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【10万PV感謝!!】中年ニートの異世界転生 大魔導士スキルを貰い今度こそ気ままに生きる  作者: 村居 赤彦
第二章 バルシス王国編

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第四十五話


翌日、久々に依頼が再開されるとあって朝早くからギルドに赴く。

「こんな朝早くなら、まだ誰も来ていないだろ。

たまにはゆっくり依頼を吟味するかぁ」

なんて思いながら入り口の扉を開けると、それぞれのランクの掲示板の前でかなりの数の冒険者達が集まっていた。

その中にダンカン達を発見したので声をかける。

「おはよう。何の騒ぎ?この混みようは?」

とダンカンに話しかけると

「あ、アイカワさん。おはようございます。

なんでも、ドラゴンの騒ぎでここ2日間依頼が受けられなかったでしょ?

その影響で依頼を受けられずにくすぶってた冒険者達が、一気に押し寄せたんだって」

そんなに血の気が多いのか?ここにいる冒険者達は・・・?

「ダンカン達は今日受ける依頼、もう決めたの?」

と聞くと

「いえ、まだなの。

Dランクの掲示板も結構混みあっていて、依頼書の前にすらたどり着けてないの」

マオがそう言っている間にダンカンがなんとか人混みを分け入って1枚の依頼書を持ってきた。

「なんとか1枚だけ持ってこれたぜ!」

ダンカンが持ってきた依頼書を俺も一緒に見てみると

<トリナーレ村からの食糧輸送の護衛依頼>と書かれている。

「食糧輸送の護衛かぁ。どうする?受けてみようか?」

とダンカンが言ったが

「でもここ最近、トリナーレ村からの食糧輸送って魔物の数が増えていて、危険度が上がってるって噂よ?それでも受けるの?」

ただの食糧輸送の護衛でそこまでと思い

「そんなに危険なの?食糧輸送の護衛って?」

と俺が聞くと

「いえ、輸送の護衛そのものは危険な任務ではないけど、ここ最近この<トリナーレ村>からの食糧輸送の物資が何者かに襲撃されるって事件が起きてるのよ。

幸いこの国の食糧を支えてる村は他にも幾つかあるし、他の国との交易で入って来る食料もあるから食糧難に陥るって事はないけど、放っておくと面倒な事になりかねないわね」

とマオが説明してくれた。

「この“何者か”って、魔物かどうかも判明してないのかなぁ?

魔物だったら魔物って明記するし、トリナーレ村は峠を越えるから山賊って事もあり得るかも」

とリップが言うと

「もう、リップったら。このご時世に山賊なんかいる訳ないじゃない。

そんなのになるくらい血の気が多いなら、冒険者になってるわよ」

まあ、もっともな意見だ。

「アイカワさんも一緒に受けてみない?

