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【10万PV感謝!!】中年ニートの異世界転生 大魔導士スキルを貰い今度こそ気ままに生きる  作者: 村居 赤彦
地底世界 ラウドス編

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第九十七話


翌朝・・・と言っていいだろうか。

目が覚めてゆっくりと起き上がる。

窓に目を向けてみると外はもうすっかり明るくなっていた。

「どのくらい寝てた?」

とアイに聞くと

「時間にして約7時間程度です。

その間に報告するような事は何もありませんでした」

との事。

立ち上がって背伸びをした後、開かない窓から外を覗く。

「それにしてもあのスフィア球だっけ?どういう仕組みで動いてるんだろうな」

と呟くと

「どうやら空気中に漂っている目に見えない何かを吸収して、内部で増幅して動いているようです。

その魔力自体も人間の体に影響はないようですね。」

との見解だった。

「それって所謂<永久機関>的な事?凄いな・・・」

と驚いた後、椅子に座り暫くまったりしていた。

すると扉がノックされ、昨日晩御飯を持ってきてくれた男性が

「朝ご飯はどうしますか?」

と聞かれ

「お気遣いありがとうございます。

申し訳ありませんが、朝は食べないので結構です。

お気持ちだけ受け取っておきます」

と丁寧に断ると

「そうですか、分かりました」

と言いながら男性は静かに扉を閉める。

「良かったのですか?和食を堪能しなくて」

とアイに言われたが

「確かに昨日の夜は久しぶりの和食で感動したけど、1度食べればもう十分だよ。

それにさっきの男性の心の声で

(地上の人間向けの味付けは大変)

て考えてたでしょ?きっと俺達向けに結構調味料とかを余計に使ってるんじゃないかな?

そう思うとなんだか頂くのも申し訳なくてね」

と返した。

そんな雑談をアイとしていると扉がノックされる。

「失礼するよ」

とダグバンと昨日のお付きの2人が入って来た。

「眠れたかい?」

と聞かれ

「ああ、思いのほかよく眠れたよ。

晩御飯もありがとう。地上にない味付けだったから美味しくて感動したよ」

と礼を言う。

「気に入ってくれたなら何よりだ。

では、昨日の返事を聞かせてほしい。俺達に協力してくれるかどうか」

とダグバンが本題を切り出す。

「その前に聞きたい事がある。

仮に俺が協力するとして、こちら側、相手側に血は流れる事はあるのか?

誰かの命が失われる様な事はあるのか?」

創生神様に転生させてもらい魔物は討伐してきたが、それはあくまでも魔物。

言葉で意思の疎通が出来るうえ、そんな相手なら命のやり取りに参加などしたくはない。

「難しいな、昨日も言ったが内戦寸前だ。

致し方なく命のやり取りに発展してしまう事もあるだろう。

地上の人間にはそんな深い所まで関わってもらわない様にこちらも努力するが、偶発的な事もあるかもしれん。

協力してくれるならそれも覚悟しておいてくれとしか言いようがない」

と言われた。

このタイミングでダグバンの心の声を読んでみると

(意外と慎重な奴だな。こりゃぁダメかもな)

との事だった。

他の2人の心の声を読んだが、自分達が穏健派かどうかなど考えてはいなかった。

せめてダグバン達が本当に穏健派であるなら少しは考えるのだが、分からないのであれば決まりだな。

「そうか・・・では申し訳ないが協力は出来ない」

と言うと

「そうかぁ、だめか。

そういう事なら仕方ない。では地上に返す為の手順に入るんだがこの世界に関する記憶の部分だけを消す魔法をかけさせてもらう。

と言っても今すぐにここでって訳じゃない。

地上に戻す為の魔法陣が生成してある場所がある。

そこで記憶に関する魔法をかけてからアンタを地上に戻すという手順だ」

との説明に

「いつ戻すんだ?」

と俺が言うと

「いつでもいいぞ?今からでも、もう少しこの世界を堪能しても。

あ~、でも遠出は出来ないし、この周辺は何か面白い物は何もないから長居しても意味はないと思うがな」

と返された。

「じゃあ、早速地上に戻る準備をしてくれ」

と言うと

「分かった。ではこれから魔法陣がある場所まで行こう」

とダグバンの言葉と共に俺を含めた全員が立ち上がり、帰還用の魔法陣がある場所まで歩きだす。


建物を出てしばらく歩くと何もない草原に到着する。

「こんな地底世界にも草木は生えるんだな」

と思わず呟くと

「ああ。スフィア球は太陽と全く同じ働きをするから、植物はちゃんと育つんだ。

植物が育つという事は、光合成もするから空気もちゃんと生成される。

昨日出した晩飯もこのスフィア球によって育った大地の恵みって訳さ」

と説明された。

「凄い技術だな。

どんな仕組みで動いているか聞きたいところだが、聞いたところで俺の頭じゃきっと理解できないくらい複雑なんだろうな」

と自虐的な感想を言うと

「大丈夫。俺も一度だけ子供の頃聞いた事があるが、全く理解できなかったよ」

と笑いながら言われた。

意外と話が合う部分があるのか、自然と笑いがこぼれる。

「さて、名残惜しいが早速魔法をかけるか」

とダグバンが言うと、お付きの2人が俺の両側に立つ。

「目を閉じて、何も考えずにじっとしていてください」

と1人が言うと、もう1人が俺の頭に手を乗せる。

手を乗せた男性が何やら呪文を唱え始める寸前にダグバンの心の中を読んでみると

(惜しいな。上手くいけば俺達急進派の助けになってくれたかもしれないのに)

あ?俺達急進派?ダグバンは自分達を穏健派って言ってたろ?

