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【10万PV感謝!!】中年ニートの異世界転生 大魔導士スキルを貰い今度こそ気ままに生きる  作者: 村居 赤彦
第三章 駐屯地遠征編

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第五十五話


夜勤警備が終わり、丸1日休日に入る。

と言っても駐屯地から出る事は出来ないし、これといってする事も無いし、何よりも娯楽と言えるものも何も無い。

それに次は日勤になるので、体内時計と言うべきか体を朝型に慣らさないといけないのでこの日はひたすらダラダラしながら過ごす。

ある程度若返って、丈夫な体で転生させてもらっているとはいえ当然無理は禁物。

なのでこの日は本当に何もしない。

正直言うと昨晩のナイトスパイダーの調査も気になってはいたが、依頼を受けているだけの俺が気にした所で意味はない。

日中に偶然会ったイーサンに聞いたら、調査は別の班で構成され行われるそうだ。

なのでその事を聞いた俺も調査を任せて休日を満喫した。


という訳で診療所担当の日。

朝食を食べた後、詰め所に行き朝礼を終えると早速診療所へ向かう。

診療所の扉を開けると白衣を着た医師らしき人が3人、魔導士が2人いた。

医師の1人はこの前会ったケントだった。

「おはようございます。今日診療所の担当になったアイカワです」

と全員に声をかけるとケントが

「あ、おはようございます、アイカワさん。

お待ちしてました!・・・と言っても、診療所は普通怪我人が出なければ、雑用以外何もする事がありません。

取り敢えず今日する事と言えば


1.搬入された医療物資を備蓄テントに運ぶ、或いは診療所内に補充する


2.各現場に出向いて作業されている方々に疲労回復の魔法を施す


後は我々も合間合間に適度な休憩を挟みながらまったりやりましょう。

何か質問はありますか?」

ユルいなぁ、なんて思いながら

「病気で入院している方なんかいらっしゃらないんですか?

もしいるならその方の経過観察とか・・・」

と言うと

「いえいえ、そんな人いませんよ~。

前に遠征から帰ってきた日に診療所のベットで休んだ時だって、そんな人見かけなかったでしょう?

仮にいたとしても、数日休んで回復したら元の現場に復帰するか、もし重症ならすぐにでもバルシス王国かコンラド共和国に送り返されます。

駐屯地なんかで病気が流行してしまったら、大変な事になりますから」

まあ、言われてみればそうか。

「分かりました。では、何から始めるんです?」

と聞くと

「そうですねぇ。最初に言った通り午前中の便で医療物資が搬入されるので、それまでは何もせずここでまったりと待機してましょう。

それから、医者1人魔導士1人に組み分けをしました。

その方が午後からの作業も手分けして出来ますから。

私とアイカワさんがA班、貴方と貴方がB班・・・」

と班分けを聞いた後、診療所にいる全員で雑談したり、何もせずまったりしていると

「お?どうやら物資が到着したようですね。では、荷下ろしを手伝いに行きますか!」

とケントが言うと全員で馬車に向かう。

ケントがまず備蓄テントの入り口を開けると、班ごとになって協力しながら馬車に積んである医療物資を備蓄テントに運び入れる。

この間にもケントから的確な指示が、診療所を担当している全員にいきわたる。

そして最後の医療物資を備蓄テントに搬入し終わると

「では、B班はこれとこれとこれの箱を開けてそれぞれ6セットずつ診療所の中の棚に補充した後、診療室で患者さんが来た時の為に待機。

C班は各作業所に疲労回復の魔法をかけに行ってください。

A班の我々は正確な在庫のチェックと書類の整理等を行いましょう」

とここでもテキパキとケントが指示を出し、それぞれが作業を始める。

俺達A班が作業を一通り終えて、B班も医療物資の補充が済んで診療所が落ち着いた頃、C班も巡回を終えて診療所に戻ってきた。

「では、もうそろそろお昼ですねぇ。

いつもの様に誰も来る気配がないのでお昼ご飯を食べに行きますか」

ケントがそう言うと診療所の扉のノブに引っ掛けてある看板を<診療中>から<昼休憩中>に変えて、全員で昼食を食べに行く。

食べ終えて戻ってくると、椅子に座って暫くまったりしていた。

というか、仮眠している班までいる。

まあ、みんながそうしてるし、実際誰も急患なんて来ないし、俺もひと眠りしよう。

診療所の椅子に座って少しだけ眠る事にした。


アイの声で目が覚める。

「どれくらい寝てた?」

と聞いたら

「時間にして15分程です。仮眠としては最適な時間ですね」

確かに、頭の中はスッキリしている。

「では、午後の診療を始めますか」

と言いながらケントが扉の看板を<診療中>に変える。

とは言っても、書類の整理は午前中に終わってしまったし、診療所には誰も来ないしで何もする事は無かった。

イーサンが初日の説明で

(診療所の勤務は休憩みたいなもの)