他の村も見てみたいって言ってたしちょうどいい機会じゃない?」

とソフィアに勧められたので

「そうだな。受けてみるか」

次に行ってみたい国や街の情報も手に入るかもしれないし。

依頼書を受付の女性にダンカン達が手渡し、指定された場所へ向かう。


指定された場所に到着すると、3台の馬車と依頼主が待っていた。

「こんにちは。ギルドから依頼を受けた者ですが」

とダンカンが言うと

「こりゃどうも、お疲れさんです。トリナーレ商会の代表でマルズと言います。

今日はよろしくお願いします」

代表というともっと年配かと思ったが、俺より少し年上くらいか。

「こちらはもう準備は出来ていますが、出発しても大丈夫ですか?」

全員がお互いを見合うとそれぞれが頷き

「はい。大丈夫です。出発しましょう」

そう言うと全員馬車に乗り込み、トリナーレ村に出発する。


馬車に乗る順番としては俺とソフィアが先頭の馬車に、残るメンバーが3台目馬車に乗り込んだ。

流石に代表本人同行せず、バルシス王国に残る事になった。

「そういえば、依頼書には”何者かに襲われた”って書いてありましたけど、魔物ではないんですか?」

と疑問に思った事を馬車を操る男性に聞いてみると

「何せ生き残った者がいないので襲撃者の正体が分からないんです。

トリナーレ村に被害も出ていないので、魔物が出る可能性もあるので流石に”山賊”って事はないと思うんですが・・・」

と語ってくれた。

そうだよなぁ。どこに魔物がいるかわからないこの世界で、”山賊”とか”海賊”なんて連中は流石にいないよなぁ。

まあ、海賊になろうとしてた奴らなら遭遇したけど。

「そうだ、ちょっとお聞きしたいんですけどバルシス王国やトリナーレ村の周辺に、キリアナ王国以外で国や街ってありますか?」

と聞いてみた。

アイに聞くのが一番早いが、地元の人ならではの情報もあるのではないかと思い聞いてみる事にした。

「そうだなぁ。トリナーレ村の峠を更に越えると<サリム>という大きな街があります。

ただ、その峠道がかなり険しくて、トリナーレ村とサリムとは交易が無いんですよ。

人が越えられない程ではないが魔物もかなりいるだろうし、結構上のランクじゃないと難しいと思いますよ?」

そんなに険しいのか、気にはなるなぁ。

「なぁに?アイカワさん。もう次に行く街を探してるの?

まだバルシスに来てそんなに経ってないじゃない!」

と言われたが

「色々な国や街に行ってみたいって前に言ったでしょ?

それに今33歳だし、ソフィア達みたいに若くないんだしあっという間に歳とったら、キリアナ王国に帰ってこれなくなっちゃうよ」

なんて話をしているとトリナーレ村が見えてきた。


トリナーレ村は山間部に位置していて、バルシス王国から続く峠道からはかなり広大な畑が確認できる。

馬車が目的地に到着すると、現地の農民達が待っていて早速荷物が馬車に積み込まれる。

「取り敢えず行きは何もなかったわね。

リップ、後方からの探知魔法で何か分かったことある?」

とソフィアがリップに聞いたが

「いいえ、なにも探知できなかったわ。逆に怖いくらい」

と返って来た。

「私も。ゴブリンの1匹くらい引っかかってもおかしくないのに」

どうやら俺が馬車の男性に聞いている時に探知魔法を使用していた様だ。

村の中にバルシス王国の兵士の姿を見かけたので、近くにいたダンカンに

「なあ、あれってバルシス王国の兵士だよね?この村に駐屯してるの?」

と聞くと

「何言ってんです?普通はどの村だって管轄している国の兵士はいるもんですよ」

まあ、そりゃそうか。

何かあったら村人だけで対処するなんて不可能だもんなぁ。

「いやぁ、キリアナ王国にいた時はダンさん夫妻がいたアイゼルムの村にしか行ったことがないし、あの村にはキリアナ王国の兵士は駐屯してなかったから」

と答えた。

「そりぁ強い魔導士が2人いるしダンさんって人格者って聞きますから、兵士が駐屯してなくともダンさんを中心にその村の平穏が保たれてたんじゃないんですか?」

確かにあの飄々(ひょうひょう)とした性格のダンさんと、竹を割ったようなさっぱりとした性格のマリンさんがいれば、少なくとも村の中で揉め事なんか起こらないだろう。

「お~い!もうそろそろ出発するぞ~」

と馬車の男性に呼ばれたので、最初に乗った馬車にソフィアと乗り込みバルシス王国へ出発する。


来た道を戻っている途中、今度は俺が定期的に探知魔法で周囲を警戒する。

ん?上空で微かに反応したな。

「どう?アイカワさん。なにか探知出来た?」

と聞かれたが

「上空で微かに反応があった。もう1度探知魔法をかけてみる」

今度は精錬した魔力で探知魔法をかけてみると

「上空に反応あり!それも5匹!!」

と俺が叫ぶと馬車が3台とも止まる。

上を見上げると見覚えのあるシルエットが5つ、旋回しながら徐々に高度を下げてくる。

「ワイバーンだ!!全員警戒してくれ!!」

と叫ぶと

「近くの森には何もいないわ!私達は降りてワイバーンの注意を引くから、馬車は森に続く小道へ入って!」

ソフィアがそう叫ぶと後方の馬車に乗っていたダンカン達が降りてくる。

「リップは馬車に魔法障壁を掛けてから合流して!

