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【10万PV感謝!!】中年ニートの異世界転生 大魔導士スキルを貰い今度こそ気ままに生きる  作者: 村居 赤彦
第五章 リックス王国編

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第八十八話


翌朝。

起きた後、テントを片づけて小屋を解除した後、火を起こして白湯を沸かし朝食代わりにする。

本当はコーヒーが飲みたいが、この世界にそんなものは存在しない。

白湯を飲み終えて立ち上がり、背伸びをした後ルブリス王国に向けて歩き出す。

「そういえばルブリス王国って鉱物が特産品なんだよね?

採掘量が減ってきたって言ってたけど、周りの国から減産が認知される程長い間鉱物資源に頼ってたのかな?」

とアイに聞いてみると

「ルブリス王国は元々そこまで大きな国ではありませんでした。

大体今のアクレア公国と同じ規模と言えば分かるでしょうか。

それが今の国王から2代前の国王の時代に領地の山々から鉱物が採れる事が判明したらしく、それが理由で国の規模を拡大していったみたいです」

との事。

「へぇ~、でも国の財源になるほど採れるんだったら、近隣の国との領地問題とか山賊が発生したりとかは無かったの?」

前の世界との基準で照らしてしまってアレだが、この世界でもそのくらいの問題は起きそうなものだが・・・

「それが運がいい事に、近隣諸国はそういう主張はしなかった様です。

理由としては山の近くには小さな村がいくつかありましたが


すぐに採掘に向かわせる人員の確保が出来なかった事


そしてその複数の村と山の間で、当時魔物が多く出現していて採掘に向かわせるどころではなかった事


が重なって近隣諸国は鉱山に手が出せなかった様です」

村と山の間で魔物?

「ルブリス王国側には魔物が出現しなかったの?村との間だけ?」

と返すと

「はい。不思議な事にルブリス王国側には一切魔物は出現しなかったそうです」

へぇ~、幸運と言うか何と言うか・・・

「もし、魔物討伐の依頼で入った採掘地で貴重な鉱物を見つける事が出来れば、貴方が以前言っていた

<武器に魔法の効果を移す事が出来る武器>

が作れるかもしれませんよ?」

とアイが言ってきたが

「ああ、そんなこと言ってたね。

でもそれって攻撃魔法のアップグレードのスキルで解決してるし、そんな鉱物を見つけたら国側に真っ先に確保されて俺が手に入れる事なんて出来ないでしょ」

と返す。

「それにそんな武器を作れる職人がそう簡単に見つかるとは思えないけどなぁ」

コンラド共和国の時は偶然が重なって、作ってくれる腕の良い職人、原材料を提供してくれる貴族に会う事が出来たが、そんな偶然が2度も起こる訳がない。

そんな雑談をしながら歩いていると

「うおぉぉーー!!」

という男性の声が何処からともなく聞こえてくる。

「なんだ!?」

と周囲を見回しても戦闘をしている様子はない。

「どうやらあの坂の下からの様です」

とアイが言った方向を見てみると、緩やかな坂の下で戦闘が行われていたらしく、冒険者パーティーが床に座り込んでいた。

探知魔法をかけて周囲に魔物がいない事を確認すると、パーティーに

「大丈夫ですか~?」

と言いながら近づく。

疲弊しきった表情で俺の顔を見た一行は

「ああ、大丈夫。少し力を使い切ってしまってへばってるだけだから」

と言うと

「すまない。回復魔法が使えるなら、疲労回復の魔法を皆にお願いできるかな」

と言われ

「分かりました」

と返事をしたが

(あ、疲労回復の魔法かけた事無いけど、どうやるんだろ?)

と一瞬考えると

(回復魔法と同じで何も考えずにかければ出来ますよ)

とアイが教えてくれたので、言われた通りにする。

全員に掛け終わると

「ありがとう、助かったよ」

とリーダーらしき男性から礼を言われたが

「こんなところで魔物討伐の依頼ですか?

リックス王国から結構離れてますけど・・・」

そんな依頼があればリックス王国のギルドに挨拶に行った時、見つけそうなものだが・・・

「いや、私達はルブリス王国の教会から啓示を受けた勇者一行だ!」

・・・はい~?

