【L】燃える廃墟
無尽都市アンカデラの地下には、廃墟ビル群の地域が存在する。この地域はPVP可能エリアで、言ってしまえばプレイヤー同士での殺し合いができるのだ。
アンカデラ廃墟群では、つい最近始まったイベントの関係で、様々なプレイヤーや彼らの傭兵が自らの獲物を探して徘徊している。
そんな廃墟地帯の中心では、世界が灼熱で赤く煮えたぎっていた。誰がそんなことをしたかと問われれば、……私がそうしたんだ。
自分の傭兵をこのエリアに解き放ち、思うがままに狩りをさせた。その光景を自分の妖精で確認していたのだけれど、何も心は突き動かされなかった。
だから、私は「猟犬」で無差別にプレイヤーをいたぶった、苦痛と屈辱に歪む表情を拝み続けた。なのに、一向に心は満たされない。
だから、一帯に油を満たした樽を配置して、何もかも気にせず心のままに焼こうとしたんだ。
それでも、私は満たされない。
なのに、それなのに。
「ねえ、ルルベリス。私が間違っているのだと、証明してみせて?」
貴女の表情だけは、私を簡単に満たしてくれる。満たして、苛んで、苦しませてくれるんだ。
私は、蔑んでほしかったのに。こんな狂った人間は私の友達ではないと、拒絶して欲しかったのに。
貴女はそれらを与えてくれない。ただ微笑んで、私に手を伸ばして、それなのに剣も銃もこちらに向けてくれない。
貴女は、何も私を咎めない。瓦礫に身を任せていないと上体を起こしていられない程に、何度も何度も傷付けたというのに。
こうして無意味に痛めつけているのに、貴女は私の罪を認めてくれないんだ。
「ねえ、ラズリア。早く逃げないと、私だけじゃなくて君も燃えちゃうよ?」
どうして、まだ私の心配をするの。
どうして、私を救おうとするの。
私の中で歯車が噛み合わない。生まれた不協和音が私の不安を駆り立てる。
貴女が私を狂わせる。だから、私は貴女に銃口を向ける。
私はいますぐにでも貴女の首を絞めたい。この腕の中で息絶える瞬間を見てみたい。
それなのに、貴女が傷付くのも見たくないんだ。
もう、何もかもが絡まって、私はそこから抜け出せない。
だから、私から離れていって欲しかったんだ。そのために、私は貴女を迷うことなくいま撃たなきゃいけなかった。
なのに、それなのに。向けた銃口は自然と下がってしまって、殺意と錯覚するほどに心は燃えているのに、無意識に溢れ出す愛着は引き金にかけた指を緩ませて。
私は、彼女の名前を呼ぼうとする。けれど、それは彼女の言葉に遮られてしまった。
「ねえ。戦争ごっこ、してみたかったんだ。先輩たちは楽しそうに話しているし、別ゲーでの戦争がそんなに楽しかったのか確かめてみたいと思ってた」
――だから。その言葉と同時に、ルルベリスはこちらの右肩を拳銃で撃ち抜いた。
握る力が緩んでいた私の銃は、肩を襲う衝撃とともに地面に勢いよく飛んでいく。
「ラズリア、長い長い戦争を始めようよ。殺して殺されて、その先に私は……」
彼女は不敵な笑みを浮かべながら、私の頭部に照準を合わせる。
「――必ず君をこの手に取り戻す。リリウムからも、シンフォリカからも、なんなら全ての人間から奪ってみせる」
ああ、きっと私は笑っていたんだろう。
そんな私を彼女は迷いなき瞳で貫きながら、その引き金を引いた。
復活回数はとうに使い切っていた。私の視界が青いエフェクトで覆われて暗転する前に、彼女の最後の言葉が聞こえた。
――愛してるよ。
ねえ、ルルベリス。そんなこと、知ってるんだよ。
だから、遊ぼうよ。
君の願い通り、殺し合おう。
私たちの殺し合いの先に何があるなんて分からないけど、君が望むならば。
思考にノイズが走る。そっか、私はきっと。
貴女を、好きになってしまってたんだと思う。
申し訳ないです、「俺達の戦いはこれからだ!」エンドです。
けれど、もし彼女たちの物語をちゃんと書けるだけの情熱が取り憑いたときは、絶対に別の作品という形で書くでしょうね。
その時は、「戦争を望んだ魔女の少女」の視点で、です。




