表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【10万PV感謝!!】中年ニートの異世界転生 大魔導士スキルを貰い今度こそ気ままに生きる  作者: 村居 赤彦
第五章 リックス王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/103

第七十四話


コンラド共和国を出国して一路アクレア公国の方角へ進んでいく。

ミハイルが言っていた峠道を歩いて行く。

何かの依頼で他の魔導士と一緒なら互いに探知魔法をかけながら進んでいくが、今回は依頼ではない只の単独行動。

正直言って面倒くさい。

しかしこれを怠れば自分の命に関わるので手は抜かない。

ある程度距離を進むと探知魔法をかけてを繰り返しながら、ある程度慎重に進む。

周りを木々に囲まれていたらどうしようかと思っていたが案外そうではなく、岩場が比較的多い切り立った急な崖もあったが、そのエリアを急いで抜けると平坦なエリアに出る事が出来た。

探知魔法をかけて周囲に魔物がいない事を確認してから、少し休憩する為に岩の上に座る。

カリムの街で購入しておいたパンと惣菜1品をマジックゲートから取り出し、遅めの昼食を食べる。

食べ終えて少しした後、また歩き出す。

陽が傾くか否かというところで遠くに国らしき城壁が見えた。

「あれがアクレア公国?」

とアイに聞くと

「はい。あの国がアクレア公国です。どうしますか?

念の為検問所で入国可能か聞いておきますか?」

と聞かれたが

「う~ん。聞いてはおくけど、どうなのかな・・・

まあいいや、行くだけ行ってみるか」


検問所に到着すると

「入国希望の方ですか?事前に許可は取られてますか?」

怪訝(けげん)そうな顔で兵士に見られたが

「いえ、そうではないんです。

お聞きしたいんですが、スリングの街はここからどれくらいかかりますか?」

と聞くと

「スリングの街ならこの国から歩いて1日かかるか、かからないかで行けますが、まさかこれから行かれるつもりですか?!」

兵士が驚いた表情でこちらを見ると

「はい。野宿する事にはなりますが、準備はしてきているので。

あ、後もう1つ聞いておきたいんですが、仮に入国できなくても国の近くで野宿する事は可能ですか?

テントや道具、食糧一式は用意してあるんですが・・・」

と再度聞いてみると

「ま、まあ国内に入らなければ構いませんが、いざとなっても自己責任でお願いします」

と念を押された。

「分かりました。ありがとうございました」

と言い検問所を後にする。

暫く進んだ所である程度開けた場所が道沿いにあったので、テントを張り、精錬された魔力で

スキル<土魔法で簡易的な小屋を作り出せる>を発動する。

地面に向けて手をかざすとテントを囲むように、分厚い土の壁が空に向かって伸びていく。

ちゃんと入り口も形成されていて、壁には格子状の通気口まで開いており、おまけに天井まで出来ていて当初アイの説明通り、篝火を点ける場所や魔法障壁も予めかけられていた。

「うおぉ~、想像以上の出来栄え!」

と驚いていると

「辺りはもう暗く危ないので、早く篝火を点けて中に入った方が良いですよ」

とアイに促され、マジックゲートから購入しておいた松明セットを取り出し、炎魔法で篝火を点けて土壁の四方に置いておく。

ランタンに火を点けてから中に入ると、自動的に入り口が土で覆われた。

これならかなり安心できるな。

テントの中に入り、夕食を食べた後寝袋に入りアイに

「スリングの街ってどんな所か分かる?」

とアイに聞くと

「特に然したる特徴が無い街です。

リックス王国が統治している街で、これといって特産品もない平凡な街です。

例えが合っているか分かりませんが、キリアナ王国の城下町と同じと考えて頂ければ分かりやすいかと思います」

と返って来た。

「ああ、あんな感じかぁ。なら取り敢えずは平穏そうだね。

いや、カリムの街が異常だっただけか・・・」

とアイとの雑談をしていると、歩いてきた距離のせいか眠くなってきた。

「もうそろそろ寝るよ。おやすみ、アイ」

と言うと

「おやすみなさい」

とのアイの一言を聞いて眠りにつく。


一体どれくらい眠っていただろうか。

気持ちよく寝ていると物凄い衝撃音で目を覚ます。

思わず飛び起きてテントの外へ出て、格子状の通気口から外を覗いてみると、魔物同士が1対複数で戦っていた。

しかも単体の方はドラゴンで見覚えがある。

「あれはスズキ ゴロウさんですね」

とアイが言うと

「助けに行かなきゃ!って、でもおかしいな。

確かスズキさんって

(ドラゴンとしての攻撃能力は無い)

