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【10万PV感謝!!】中年ニートの異世界転生 大魔導士スキルを貰い今度こそ気ままに生きる  作者: 村居 赤彦
第二章 バルシス王国編

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第四十三話


「・・・てください!・・きてください!!」

頭の中でアイの声が聞こえる。

「起きてください!街にドラゴンが現れました!起きてください!」

ド、ドラゴン!?

そのワードに驚いて急に起き上がり、窓を開けて外の様子を見てみると街の人達が慌てふためいていた。

近くの建物に避難する人、街はずれの方へ走っていく人と様々だ。

「なんで街に飛来してんだ?誰かちょっかいでも出したのか?」

だとしたらとんでもない事をしてることになるが、ここで俺もトンデモナイ事を思いつく。

「なあ、アイ。心を読むスキルでドラゴンの心の中を読む事って出来るかな?」

なんて突拍子もない事を口に出すと

「可能です。但し、あのドラゴンが好戦的な性格だとすると命の保証は出来ませんが」

と返されたが

「ここは一か八か、やってみよう。

もし昨日、ダンカンから聞いた昔話が本当なら、何故飛来したのか、何だったら説得して街に現れない様にお願いする事も出来るかもしれない」

と言うと

「分かりました。もしもの時は私も出来うるだけのバックアップはします」

と初めてアイの緊張感のある声で同意を得ると、早速窓から外に出てシャルナンの屋根に登り、ドラゴンがある程度近くまで来たところで心を読むスキルを発動してみると

「ああ~、まずいなぁ~。

ぼーっとしながら飛んでたら間違って町中に来ちまった。

街の人達パニクってるなぁ。どうしよ、これ」

と初老の男性の声が聞こえてきた。

ん?読む相手を間違えたか?

でも確かに上空にいるドラゴンを視界に捉えてるし、他に何もいないしなぁ。

「どうやら間違えて迷い込んでしまったようですね」

とアイがいつもの口調に戻った。

なんとか海岸まで誘導できないかなと考えて思いついたのが

「雷魔法で大きな矢印を作って誘導できないかな?」

とアイに聞くと

「ドラゴンが気づいてくれれば可能だと思います。

それに今街の人達は自宅に避難しているか、キリアナ王国側に逃げているので海岸方面、出来ればリザードマンの巣があった辺りに誘導するのが一番かと思います」

よし、その案でいくか。

肉体強化を強めに発動して、ドラゴンが近くに来るタイミングで屋根に傷がつかない様に、出来るだけ高くジャンプする。

そして精錬した魔力の雷魔法で矢印を作り、海岸方面に矢の先を向けると出来るだけ大きな声で

「人気のない場所までこの矢印で誘導するから、ひとまず海岸まで行ってくれー!」

と叫ぶとドラゴンが頷く仕草を見せた。

空中で風魔法を発動させて着地する衝撃を抑えた後、すかさず全速力で海岸へ駆け出す。


このパニックのおかげか、検問所には誰もおらず難なく海岸に向かう事が出来た。

そこまで肉体強化を強く発動していないにも関わらず、なんとドラゴンが飛んでいる速さよりも先に海岸に到着した。

ドラゴンを地上から視認するともう一度空高くジャンプして雷魔法で矢印を作り、リザードマンの巣があった洞窟の入り口付近へドラゴンを誘導する。

着地したドラゴンが俺の目の前に着陸すると改めてその大きさに圧倒される。

「はじめまして。俺の言葉が分かりますか?」

とドラゴンに問いかけると

「ああ、大丈夫。言葉で意思の疎通は出来る。

誘導してくれてありがとう。

もしあのまま上空に留まっていたらあの国の人達から攻撃されていたかもしれないからね」

と礼を言われた。

「俺はアイカワ ユウイチと言います。可能ならお名前を教えて頂けますか?」

と問うと

「私はエンシェントドラゴン。前世での名前は<スズキ ゴロウ>だ」

ん?<スズキ ゴロウ>?て事は日本人か?

