第2話 チートの副作用、発覚する
放課後。
ついに俺は覚悟を決めて、砂場へ向かった。
理由は単純。
――女子たちの好感度が高まりすぎて、怖い。
三条アカリは朝から俺をトレーニングメニューに巻き込もうとしてくるし、百瀬ユキは俺の机にポエムを置いてくる。(しかもちょっと気合い入れすぎてて怖い)
なんでみんな全力なんだ……!!
軽い好意くらいに調整できないのか、このチート!!
「おーい、神様……。」
砂場をそっとつつく。
「……おるぞ。」
「いたッ!?」
砂の中から上半身を出しながら、神様が無表情で出てきた。
慣れたけど出現方法どうなってんだ。
「どうした人間よ。恋愛成就は順調か?」
「順調なわけないでしょ!!」
俺は事情を説明した。
女子たちが過剰にアプローチしてくること、ひよりだけ通常営業で逆に心がしんどいこと。
「なるほど。スキル<ラブマキシマイザー∞>の副作用だな。」
「今初めて聞いたんだけど!?!?」
「言い忘れておった。」
「あんた神様の自覚ある!? 説明不足は炎上案件だぞ!!」
神は適当に砂を払った。
「このスキルは――お主が一瞬でも気になると思った相手に、自動的に最大効率で好意を増幅するのだ。」
「あぁーーー! 昨日俺、ちょっとでも女子を見たら可愛いかもって思ったやつだ!!」
「そう、それが原因じゃな。」
「俺の男子高校生的思考のせいで周囲が大被害!? やめてくれぇ!!」
「修正はできぬ。」
「なんで、できぬなんだよ神様ァァ!仕様に副作用に、変なこと多すぎだろ。」
◇
教室に戻る途中、ひよりがたまたま出てきた。
「ユウ、どこ行ってたの?」
「あー……ちょっと神に相談を……。」
「また砂神?」
「違うってば!!普通の神様だって。」
ひよりは俺を見るなり、ふっとため息をついた。
「でも……まあ、あんたらしいわ。」
「な、なにが。」
「チート使ってモテまくって、パニック起こしてるあたりとかね。普通、喜ぶところよ?」
「いや怖いんだよ! プレッシャーすごいし!」
「アカリちゃん、あんたと一緒にマラソン十キロ走る気満々だったしね。」
「そんなに走れないって、死ぬわ!!」
「ユキちゃんなんて、図書室で真田くんへの愛の短歌コーナー作ってたし。」
「趣味が高度になりすぎてる!?」
ひよりは肩をすくめて笑う。
「まあ……あんたはそのままでいいんじゃない?」
「いいんじゃないで済む問題か!? ひよりは平気なの?」
するとひよりは、一瞬だけ目をそらした。
「……まあ、別に。あたしにはチート効いてないみたいだし、問題ないわ。」
その声が、なんか少しだけ寂しそうで。
なんだ……その言い方……。
「ってことで。ほら、帰るわよ。今日も付き合ってあげる。」
「え?ありがとう。」
「そうしないと、ユウはいろんな女子に襲われそうだしね。」
「そ、そんな怖いこと言うなよ……。」
ひよりは歩き出す。
俺はその背中を追いつつ、心の中で叫んだ。
なんでだよ……!
なんでチート効かないひよりのほうが……逆に気になっちゃうんだよおおおお!!
――こうして俺の恋愛チート生活は、副作用の波に飲まれながら、混迷を深めていくのであった。
神様!このスキルほんと何とかならないの!?