って言ってなかったっけ?なのになんであんな凄い戦闘してるんだろう?別のドラゴン?」

と疑問を口にしたが

「いえ、あれは間違いなくバルシス王国で出会った<スズキ ゴロウ>さんです。

しかも相手にしているのは<グリフォン>の群れですね。

あの様子だと余裕でスズキさんが勝利するでしょう」

とアイが冷静に戦闘を分析する。

スズキさんらしきドラゴンが最後の1体を倒そうかという時に、入り口を開けて現場に向かう。


現場に到着すると既に戦闘は終了していた。

作った拠点から精錬した魔力で探知魔法をかけたが、アクレア公国から兵士が出てくる様子はなかった。

ドラゴンに近づき

「あの~スズキさんですよね?お久しぶりです、アイカワです」

と話しかけると

「ああ!?誰だキサマは!キサマなど知らん!人間の分際で気安く話しかけるな!

焼き殺すぞ!!」

と威嚇して来た。

ええ~~!?スズキさんじゃない~~??

「おかしいですね。特徴は全くといっていい程、スズキさんと同じなのですが・・・」

と冷静に返すが

(いやいやいや、マズイよ!人、いやドラゴン違いなんてシャレにならないよ!!どうしよう!?)

と恐怖と困惑でたじろいていると

「ん?どうしたゴロウ?何、知り合いだと?だったら早くそう言え。

危うく我の炎でこの人間を焼き殺すところだったぞ」

と独り言を呟き始めた。

「すまんな、アイカワとやら。先程まで戦闘していたもので少々気が立っていた。

ゴロウの知り合いだったのか。今ゴロウと変わる」

と言うと

「やあ、久しぶりだね、アイカワ君!」

と先程まで殺気立ったドラゴンの声が、スズキさんの柔らかな声に変わった。

「良かった~、スズキさんだ~。間違えたと思って寿命が縮みましたよ~」

と安堵から涙が出そうになった。

「それにしても物凄い戦闘でしたね?確か戦闘能力は無いって言ってたのに」

たぶん、あの内容で全力ではないだろう事は容易に想像できる。

話しかけた時にエンシェントドラゴンは全く疲れている様子は無かったからだ。

「いやぁ実はね、君と別れた後エンシェントドラゴンの人格が復活してね。

戦闘になった場合は人格を交代して、私の代わりに戦ってもらっているんだ。

さっき倒したのはグリフォンという魔物で、群れで襲われるとCランクのパーティーなんかあっという間に全滅してしまうほど強いんだが、見た通りかすり傷一つついていない」

いや、そんな事は見てたからわかるよ。ほんと物凄かったもの。

「ああ、それと安心してくれ。

エンシェントドラゴンの人格が復活したからといって、君を取り込もうとは絶対しないから」

とスズキさんが冗談ぽく言うと

「当り前だ!これ以上人格が増えたら面倒くさくてかなわん!

全く、お前なんぞ取り込むんじゃなかったわ」

とまるで完璧な1人芝居をしているかの様なやり取りを見せる。

「あの~、これは興味本位で伺うんですけど、なんでスズキさんを取り込んだんです?

何か特殊な事情でもあったんですか?」

とエンシェントドラゴンに聞いてみると

「まあゴロウの知り合いだから教えるが、異世界から転生して来たゴロウと偶然出会って、話を色々と聞くのが面白くて、暇つぶしとして異世界の知識を得るつもりでゴロウを取り込んだのだが、まさか知識だけでなく人格まで取り込んでしまうとは思わなかったのだ。

たぶん、異世界から転生して来た者を取り込んだからこうなったんだと思うが、我とした事が・・・。

幸いコイツは人格を交代している間は1度も戦闘しないから、無害といえば無害だがな」

と呆れながらエンシェントドラゴンが答える。

「そんな経緯があったんですか。

にしてもこのグリフォンはどうするんです?食料にするんですか?」

とエンシェントドラゴンに聞くと

「ああ、そうだ。そうでなきゃこんな面倒くさい事はせん。

お前も欲しいのか?グリフォンの肉が」

と返されたが

「グリフォンの肉はまだこの世界の人間は食べた事が無いので、貴方が食べるのもギルドに持ち込むのもお勧めしません。

それにDランクの貴方が1人でグリフォンを1体でもギルドに持ち込んだら、それこそ騒ぎになって色々と理由を説明するのに困ると思いますよ」

とアイが説明してくれた。

「いえいえ、滅相も無い。

倒したのはそちらですし、人間がグリフォンを料理して食べるなんて聞いた事無ので、遠慮しておきます」

と断った。

するとスズキさんが

「君がここにいるという事はこの先のスリングの街に向かうんだろう?