という説明も納得できる。

そんな感じでのんびりと午後の時間が過ぎていき、陽が落ちて篝火を付け始めて間もない時に外で兵士達が慌ただしくしている。

全員で外に出てみると全ての兵士達と魔導士が柵の手前で等間隔に配置されていた。

俺達の近くを通ったイーサンに

「何があったんです!?」

と聞くと

「ナイトスパイダーが幾つかの群れに分かれて、奇襲をかけて来たんです。

怪我人が出た場合を考えて、診療所の皆さんはここで待機しておいてください!

回復魔法が使える他の魔導士もこちらに来るように手配します」

との指示が出る。

早速怪我人の受け入れ準備に取り掛かる。

診療所の受け入れ準備が終わる頃に、イーサンの指示を受けた魔導士達が7名ほど集まった。

「皆さんはこちらで待機してください。

怪我人が出た場合は順次回復魔法をお願いします」

とケントが指示したすぐ後、早速怪我を負った兵士が数名運ばれてきた。

俺を含めた診療所の魔導士達がが手分けしながら、兵士に回復魔法をかけていくが何か違和感が残る。

「変だな。

陽が沈んで奇襲をかけられているとはいえ、ナイトスパイダー相手にここまでの怪我人が続出するものなのかな?」

とアイに聞いてみると

「確かにおかしいですね。ナイトスパイダーの実力はゴブリンとほぼ変わりません。

集団で奇襲を受けたとしても、これ程の被害が出るのは違和感を感じますね」

アイも俺の意見に同意はしてくれたが、今は怪我人を治療に専念する事が最優先。

勝手な行動は出来ない。

暫くするとボブが診療所に飛び込んできて

「アイカワさん、ナイトスパイダーの異常種が攻めてきました。

イーサン隊長の班が応戦していますが、ほとんど歯が立ちません。協力を!」

俺がケントの方を見ると頷いたので

「分かりました。案内してください!」

と言い、異常種がいるところへ向かう。


ボブの案内でナイトスパイダーの異常種がいる場所に到着すると、駐屯地の入り口付近でイーサンが息を切らしながら後ろでけがを負っている兵士を守りながら戦っていた。

全身に肉体強化をかけた状態にして

「大丈夫ですか?」

とイーサンに声をかけると

「すみません、助かります」

と一瞬笑顔が垣間見えた。

その隙をついて異常種が攻撃を仕掛けてくるが、俺の氷魔法で前には進ませない。

異常種が怯んだ隙にイーサンに魔法障壁をかけるが、相手の攻撃を耐えられるのは1度のみ。

仮に相手が連続攻撃でも出そうものなら、ここまで疲弊しているイーサンならどうなるか分からない。

俺が来るまでたった1人で部下達を守りながら戦っていたせいか、イーサンにもう余裕は無いように見えたからだ。

すぐさま他の場所から応援に駆け付けた兵士や魔導士達に

「後から加勢に来た者たちは怪我人を診療所に運べ!ここは俺と彼で持たせる!!」

とイーサンが指示を出す。

イーサンを守る形で、怪我人達が続々と後退する時間を稼ぐ。

一帯から怪我人が全て運び出された後

「貴方も後退してください。ここは俺と他のみんなに任せて!」

と俺がイーサンに交代するように促すが

「冗談でしょう?私はこの駐屯地の隊長ですよ。

貴方を見捨てて逃げられるわけないでしょう?」

だが素人目から見ても、もう立っているのもやっとの状態。

このままだという事を聞かないだろうから、戻って来たボブとデイブに

「イーサンを連れてこの場を離れて!彼はもう限界だ!早く!!」

と怒鳴り気味に言うと、ボブとデイブはイーサンを両脇に抱えて後退する。

「アイカワさん気を付けて!隊長を診療所に運んだら我々もすぐに駆け付けますから!」

と言いながら、その場を後にする。

よし、これで心置きなく戦える。

糸を吐かれると厄介だし、炎魔法を使用したいが木に燃え移るといけないので、以前解放したスキル<攻撃魔法のアップグレード>のスキルで炎の剣を作り出し、接近戦に持ち込む。

