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第七話

変な夢を見た。


どこかの街へ向かっている自分が、横に見知らぬ女性が一緒だった。

格好は少し筋肉質にやせ型。自分には不釣り合いな綺麗な顔立ちの女性だった。

楽し気に世間話をしながら歩いている途中で夢だと気づき、そして目が覚めた。


「おはようございます。どうかしましたか?」

とアイに聞かれ

「いや、何でもないよ。夢を見てたみたいだ」

と起き上がりながら返答する。

もし、アイに人間の体を与えて一緒に冒険出来たら・・・いや、無理か。

薬草を集めるミッションの時にもアイから説明されたが、生命を復活させたり造り出したり出来ないとされている。

仮に出来たとしてもそんな大それた事をするつもりはさらさら無い。


戦闘ミッション2日目、昨日と同じく街の外れまで出て戦闘に関する基礎のレクチャーを受けていると攻撃魔法担当のルーシーが

「そう言えば、アイカワさんは魔法は今でも使えるの?念のためどのくらいなのか見せて貰えないかな?」

そう言われ

「うーん、子供の時以来なので今でも出来るかわかりませんが・・・」

というとリーダーのケインが

「そうだな。<商人>の職業を選んでも万が一の時は自分で自分を守らなきゃいけない時もあるかもしれない。それに少し習ってもいたみたいだから見てみたいな」

と言いが5メートル程離れた地面に〇を描き

「ここの〇に何か攻撃魔法を撃ってみてくれ」

仕方ない。初日に一人で放ったよりも少し小さめの <ファイヤーボール>を〇に目掛けて撃ってみると

パーティーの皆が結構驚いた様子で自分を見た。

するとルーシーが

「すごいよ!アイカワさん。<商人>でいるのが少しもったいないくらいだよ!」

と言うと回復魔法担当のケイトが

「ほんと、今からでも修行し直せば職業を<魔導士>に変更出来るかもね」


・・・なんか変な方向に話が行きかけてると思いながら内心ひやひやしていると

ウィルが

「でも、冗談抜きで今このくらいならもう少し修行すれば自分の身を守れる位の実力はつくんじゃないか?」

と変に周りに褒められているとケインが

「まあまあ、その辺にしてこう。私もウィルやルーシーに意見に賛同する。でもアイカワさん、これだけは知っておいてもらいたい。

これからもし戦闘をする状況になった場合、命のやり取りをするという事を肝に銘じておいてくれ。」


とケインがまっすぐな目で俺を諭した。


「選んだ職業が<商人>だから戦闘を経験する事はこの先あまり無いとは思うが、ある程度実力があるからと言って戦闘ミッションを受けて続けて調子に乗っていると、いつか大変なしっぺ返しを食らったり命の重さや大切さを見失う時が来るかもしれない。

魔物も種族は違っても生きている。金を沢山稼ぐためにむやみに命を奪っていいというわけでもないというのがこのパーティーとしての信念なんだ。これだけは覚えていてほしい」


そんなやり取りをしている内に戦闘ミッション2日目が終了。

昨日と同じ流れで報酬を受け取り、リフルに帰る。


ベットに横になって今日の魔法の事を不意に思い出す。

魔法に関して出まかせを言って誤魔化したがあれほど人から褒められた事、今まで生きてきて無かったなぁ。


成功体験の積み重ねで人はポジティブになったり、色々挑戦する意欲が生まれるなんて言うけど前の世界では人から褒められた事なんて全くと言っていい程無かった。

(まあ、本当はあるのかもしれないし、嫌な記憶がありすぎて思い出せないだけかもしれないが)

昔の事を思い出しそうになるとアイが

「どうしましたか?また戦闘による不安ですか?」

と聞かれ

「今日魔法を使って褒められたろう?あの場面を思い出してた」

「嬉しかったですか?」

「いや、嬉しいというより、戸惑ったって方が強いかな。人生であんなに褒められた事無かったから。それにケインの言葉を思い出した。命の重さって話」


なんとなくギルドに商人として登録して、これからこの世界でどの様に生活するかキチンとしてなかったけどこれからは魔物と命のやり取りもしなくてはいけない場面もきっと来るはずだ。

前の世界ではニュースやネットを通してしか<戦争や紛争>を見て来なかったがこちらの世界ではそうはいかないだろう。

命の重さかぁ・・・

あそこまでまっすぐな目で諭されたのはいつ以来だったか。

あまり人の過去を詮索するのは得意ではないけどケインの過去に何かあったのかな。

そう思いながらアイに「おやすみ」と言って眠りに落ちていった。


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