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第八話

初心者ミッション最終日


ケイン達とギルドで合流して最後の戦闘ミッションに出発する前に

「今日は戦闘ミッション最終日だ。なので今日はアイカワさんにも戦闘に参加してもらう」

と言われた。

なんでもどの職業を選んでも戦闘ミッション最終日には必ず<直接的に戦闘に参加させなくてはならない>という決まりが全ギルドであるとの事だ。

「とはいっても今アイカワさんが装備している短剣で<魔物を倒せ!>とか言われても無理だろうから遠くから魔物を引き付ける役目をお願いしたい」

ああ、陽動か。

2日目に魔法が使える事を証明した事でこの役回りになった様だ。

万が一の状況になったとしても魔物に対して魔法で一瞬の隙さえ作れば自分達がカバーするとの事だった。

「わかりました。頑張ります」


街を出発して注意しながら歩いていると、早速ゴブリン5体が遠くに見えた。

事前の打ち合わせ通りに自分がこの場で待機し、パーティーが優位な位置に移動するまで待つ。

各自配置が完了したらケインが手を上げて合図を送る。

ふと目の前に木の棒が落ちていたので拾い

「おい、ゴブリン。お前達など俺が一人で倒してやるぞ!」

と訳の分からないセリフを大声を上げながら見つけた木の棒をゴブリン目がけて思い切り投げる。

すると5体のうち1体の頭部に命中し、怒り狂ったゴブリン達が自分の方向へ走ってきた。

念のため<肉体強化>を発動させてもしもの時に備えていたが、ケイン達が5体ともあっさりと討伐した。

<肉体強化>を解こうとした瞬間ウィルが

「危ない!」

と大声が聞こえたのと同時に致命傷を逃れた1体のゴブリンが鋭い爪で自分に襲い掛かってきた。

肉体強化のおかげで難なく攻撃を避けた後、すかさずファイヤーボールをゴブリンに放つ。

ファイヤーボールは見事命中し、ゴブリンの体があっという間に消し炭になっていく。


「危なかったな、アイカワさん。怪我はないか?」

ケインがすぐ駆け寄ってくれた。

「はい、大丈夫です」

他のメンバーもすぐ集まり<角を切り落とす、亡骸を焼却する>の手順を済ませた後、周囲の安全確認をして一息つく事になった。

どんな雑談になるのかと思ったらウィルが

「それにしても、よくさっきの攻撃よく避けれたなぁ」

と言うと続けてルーシーが

「そうそう、おまけにすぐに炎魔法でゴブリンにトドメ刺しちゃうし。初めての戦闘であそこまで器用に出来る人中々いないよ」

と褒めてくれたが

「偶然、偶然ですよ。咄嗟の事だったんで自分でも訳が分からないままだったし」

と返した。そんな話をしているとケインが

「実は、先程の戦闘の事なんだがアイカワさんに黙ってた事がある」

俺が不思議そうに皆の顔を見るとケインが続けて

「ここに来る前にパーティーの皆と打ち合わせして、アイカワさんにわざとトドメを刺させる様に、浅めの傷を負わせたんだ。それが戦闘ミッション最終日の一番の課題だったからだ」


詳しく聞いてみると、どの職業を選んでも戦闘ミッション最後の課題として初心者本人に魔物を直接倒させる事がサポートするパーティーに課された義務らしい。

そうする事で魔物の命を奪う事で自分達が生きていくという事を実感させるためらしい。


例えば商人でいうと、ギルドを通してパーティーに特定の魔物の討伐依頼を出し、希少部位を手に入れもらい店で販売し利益を得るのだが、魔物を直に手に掛けた経験がないと魔物の命に対する畏怖の念を忘れてしまったり命を懸けて討伐してくれたパーティーにも徐々に感謝の念を忘れて、中には冒険者パーティーに

<冒険者なんだから討伐してきて当たり前>

と横柄な態度をとってしまう商人も少なからずいるからだという。


その様な命に対する心構えをいつまでも忘れないでいて貰いたいという意味も込めて、商人の職業を選んだ人間にも今回の<魔物に直接トドメを刺す>という工程を全ギルドが本人に言わずに最終日に組み込んだという。


「でも、今までのアイカワさんの行動や態度を見ている限りそんな態度を取りそうな感じは見受けられないし、さっきの集中力を生かせば余程の事が無い限り戦闘で命を落とす様な事はないと思う」

とアインが自分を褒めてくれた。

こんな優しい人にここまで褒めて貰ったことが無かったので情けない事だが少し心にくるものがあったがばれないように堪えた。

するとウィルが

「いや、ルーシーの言う通り本当に凄かったよ。その気になれば魔導士の取得も夢じゃないんじゃないか?」

と言ったが

「いやいや」

と愛想笑いをして取り敢えずその場を乗り切った。


ギルドに戻り一連の流れを終えて受付に戻るとケインが

「これで全ての<初心者ランク>が終了した。受付でランク終了の手続きをして登録証を提示すると明日からFランクの依頼を受ける事が出来る」

と言われると受付の女性が

「では、登録証を出してその上に手を置いてください」

言われる通りにすると初めて登録した時と同じ動作をした後

「おめでとうございます、アイカワさん。これで明日からアイカワさんも正式に冒険者の仲間入りですよ!まだランクは下の方なので登録証の色は変わりませんが、Dランクになれば銅に、Cランクになれば銀といった感じで登録証自体のグレードも上がりますからね!」

と説明を受けた。

「あと、登録証を作成した日に説明したと思いますけどFランクは1か月に2つ以上依頼を達成してください。

面倒だからと放っておくと登録証が無効になり、また初心者ランクからやり直しですからね」

と念を押された。


皆と別れる前に

「まだこの街に留まるのか?」

と聞かれ

「取り敢えずDランク辺りまで上げたら他の街に移る事も考えてます」

と言うと

「わかった。じゃあ困った事があればギルドを通して俺達を頼ってくれ!いつでも力になる」

と言ってくれたあと、別れてリフルに戻る。


部屋に入るなりベットに倒れこんだ。なんかいつもより疲れた気がする。

アイが

「疲れましたか?リラックスの魔法をかけますか?」

と聞いてきたが

「ん?ああ、大丈夫だよ。緊張が解けてホッとしただけだから」

そう言うとケイン達の今日の言葉を思い出す。

褒めて貰った事も多かったし、考えさせられる事もある。

ともかく、これから冒険者として生きていく為に戦闘ミッションでケイン達から教わった事を肝に銘じてこれからの異世界生活を頑張っていこう。

そう心に誓いながらこの日は眠りについた


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