馬車の人達は何かあれば大声で私達に知らせてください!!」

ソフィアの的確な指示が飛ぶ。

俺は合流したリップ以外のメンバーと上を見上げる。

「もう少し高度が下がってきたら、俺とマオが魔法でワイバーンを地上に落下させる。

落ちたワイバーンにダンカンが首にトドメを刺してくれ」

と俺が言うと

「わわ、分かった」

と落ち着かない様子で返事をした。

「落ち着けよ、ダンカン。

首にトドメを刺せなくても翼の薄い部分に傷をつければ、相手は飛べない筈だ。

仮にトドメを刺せなくても、その時は俺かマオの攻撃魔法でトドメを刺すさ。

それにもしもの時はソフィアと俺の魔法障壁が守るさ」

とダンカンを落ち着かせる。

その一言を聞いたダンカンが少し落ち着いたようだ。

「ソフィア、まずマオとダンカンに魔法障壁を。

俺は自分でかける」

と今度は俺が指示を出すと

魔法障壁をかけ終わったタイミングでリップも合流し、マオと同時に両手をワイバーンがいる上空へ向ける。

「よし、じゃあやるか!」

俺の一言を皮切りに俺とマオが何発も雷魔法を発射する。

正確に狙ったわけではないが、雷魔法が命中した2体のワイバーンが地上に落ちて来た。

痺れて動けないワイバーンに対して、ダンカンが確実にトドメを刺していく。

どうやら完全に緊張が解けだようだ。

雷魔法を撃つ回数が俺よりもマオの方が若干多いような気がしたので

「マオ、そんなに焦らなくていいよ。魔力を使い切ったら元も子もないよ」

とアドバイスする。

「うん、分かってる。分かってるけど」

と取り敢えず落ち着いてはいる様だ。

その後順調に2体を仕留めた時、残り1体が旋回を止めて森の方へ急降下し始めた。

「まずい、馬車がいる森へ行く気だ!」

そうダンカンが叫ぶのと同時に、肉体強化を掛けた俺がワイバーンを追う。

小道の入り口付近に着地したワイバーンに対し、魔法で攻撃しても良かったが木や葉っぱに引火してもまずいので装備している剣で攻撃することにした。

俺を見つけたワイバーンがけたたましい鳴き声を発しながら、先端が尖っている尻尾で攻撃してくる。

それを斜め前に飛んで避けた後、剣で片足に傷を負わせ、今度は木の幹に両足を付けた反動で羽の薄い部分に切りかかり、ダメージを入れて飛べなくする。

倒れ込んで翼をバタバタさせている状態で弱めの雷魔法を何発も入れて動きを止めた後、追いついたダンカンにトドメを入れて貰う。

「危なかった~」

俺とダンカンがその場に座り込むと後から女性陣3人が追いついた。

「やった~!私達だけでワイバーンを5匹も倒しちゃった!」

とマオが歓喜の声を上げた。

「どうやら馬車を襲ってたのはこのワイバーン達だろうね。でも、どうして?」

と俺が疑問を口にすると

「もしかしたら、そう遠くない場所に倒したワイバーン達の巣があるんじゃないかしら。

それで雛の餌になる野菜や馬車の人達を襲ってたのかも」

ワイバーンって野菜も食べるの?肉食じゃなくて?