一気に距離を詰めて炎の剣で切りかかるが、相手も後方へジャンプする。

まだ異常種が空中にいる状態を見計らって、土魔法で高く分厚い壁を3枚、相手の後方に囲う様な形で作り出し、移動できるスペースを制限する。

相手が少し戸惑った様な感じを見せた瞬間、重力魔法で左足を全て砕いて動きを制限させた後、精錬した魔力の雷魔法でトドメを刺す。

雷魔法を受けた衝撃で異常種の尻の一部が裂けてると中身が垣間見えた。

何か小さな卵の様な物が沢山見える。

「ナイトスパイダーの卵です。炎魔法で焼いておいた方が良いですね。

どの道換金も出来ないですし」

とアイのアドバイスがあったので尻の裂けた部分に向けて炎魔法で中の卵を焼いておく。

倒した事に安心しそうになるが、診療所の方も気になるので異常種をマジックゲートに収容している時にボブ達が戻って来る。

「異常種はどうなりましたか?」

と息を切らしてボブが聞くが

「無事倒しました。イーサンの状態は?」

と聞くと

「大きな怪我はありません。但し今度は別の問題が」

別の問題?

「回復担当の魔導士の方々の魔力が無くなりそうで、まともな治療魔法がかけられません。

急いで診療所に戻って来てくれとケント医師が・・・」

今度はそっちか。

「了解です。急いで戻りましょう」


診療所に到着すると、怪我をした兵士達が診療所の前の地面に等間隔で座ったり、寝ころんだりしていた。

治療魔法をかけていた魔導士達もかなり疲労の色を隠せないでいた。

「良かった。無事だったんですね!」

とイーサンとケントが出迎える。

「どんな状況ですか?」

と聞くと

「怪我人があまりにも多くて、他の魔導士の魔力が尽きかけている状態です。

貴方以外にまともに治療魔法をかけられる魔導士がもういません。

医療物資もナイトスパイダーで負った傷を治す為の物資も無くなりかけています。

でも、治さずに放っておくと重症化して大変な事になるし、かと言ってアイカワさん1人でこれだけの数の兵士を短時間で治すなんて無理だろうし、どうすればいいのか・・・」

流石のこの状況にケントも成す術が無いようだ。

イーサンとケントが途方に暮れている中、俺はある事を思いつく。

「そうだ!これから俺が言う通りにしてください!」

と言い、まず怪我を負っている兵士達2名につき1人の回復担当の魔導士が受け持つ。

回復魔法を使える魔導士の後ろに、攻撃魔法担当の魔導士を数珠繋ぎに並ばせて回復担当の魔導士の方に手を乗せる。

そして徐々に攻撃魔法担当の魔導士の列を減らしていき、2列になった魔導士の後ろに俺が立ってそれぞれの方に俺の手を乗せる。

ここまで説明すればわかる方も多いだろう。

キリアナ王国でダンさんが瘴気の浄化の時の逆バージョンを試す。

「アイ、精錬した魔力の取り扱いをお願い」

と言うと

「分かりました。あまり無理をしないで」

との一言を聞いた後

「今から攻撃魔法担当の魔導士の体を介して回復魔法の魔導士の皆さんに私の魔力を送り込みます!

その魔力で怪我人を治していって下さい!

動ける兵士の皆さんや怪我が治って動ける方は、怪我で動けない方を魔導士の目の前まで運ぶ手伝いをお願いします!

尚、攻撃魔法担当の魔導士の方は絶対に途中で手を外さないで下さい!

では、始めます!!」

と言うと体内で精錬した魔力を継続して作り出す。

その魔力をアイが攻撃魔法担当の魔導士を通して、回復魔法担当の魔導士に送り込む。

「おお!回復魔法が使える。しかも体に負担が無い!」

との声が遠くから聞こえたのを最後に、外界の声が一切聞こえなくなった。

アイが魔力精錬に集中する為に気を効かせてくれたらしい。

俺は俺でそんな事は気にも留めず、必死で自分の魔力を精錬し続ける。

いったいどれくらい時間が経ったか分からない。

俺の魔力ももう底を尽きかけて精錬出来るだけの魔力は残って無い。

そして自分の中の魔力が尽きた瞬間、目の前が真っ暗になって意識を失った・・・



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