表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【10万PV感謝!!】中年ニートの異世界転生 大魔導士スキルを貰い今度こそ気ままに生きる  作者: 村居 赤彦
第五章 リックス王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/103

第八十五話


翌朝変な夢を見た。

もの凄く広く暗い空間。

その中には大きな街が、いや城もあるので国と言った方が良いだろうか。

俺は建物の陰にいる。

街の広場の様な場所には、大勢の人間、いや姿は人間だが口には牙の様な物があり少し違う様だ。

中央のお立ち台の様な場所には集団のリーダーらしき人物とその仲間が数人立っていて、お立ち台の周りにはかなりの群衆が集まっている。

全員同じ種族の様だ。

お立ち台に立っているリーダーが何か演説をすると、群衆達がその一言一言に呼応して拍手をしたり、中には喜びの涙を流す者もいた。

その空間の周りを見ると、どこかで見たような霧みたいな物が見えるが、段々と意識が薄れて景色がぼやけていく。


そして目が覚める。

「変な夢だったなぁ。何だったんだ一体・・・」

と寝ぼけながら呟くと

「また夢を見たのですか?」

とアイが聞いてきた。

「うん。説明するのがめんどくさいから省くけど、とにかく不思議だったなぁ・・・」

寝ぼけた幼子の様な感じで説明する俺。

カーテンから太陽の光が差し込んでいたので

「少し早い気がするけど、もう起きるか・・・」

と言い、ベッドから降りて背伸びをする。

暫くぼーっとしているとリップが部屋を訪ねてきたが、この日は魔力精錬の修行をせずに城下町を少し散策してからギルドに向かう事になった。

前日の晩御飯を食べている最中に

「明日は修行はお休みしよう。

修行に集中し過ぎて馬車に乗り遅れたらいけないし」

というのでそれに賛同する事になったからだ。


食堂で朝食を食べている最中女将さんが

「あんた達、このまま結婚してキリアナ王国で住んじゃえばいいのに!」

と唐突に言うもんだから

「な、なに言ってるんですか!」

「な、なにいってるんですか!」

と俺とリップが同時に女将さんにツッコミを入れる。

「ほら、息ピッタリじゃない」

と女将さんもツッコミで返すが

「いきなりそんなこと言われて言い返さない人なんかいませんよ、まったく」

と俺が(やれやれ)といった感じで言うと

「そうですよ。誰だってそんなこと言われたら・・・」

とリップが頬を少し赤らめる。

ちょっとリップさん!?何頬を赤らめてるの?誤解されるでしょ、そのリアクションは!

「アッハッハッハ!本当にかわいいねぇ、アンタは!」

と女将さんが豪快な笑いをする。

そんなこんなで朝食を食べ終えて、リップが餞別(せんべつ)代りにと昼食用の食事を女将さんから受け取るとマジックゲートに収めて、女将さんと抱き合い泣きながら別れを告げて宿を後にする。

宿を後にしたリップは悲しい雰囲気を打ち消そうとしたのか

「さあ、早くギルドに行こう!」

と無理矢理作った明るい笑顔で俺に話しかけ、ギルドに向かう。


ギルドに到着して、受付で手続きを済ませているとキリアナ王国行きの馬車が到着したらしく、操縦者と護衛のパーティーが建物に入って来た。

護衛のパーティーはこの間教徒達の護衛を務めた3組の内の1組で、俺達の顔を見るなり

「あ、この間はどうも。キリアナ王国に行くんですか?」

とリーダーらしき剣士に聞かれて

「はい、彼女がキリアナ王国に行くので見送りに来たんです」

と言うと

「え~、勿体ない!あと1人、2人くらい仲間を見つけてパーティーを完成させればいいのに」

と護衛の女性魔導士言い出すが

「おいおい、こちらにはこちらの事情があるんだから、あまり勝手なこと言うなよ。

失礼になるよ?」

ともう1人の剣士が止めに入る。

出発までまだ少し時間があるので待合所の椅子に座り雑談をしていると

「キリアナ王国でも上手くやれるかな?私・・・」

と急に弱気な発言をしだすリップ。

「大丈夫さ。

いざとなればギルドを介して他のパーティーを紹介してもらうとか、方法はいくらでもあるさ。

あ、そうだ。

あっちのギルドに 着いたら、Eランクの(エヴァンとメイ)という名前のパーティーを紹介してもらうと良い。

他のメンバーを補充してなければ、まだ2人で活動しているはずだ。

リップと年齢もさほども変わらないだろうし、俺の名前を出せば話は通りやすいはずだよ」

とキリアナ王国での活動の手助けとして、エヴァン達の名前を出す。

あの2人ならきっとリップの事も受け入れてくれるはずだ。

「それにそのエヴァン達はCランクパーティーのケインさん達と知り合いで、上手くいけばそこを通じてキリアナ王国で会いたがってたダンさん夫妻にも会えるかもよ?