「も、もう大丈夫かい?」

森に避難していた商会の人達が恐る恐る出てくる。

「少し待ってください。ソフィア、リップ、探知魔法をお願い」

と俺が言うと2人は少し離れて探知魔法を地上と上空に掛ける。

「大丈夫。こっちはなにも探知できないわ。そっちは?」

とリップがソフィアに聞くと

「こっちも大丈夫よ!何もいないわ!」

とソフィアの返答が聞こえた。

「ふぅ。一時はどうなる事かと思ったよ。ハハ、まだ足が震えてやがる」

と商会の人が言ったが

「大丈夫ですか?もし落ち着いてないんだったら精神を落ち着かせる魔法をかけますが?」

とソフィアが言ったが

「俺達より馬にかけてくれ。馬が動揺してたら運べる物も運べなくなる」

そうお願いされるとソフィアとリップがそれぞれの馬の所へ優しく近づき、精神安定の魔法をかける。

俺も参加しても良かったが、ワイバーンを傷つけた時の血の匂いを嗅いで興奮したらまずいと思ったので止めておいた。

ワイバーンの亡骸を全て回収し、馬をを落ち着かせた後、小道を出てバルシス王国に向けて再度出発する。


再出発した後の帰り道も引き続き警戒していたがやはり魔物も、ましてや人間でさえも探知魔法で引っかからなかった。

やはり馬車を襲っていた犯人は山賊ではなく、ワイバーンでほぼ確定の様だ。

商会に到着した後、事の経緯を代表に伝えると

「なんと!犯人は5匹のワイバーンでしたか。で、そのワイバーン達は?」

と聞かれたが

「襲ってきたワイバーン達が全て退治しました。

可能性としては離れた所に巣があった可能性もあります。

一応、この事はギルドを通して王国にも伝えておきます。」

とソフィアが代表に言うと

「分かりました、お願いします。

我々も後日国王様に謁見させていただき、今後の対応を検討しなければなぁ」

と右手で頭を掻きながら答えた。

「では、我々はこれで失礼します」

とダンカンが言い、ギルドへ向かおうとすると

「ありがとうございました~」

とその場にいた商会の人達が手を振りながら見送ってくれた。


ギルドに到着して解体所に向かうと、膨大な数の魔物の亡骸が積みあがっていた。

「うぉっ、どうしたんです?この亡骸の量は?」

とダンカンが聞くと

「どうしたもこうしたもあるか!

今日依頼をこなした連中が一気に魔物を持ち込んで来やがった。

これじゃあ、いつ終わるかわからんから、アンタらは明日以降に持ち込んでくれ」

と言われて解体所を追い出される。

取り敢えず受付の女性に依頼完了の報告と、依頼の報酬を受け取りワイバーンの事を城に報告してほしいと言ったが

「申し訳ありません。今日の所は依頼完了の手続きのみでお願いします。

今日だけで大変な量の事務手続きがありまして・・・」

こっちもか。まあ、しょうがない。

「なら、明日もう1度来ますのでその時に改めてワイバーンの件をお伝えします」

とダンカンが言うと

「じゃあ、アイカワさん。明日の午後にギルドに集まりましょう」

とダンカン達から依頼の報酬の5分の1の金額を貰ってこの日は別れた。


シャルナンに戻って来ると、すぐさま夕食を食べて部屋に戻る。

椅子に座ると一気に緊張の糸が切れて、大きなため息をつく。

「やっと落ち着けた~。こんなに緊張したのはキリアナ王国の大規模討伐依頼だ~」

と大きめの独り言を言うと

「お疲れさまでした。見事な判断でしたね」

とアイが褒めてくれた。

「まあ、1度だけとはいえワイバーンとは戦闘しているからね。

その時のやり方をマネてみただけだよ」

まあ、あんなに上手くいくとは思わなかったが。

「それに5匹しかいなかったのが幸いだったね。

もし、もっと多くいて分散して襲い掛かられたらきっと犠牲者が出ていたよ」

とだらけた感じで答える。

「そんな貴方に朗報です。

今日の戦闘でレベルアップしたので、明日以降新たに解放するスキルを1つ選んでください」

とアイが言ってきたので

「ああ、明日選ぶ事にするよ」

と言いながらベットに寝そべる。

そしてアイと雑談をしている内にいつの間に寝落ちしていた。


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