第五話
一通り受付で説明を受けた後、早速<初心者ランク>のミッションを受けようと
ミッションが張り出されている掲示板へ行こうとすると
「あ、<初心者ランク>のミッションは受付での受注になるので」
と言われて一枚の紙を渡される。
「一番最初は街の外れに行ってこの薬草を採ってきてください」
差し出された紙をよく見ると採取する数と報酬まで記載されている。
「<初心者ランク>で報酬もでるんですか?」
「ええ。額はかなり低いですけど出ますよ」
報酬額を見ると宿が一晩泊まれるくらいの金額が記載されている。
これはありがたい、正直「お金なんて出るわけない」と笑われたらどうしようかと思っていた。
「それと、記載されている以上の数は採らないでください。
たまにいるんですよ、多く採ってきたから記載されてる額より多くよこせ!とか無茶苦茶言う人」
受付の女性がため息交じりにそう言った。
苦笑いをしながら建物を出て紙に書かれた場所に行ってみるとその薬草はすぐに見つかった。
えっと、これを10本っと・・・ってこれだけ?
あっけなく終わってしまったのでアイを呼んでみる。
「ねえ、この薬草はどんな効果があるの?」
「この薬草は乾燥してすり潰すと疲労回復の効能がある薬草になります」
「なんか、漢方の効能みたいだけどそういうのって魔法である程度どうにかなるんじゃ・・・」
「この世界に生まれてくる人全員が魔力を持って生まれてくるわけではありませんし、魔法で治療が出来る範囲もある程度限界がありますから、薬の代用品としてしようされているようです」
「今更だけど、この世界の魔法でどの程度まで出来るの?」
「傷を治したり、病気を治したりする事は出来ますが、命を復活させたり造り出したりというのは出来ません」
「今のところ、攻撃魔法しか試してないけど俺も回復魔法が使えたりするのかな?」
「現時点では無理です。レベルが上がればスキルが解放されて使用できます」
まあ、しょうがないか。レベルが上がるのを待とう。
ギルドの建物に戻り指定された薬草を提出し、報酬を受け取る。
そんな感じで薬草のミッションを2つ程クリアしたら
「次は魔物との戦闘なんですが、あいにく今日はCランクパーティーが出払ってしまっているので今日のところはもうミッションは出来ませんねぇ。明日以降また来ていただけますか」
そう言われて建物を後にする。
リフルに戻り部屋を借りて一息つく。
もう夕方かぁ、向こうの世界ならもうそろそろ晩飯を何にするか考えたり何時に風呂に入ろうか考えたり・・・ん?風呂?
こちらの世界に来て2日目が終わろうとしているが、風呂に入っていない。
というか歯も磨いてすらない。
でもこの宿屋、風呂とかどこにもなかったよな。
ここはもちろんアイに聞いてみる。
「ねえ、アイ。こっちの世界の人たちってお風呂とか歯磨きとかどうしてるの?少なくともこの宿屋に風呂なんてどこにも無いみたいだけど」
「歯を磨くならあなたが元居た世界と同じような歯ブラシや、歯磨き粉に似たものならあります。
お風呂もありますが、魔法が使える人間は魔法によって自分の体を清潔に保ち、魔法が使えない人はお風呂に入れる専門店に行くか、ある程度の収入を得てから大きな風呂桶に似たものを購入して自宅で沸かして入るかのどちらかです。
しかし貴方の場合、私の<万能補助>としてのスキルでその日1日の歯や体の汚れなどをきれいにするという能力が自動的に発動しているのでご心配なく」
「そんな細かいサポート機能もあるのかぁ。ありがとう、アイ。助かるよ」
なるほど、それもありがいサポート能力だ。
本当にアイを選んで正解だった気がする。
安心しきったところでアイにお礼を言いながらベットに入り、1日を終えた。