なら安心して進んでくれ。

先程まであのグリフォン達が群れでいたから人間が歩けばひとたまりもなかったが、全滅させてしまったからね」

とサラッと凄い事を言う。

「そうですか、そりゃ安心だ。なら早速向かう事にします」

と言い、生のグリフォンの肉を食べているエンシェントドラゴンをよそに、拠点に戻りスキルを解除してテントを片づけてスリング街に向かう。

「お元気で~」

と食事を終えた直後のエンシェントドラゴンに手を振ると、あっちも手を振って答えてくれた。


早朝とあって他の魔物と出会う事も無く、スズキさんの言った通りグリフォンとも一切遭遇しなかった。

途中休憩がてら朝食を食べて、暫くまったりするとまた歩き出す。

休憩を挟みながらひたすら移動しているとやっと街が見えて来た。

「やっと見えた。あれがスリングの街でしょ?」

とアイに聞くと

「はい。そうです」

と答える。

「とっとと入って、宿に行こう。あ、その前に夕食か」

昼食はとっくに食べ終えて、尚且つ買い込んだ食料は無くなっていたからだ。

検問所では手続きがかなり面倒くさかった。

ひたすらアクレア公国の関係者でないか?という事を何度も確認された。

コンラド共和国から歩いて、尚且つ1泊とはいえ野宿してここまで来た事がそんなに信じられないのだろうか?

手続きが終わり何とか入国出来た。

急いで食堂を探し、目に入った店に入る。

しつこい聞き取りのせいでもう陽は沈み、辺りは真っ暗になっていたからだ。

着席してメニューを見て最初に目に入った料理を注文。

運ばれてきた料理を急いで食べる。

代金を支払う時に

「ちょっとお聞きしたいんですけど、さっきこの街に着いたばかりなんですがおすすめの宿ってありますか?」

と店主に聞くと

「ん~、特に思いつく宿は無いな~。

あ、この街に来たばかりなら1つアドバイスだ。青い看板の店には行かない方が良い」

と言われた。

「青い看板の店はダメ?何か理由が?」

と返すと

「ここ最近この街にアクレア公国の住人が移り住んできて、独自のコミュニティを築いてるんだ。

独特の信仰は持ったままだから、朝と午後の2回に儀式をするらしくお経が聞こえてくるんだ。

しつこいわけではないが勧誘もしてくるから、元から住んでる住人が気味悪がってな。

信仰の証として店の看板を青くしたり、住んでいる家の壁の一部を青い塗料で塗ったりしてるんだ。

だから、青い看板の店には入らない方が良いと思うぞ?」

と言われた。

「分かりました。ありがとうございます」

と言い、店を後にする。


食堂を出て、青い看板以外の宿を探す。

歩いていると宿を見つけ、看板を確認すると青くない。

よし、ここにしよう。

「こんばんは~、1人なんですが空いてますか?」

と聞くと

「ああ、空いてるよ。2号室へどうぞ」

と言われて2号室に向かう。

部屋に入ると装備を外してベットに横たわる。

「やっと着いた~。ほんっとうに疲れたわ~。明日はギルドに行かずに街の散策をしよう」

と言うと

「そうですね。まずはその方が良いかと思います」

とアイも賛同してくれた。

「それにしてもアクレア公国の住人がこの街に移り住んでるのかぁ。

なんでだ?国自体に問題が無ければ別に移り住む必要なんて無いのに」

と言うと

「明日の朝は私が起こすより先に、そのお経に起こされるかもしれませんね」

と冗談ぽくアイが言う。

「勘弁してよ、朝くらい自分のタイミングで余裕を持って起きたいよ」

誰かに起こされるのはあまり得意ではない。

大きな欠伸をすると

「もうそろそろ寝るよ。おやすみ、アイ」

と言うと

「おやすみなさい」

のアイの言葉と共に眠りについた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