そんな疑問が出てきた瞬間

「そこまでだ!ダグバン!」

と声がすると俺はびっくりして目を開ける。

するといつの間にか10名程の男性達が俺達を取り囲んでいた。

「今日こそは大人しくしてもらうぞ、急進派め!」

と男性達の1人が言うと

「チクショウ、何故ここがバレたんだ!」

とダグバン達が戸惑っている隙に肉体強化をかけて、ダグバン達から離れる。

取り囲んでる男性達の後ろに移動すると

「そこから動かないで!」

とリーダー格の男性に言われる。

取り囲んでいる男性達がジリジリとダグバンとの距離を縮めていくと

「全く、面倒くさい連中だな!」

と叫ぶと掌に何か光る物体を作り出すとそれを地面にぶつける。

その瞬間、辺りがまばゆい光に包まれ目を開けられる頃にはダグバン達はこの場から消えていた。

男性達がダグバンを捜索しようとすると

「無駄だよ。どうせ散り散りになってこの人数だと捜索のしようがない」

と男性達を止める。

「大丈夫ですか?」

とリーダー格の男性に聞かれ

「はい。無事です。貴方達は?」

と聞くと

「私の名前はシュルト。穏健派を纏めている者です」

と自己紹介された。

「穏健派?では、ダグバン達の方が急進派なんですか?」

と俺が聞くと

「その様子だと大体の事はダグバンから聞いているようですね。

私達が穏健派という事以外は」

と返される。

「あ、私の名前がアイカワ ユウイチと言います」

と自己紹介すると同時にシュルトと名乗る人物の心の声を読んでみる。

(ダグバンの奴、また不用意に地上の人間を召還したのか。

全く、いつになったら俺達穏健派の考えを理解してくれるんだ)

どうやらシュルト達は本当に穏健派らしい。

「何はともあれ魔法をかけられる前で良かった。

あのままあいつの口車に乗っていたら、今頃は魔法によって洗脳されて奴らの尖兵(せんぺい)にされていましたよ」

と言われた。

「ひとまず我々の村まで案内します。行きましょう」

とシュルトが言うと俺達はその村に向けて歩き出す。


来た方向とは逆の方向へしばらく歩くと、ダグバン達がいた場所とはまた違う、それなりの大きさの村に到着する。

その村の中にある大きな建物に案内されて中に入ると、初老の男性達が数名椅子に座っていた。

「貴方が急進派に召喚された地上のお方ですな?」

と1人が言うと

「はい。アイカワ ユウイチと言います」

と自己紹介する。

「私の名は<セグエル>。この村の長老をしております。

まずは、急進派が貴方を無理矢理ラウドスに召喚してしまった事を同じ種族としてお詫びしたい」

と言われた。

「ダグバンから聞いた内容だと内戦寸前とか?

それにしてはそこまでの緊張感というか、ヒリついている感じはしないように思えるのですが」

と聞くと

「さすがにそこまでではありません。

それはきっと貴方方地上の方々を引き込む為に大げさに言っているのでしょう。

ただ、ダグバン率いる急進派が問題なのは確かです。

急進派は

(自分達がこのような地底世界で一生を終えるのを良しとしない)

との考え方でして、少数派の為勢力拡大を狙って地上の方々を召還しているんです」

そんなに悪そうな感じはしなかったが、残念だな~。

「召喚魔法陣は皆さん、いやこの世界の人なら誰でも使えるんですか?」

と聞くと

「いえ、魔法が使えて、尚且つ私達の種族に伝わる古い書物を読み解いた者にしか使えません。

急進派の中でこの魔法陣が使用できるのは、ダグバンと側近の2人だけです」

あのお付きの2人か。

「我々の中にも何名か使用は出来ますが、今まで使用した事はありません。

逆にその魔法陣の仕組みを利用して、地上から召喚された方々をお戻しする事に利用しています。

魔法によって洗脳された方も我々の魔法によって解くことも出来ますし、ダグバン達が言っていた

(この世界に関する記憶を消す魔法)

も我々がかけています」

落ち着いて説明を聞いてはいたが、念の為セグエルの心の中を読んでみても、嘘を言ってはいなかった。

「色々な事が起こってお疲れでしょう。

客人用の部屋がありますので、ひとまずそちらで一息ついてください」

とセグエルが言うとシュルトに案内される。


部屋に到着すると

「お昼になったら昼食を持ってくるので、取り敢えずゆっくりしていてください。

昼食を食べ終えて少ししたら、これからの事を話し合う時間を設けたいと思います。

では」

と言い、シュルトは部屋から出ていく。

部屋の中はベッドと椅子がある簡素な部屋。

ダグバンが用意してくれた部屋と全く同じ作りだ。

「まったく・・・色々な事がありすぎて頭の中を整理するのが大変だよ」

と思わず呟くと

「これからどうするのですか?」

とアイに聞かれたが

「お昼御飯が到着するまでに時間がありそうだし、それまでにどうするか考えるよ」

と返し、ゆっくり流れていく時間の中でこれからどうするか考える・・・



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