第10話 日常最高!⋯⋯と思ってたら地獄が復活したんだか!?
スキルが解除された翌日。
俺は生まれて初めて、平和という概念を噛み締めていた。
登校しても女子が飛んでこない。
レンも普通に「おはよー、真田くん」と挨拶を交わすだけ。
なんだこれ。
超平和。
「……はぁぁ~~……最高……!」
俺は机に突っ伏して、涙が出るほど感動した。
「よかったわね。」
隣でひよりが微笑む。
昨日愛してると言われて真っ赤になった子とは思えない、落ち着いた顔だ。
……いや、ちょっと照れた顔もしてるか……?
「ひより、ほんとにありがとな。マジで救世主だった。」
「……別に。たまたまよ。」
ひよりはそっぽを向くが、耳がほんのり赤い。
日常……。
戻ってきたんだな……。
――と、その時。
突然、胸の奥がポクンッと跳ねた。
「あれ? なんか今、変な感じが。」
ひよりが俺の顔をじぃーっと見てきた。
「……ユウ。なんか今、光ったわよ?」
「光ってない光ってない! 俺は妖精じゃないし、光らないから!?」
「いや、光ってたわよ。今度は何したの?」
その直後。
「ユウくん……今日、なんかすごく……いい匂いする……。」
「ユウくん、今日いつもより神々しく見える……。」
「真田くん……私、またあなたのこと……ちょっと気になって……。」
女子たちが、わらわらと集まってきた。
ひよりが静かに呟く。
「……おい。」
「は、はい。」
「スキル発動してるじゃない?」
「ぎゃあああああああああ!!!!!」
俺の絶叫が教室に響いた。
◇
十分後。
俺は校舎裏を全力疾走していた。
「近寄らないでええええ!!!」
「ユウくん待ってー!」
「ユウくん! 私のポエム読んでほしいな。」
なんでだよ!!
解除されたんじゃなかったのかよ!?
ひよりに愛してるって言ったのは黒歴史になる覚悟だったのに!
は必死に逃げながら叫ぶ。
「ひよりぃぃぃ!! 助けて!!!」
振り返ると、ひよりが腕を組んで歩いてきた。
「……昨日、解除されて喜びすぎて、逆にスキルが目を覚ましたんじゃないの?」
「そんなことあるの!?そんな仕様ってこと!?」
「なのかしら?」
冷静すぎる。
「なんとかしてくれーー!!!」
「昨日、愛してるの一撃で解除されたんだから……もう1回、言ってみれば?」
「無理無理無理無理!!あれは奇跡の勢いだったんだよ!!今は無理ー!」
ひよりは眉をひそめ、顔を赤くしてそっぽを向く。
「……じゃあ、そのままにしていれば?」
「……言います。」
この子ほんと強い……。
女子たちが追い迫る中、俺はひよりの前に立った。
「ひより……っ!」
「な、なによ。」
「もう1回だけ言うぞ……。」
ひよりは真っ赤になりながら目を逸らす。
「べ、別に……私はどっちでもいいけど。一応、聞いておくわ……一応……ね?」
うわあああああああああ言いづれぇぇぇぇ!!
でも俺は振り絞った。
「――ひより!!俺、ひよりのことを愛してるぞ!」
――その瞬間。
背後から三条アカリの声が飛んだ。
「ちょっと真田くん、それ私にも言ってよ!」
「私にも!」
「真田くん、僕のことはどうなのさ?」
……あれ?
みんなの様子が変わらない。
「昨日と違うわね。言葉ぐらいではだめなんじゃない?」
ひよりは呆れ気味にそう言う。
いや、なんで、今度はだめなのさ。
昨日と何が違うの!?
ひよりは額に手を当て、ため息をついた。
「……ユウ。」
「なに……?」
「あなたの日常、もう二度と戻らないわよ。」
「ぎゃあああああああああああ!!!!!」
こうして、平和な日常はわずか半日で幕を閉じたのだった。
―― 天海ひより視点 ――
みんなから逃げるユウを見送りながら、そっと息を吐く。
昨日はいきなりだったこともあり、ユウのことがほんの少しかっこよく見えたけど、やっぱりだめね。
私を落としたいなら、せめてキスの1つでもしてくれないと。
「一瞬だけでなく、ずっと私を本気にさせてよ。」
顔が赤くなると感じつつ、そっと呟いた。
これで本編は終わりです。
年末年始の短編どうでしたか?
楽しんでもらえてたら嬉しいです。