ケインさん達はダンさん夫妻に通じてるから」

と言うと

「え!ほんとに!?」

と急に明るい顔になる。

「ただし、だからといってダンさん夫妻の所に入り浸ろうしないようにね?」

とクギを刺すと

「わ、分かってるよぉ~」

と若干不貞腐れて唇を尖らせる。

そんな話をしていると

「そろそろ出発の準備に入るので、キリアナ王国に行かれる方は馬車にお願いしま~す」

と操縦者の男性の声が待合所に聞こえてきたので

「あ、じゃあそろそろみたいね」

とリップが言うと2人で馬車に向かい歩く。

ギルドの外に出ると、入り口前に馬車が2台止まっていた。

そのうちの1台にリップが向かうおうとすると

「あ、そうだ」

と俺の方に振り返り急に近づいて、なんとキスをした。

俺も、そして周りの時間も一瞬止まった気がした。

ゆっくりと唇が離れると俺に抱きつき

「ありがとう、アイカワさん。

もしキリアナ王国に帰ってきたら、またパーティー組んでね」

と声を震わせながら言う。

そんなリップの唐突な行動に、自然と俺はリップをそっと抱きしめて優しく頭を撫でながら

「ああ、必ずな」

と声をかける。

こんな状況は人生で初めてだったので、こう言うのが自分としては精いっぱいだった。

リップがゆっくりと体を離すと泣き顔を見せたくないのか急に体を反転させ

「さあ、向こうに行っても頑張りますか!」

と無理に明るい声を出して馬車に乗り込む。

乗客が全て乗った事を操縦者が確認すると

「それでは出発しま~す」

との声と共に馬車が静かに動き出す。

暫く馬車を見送っていると

「アイカワさ~ん、元気でね~!」

とリップが笑顔で俺に手を振る。

それに俺も手を高く上げて振って答える。

馬車が見えなくなると、リップと離れた悲しさより寧ろこれからキリアナ王国で頑張るリップへの思いで自分も頑張らないと!との思いが湧いてくる。

「頑張ってほしいですね、リップさんには」

とアイが話しかけてきたので

「ああ、きっと大丈夫さ。

それにあっちにはエヴァン達やケイン達もいる事だし、困ったらきっと助けになってくれる筈だ」

と返す。


ギルドの中に再び戻り、掲示板に向かう。

こんな別れがあった時は気持ちを整理する為に依頼は受けようとは思わないのだが、悲しい別れではないので何か探してみよう。

とはいってもギルドに来てから結構時間もたっているので、受けられる依頼が残っているかどうかは不明。

依頼書が貼られている掲示板に向かい見てみるが、流石に残ってはいなかった。

仕方ないので受付に

「Dランクで何か受けられる依頼は残ってますか?」

と聞いてみたが、所長預かりの案件を含めて探してもらったが

「今日はもうないな。また日を改めて来てくれ」

と言われてしまった。

受付の女性に

「見てましたよ。良かったんですか?引き止めなくて」

と言われたが

「良いんですよ。いずれはキリアナ王国に帰るつもりなのでいつかは会えますよ」

と返す。

「もう女心がわかってないなぁ~、アイカワさんは。

ああいう場合

(行かないでくれ!これからも俺とずっと一緒にいてくれ!)

とか言って女性は引き止めて欲しかったと思いますよ?」

何言ってんだ、このお方は・・・

まあ、あの状況を見れば事情を知らない赤の他人はそう見えたもしれない。

受付の中にいた他の女性職員の何人かもウンウンと頷いている。

「だから、そういう関係じゃないんですって・・・いや、もういいッス」

と言いつつギルドを後にする。


「依頼が無いのではしょうがない。何をしたものか・・・」

と呟きながら街を散策していると

「あの~、すみません」

と見知らぬ男性から声をかけられる。

「はい?」

と返すと

「アイカワさんで宜しかったですか?」

誰だ?見た事無いぞ。こんな奴

「私、アクレア公国から来た使いの者です。

貴方様に公爵様より直々にお願いがあって参りました」

と言い出した。

タナカの使い?本当か?と思い心を読むスキルと使い心の中を探ってみると

(確かロイヤルガードの2人はこの人って言ってたな~。

変わった革の鎧をしてる人がいるって。合ってるかな~?)

と考えている。

ロイヤルガード?あのお付きの事か?なら本当にタナカの使いか。

「はい、私はアイカワですが・・・」

と言うと

「良かった~。間違えてたらどうしようかと思いました。

立ち話もあれなので近くの広場のベンチでお願いできますか?」

と言ってきたので、広場まで向かう事になった・・・



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