
「砂に落とした一粒の恋心があなたの足跡で波紋を広げる」とかなんとか……。
悲しいけど、ちょっとだけ良い表現だったの悔しい。
……おかしい。
これは絶対何かある。
◇
昼休み、屋上へユウを迎えに行くと、案の定女子二人に囲まれていた。
私は二人の間をスッと割ってユウの腕をつかむ。
「はいはい、ちょっとユウ借りるわよ」
「え!? 天海さん!?」
「ず、ずるいです……!」
「ずるくない。幼なじみ特権」
私は意味不明な理屈でその場を制した。
なんか勝てた気がした。
てか……あの二人、攻めるの早すぎない?
心の中で苦笑しながら、ユウを連れて階段を降りる。
腕をつかんだままなのに気づいて、そっと離す。
……なにやってんの、あたし。
別にユウのことを意識してるわけじゃない。
ただ、見てて危なっかしいから。
あの人、好意向けられるとすぐテンパるし。
「なぁ、ひより……あのさ」
「なに?」
「……みんなの態度、やっぱり変だよな。」
ユウはしょんぼりしながら言った。
幼犬みたいな顔で。
……ずるいわね、その顔。
「まあ、変よ。確実に何かやらかしたわね、あんた。」
「神にチートスキルもらっただけで……。」
「だけって、いろいろとおかしいじゃない。」
本当は笑いたかった。
でもなんか、胸の奥がそわそわして、素直に笑えなかった。
だって……チートスキルって、つまり……。
他の女子はユウに夢中になってる。
あれはユウの魅力じゃなくてスキルのせいなんだろうけど。
でも……なんか気に入らない。
そう思ってしまった自分に驚く。
「ひより?」
「な、なによ。」
「最近……ひより、ちょっと冷たくない?」
その一言に、心臓が跳ねた。
ちょ、なに急に……!
「べ、別に……いつも通りでしょ。むしろあんたのほうが、最近女子にデレデレされすぎで変わったんじゃない。」
「ち、違う!あれはチートのせいで……!」
「知らないわよ、そんなの。」
そっぽを向く。
なんか、妙に――むずがゆい。
……なに、この感じ。
昔からこんなことなかったのに。
「ひより……もしかして、その……嫉妬とか……。」
「――してない!!」
階段に声が響く。
顔が熱い。
絶対赤くなってる。
「ユウなんかに嫉妬するわけないでしょ!」
「あ、あぁ……そうだよね……。」
ユウは少しだけ、残念そうに俯いた。
……あれ?
ユウの残念そうな顔を見ると、ちょっと罪悪感が出てくるのはなんでなの?
「……ほら、一緒に帰るんでしょ。行くわよ。」
私はふっと息を吐いて歩き出す。
ユウの足音が後ろからついてくる。
……まあ。
チートがどうとか関係なく……。
あたしは、ユウが困ってたら放っておけないだけなんだから。
そう自分に言い聞かせながら。
でも胸の奥は、
なぜかほんの少しだけ、くすぐったかった。