余りに突拍子もない発言に何も言えずに固まる。

確かに男性の剣士2人、女性魔導士2人で冒険者パーティーなのだろうけど・・・

「勇者・・・ってあの勇者?魔王を倒して世界の平和を救うあの・・・?」

と俺が聞き返すと

「その顔は信じてないでしょう?その勇者よ。

私達は魔界で密かに地上侵攻を企んでいる魔王を倒す為、教会やルブリス国王から認められたパーティーで今修行をしながら旅をしているのよ?」

と薄紫のローブを羽織った女性魔導士が言う。

・・・もうどこからツッコんでいいやら・・・

「啓示を受けたってどんな啓示なんです?」

と聞くと

「私達にはそれぞれ生まれつき特殊な形のアザがあって、教会によればそれが神から与えられた

(勇者の証)なんだそうだ。

元々私達は冒険者として一緒に活動していたが、アザの噂を聞き付けた教会の神父が国王の下を訪ねてアザを見せると、国王様は

(紛れもなくそのアザは勇者の証!勇者殿、どうか魔界に赴いて魔王を退治してくだされ)

と言ってくれたんだ」

と自慢げに話す。

何か関わり合いになると面倒な連中っぽかったので、適当に話を聞き流してその場を後にする事にした。

「もう1泊野宿をすればリックス王国に着くので、俺はこれで」

とその場を離れようとすると

「君は何処へ向かうのかね?見た所1人の様だが?」

と少し上から目線の感じで聞かれてムッとしたが

「ルブリス王国に向かう途中なんです。

まだまだかかるでしょうけど」

と言うと

「ひ、1人で行く気なの・・・?」

見りゃ分かるだろ!と思わず言いそうになったが

「はい、1人で。食材も買い込んでるし、あと3日も歩けばつくでしょう」

唖然とした表情で俺を見る一行。

面倒くさいので相手の名前も聞かず、俺の名前も言わず

「では、俺はこれで」

とその場を立ち去る。


自称(勇者御一行)が見えなくなると、心の中で堪えていた笑いがようやく出てきた。

「クククッッ、私達は勇者だって・・・ハハハッ!!だめだ、笑いがこらえきれんッ!」

と笑いながら歩いていると

「失礼ですよ。本気で勇者だと思い込んでる人達に対して」

とアイが言ったが

「でも、あまりに可笑しくて!」

と歩きながらようやく笑いが収まった頃に

「だってこの世界に魔界や魔王なんて存在するの?

魔王なんて存在がいて、皆に認知されてたら今頃どの国でも大変な騒ぎになってるでしょ?」

とアイに聞くと

「確かにそんなものは存在しません。

多分、あの方達は国の威信を高める為の道具に仕立て上げられた可能性があります」

国の威信の為に勇者を仕立て上げる?

「どゆこと?」

と聞くと

「観光や特産品の需要が無くなってくると、時折ああやってありもしない伝承をでっち上げて周囲の国々に自国の威信を誇示しようとする政策をとる国が出てくるんです。

大抵の場合は失敗して恥の上塗りになるのが殆どですが」

勇者を仕立て上げて、自国の威信って・・・

「あの4人はまんまとそのでっち上げに乗せられたって事?

言っちゃぁなんだけど、頭悪すぎじゃん・・・

普通信じないでしょ?そんな眉唾な話」

と呆れているとお腹が空いてきた。

森の中を歩いていたので、念の為精錬した魔力で探知魔法を広範囲にかけたが魔物の存在は無し。

マジックゲートからクッションとお惣菜を温める為の小鍋、パン、お惣菜を取り出し、そこら辺に落ちている小枝や落ち葉を拾い、火魔法で火を点けた後、お惣菜を温めてお昼ご飯を食べる。

食べ終えた後、水魔法で小鍋を洗って綺麗になった後お湯を沸かして飲む。

ある程度まったりした後、再び歩き出す。

その後も魔物と遭遇すること無く、陽も暮れてきたので丁度良い場所にテントを張り、土魔法のスキルで拠点を作る。


松明とランタンに火を点けて拠点の中に入る。

テントの中で必要な道具と食事を取り出し、晩御飯を済ませる。

そのに出て食器や小鍋を水魔法で洗った後、中に戻り寝袋に寝転ぶ。

「あ~、早く着かないかな~。

明日は肉体強化で駆け抜けてみようかな~。

あ、でも途中で強力な魔物と出くわした時に面倒か~」

と呟くと

「そうですね。地道に歩いて行くのが無難かと思います。

あの勇者一行の様に戦闘が原因で疲れ切っては元も子もありませんよ」

と返す。

「そりゃそうか。あちらさんには申し訳ないけど急ごうとして失敗する良い見本だね」

明日も地道に歩くか。

「にしてもあのパーティー、自称勇者の看板を掲げたまま旅を続けるつもりなのかな?」

と言うと

「行方不明の事件で冒険者パーティーが無傷で戻ってきているのなら、ルブリス王国はあの勇者一行の事はこのまま無かった事にするかもしれませんね。

変に調査に乗り出して被害が出ようものなら、他国にその噂が広まって外部から誰も来なくなってしまいますからね」

とアイが言う。

「そんなものかねぇ。

まあ、あっちで依頼を受けたらその辺は気を付けないとなぁ」

寝袋に入ってそんな雑談をしている内に、この日はいつの間にか眠りについていた。



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