とあっけにとられていると

「君の名前からして日本人で、創生神様の計らいでこちらの世界に転生したクチだろう?実は私も同じなんだ」

と穏やかな口調で語ると

「あの~、つかぬ事を聞きますが、何故街に飛んで来たんです?」

と尋ねると

「いや~、朝の運動で

(ある程度の距離を飛ぶのが日課)

なんだがついぼーっとしながら飛んでたら街に入ってしまって。

つい先日も、沖合を飛んでたら漁をしていた人達に見られてしまって焦ったのなんの」

と苦笑いしながら頬を掻く仕草を見せた。

「ま、まあ、なにはともあれここに誘導出来て良かったです。

因みに(転生して来た)って事は元々は人間だったんですよね?

こちらの世界では最初からドラゴンの姿で?」

と少し冗談交じりに聞いたら

「とんでもない!こちらの世界に来てからも人間だったさ。

赤ん坊として転生して、その後冒険者をしていた時に、偶然出会ったドラゴンの口車に乗ってしまい、誤ってそのドラゴンに取り込まれてしまったんだ。

意識と人格は私のままなんだが、人間の姿になる事が出来なくて諦めてこのままなんだ」

どんな口車に乗ったらドラゴンと一体化しようとするんだよ、と苦笑いしていると

「あ、因みに私は攻撃能力が全く無いし、君を取り込む事も出来ないから安心してくれ。

よく見た目で誤解されてしまって参ってるんだよ~」

とひとまず攻撃の意思も、悪意の欠片もないらしい。

念の為心を読むスキルで再度確認したが本当にそう思ってないので一安心する。

「何処か住んでいる場所はあるんですか?」

と聞いてみると

「いや、実はキリアナ王国を過ぎた山脈に住んでいるんだが、そのまま直進するとキリアナ王国の人達にまで迷惑が掛かると考えしまって、帰るに帰れなくなってしまったんだ。

今は仮の住処(すみか)があるんだが、前にいた所と比べると良い環境ではなくてね。

何かいい方法があれば良いんだが・・・」

確かに、ドラゴンが飛来しただけであれだけの騒ぎが起こるんだから、躊躇してもおかしくはないか。

「では、私の方で誰とも遭遇せずに帰れるルートを表示します。

そうスズキさんに伝えてください」

とアイが言うので

「そういう事なら誰とも会わずに帰れるルートを表示しましょうか?」

と提案すると

「おお、出来るならぜひ頼む!」

ん?マップやスキル開放一覧の画面を現実世界に出せたっけ?

なんて疑問が浮かんだが、なんとドラゴンが見やすい大きさでマップが表示された。

エンシェントドラゴン・・・もとい、スズキさんが画面を見ながら

「ふむふむ、こういうルートで・・・こういけば良いのか。

なるほど!いやぁ~助かったよ。一時はどうなる事かと」

この画面表示問題はスズキさんが飛び去った後にアイに聞く事にしよう。

「せっかくここまでしてくれたので何か礼をしたいのだが・・・」

とスズキさんが言い出したが

「いえ、お礼なんて結構です。そんな目的で助けたわけじゃないので」

と断ったが

「いや、流石に何かしなくては私の気が済まないよ。

今私が君にしてあげられるのは<肉体の限界値を底上げする>くらいだが

それでもいいかね?」

と言われて

「<肉体の限界値の底上げ>ですか?どんな内容なんです?」

とスズキさんに聞くと

「端的に言えば、人間の筋力や耐久力の底上げだよ。

私を誘導する際に空高くジャンプした時に<肉体強化>のスキルを使っていただろう>?

そのスキルを使う際にも役立つと思うよ?」

え?スキルについて知っているのか?

「スキルについてご存じなんですか?」

と思わず聞くと

「そりゃそうさ。こちらの世界に転生する際に創生神様から色々聞いたからね。

それに人間があんなに高くジャンプできないでしょ?普通。

あ、一応言っておくけどこの能力のデメリットは一切ないからね」

と笑顔でウインクまでされた。

「じゃあ、そういう事なら有難く頂きます」

とスズキさんの<肉体の限界値の底上げ>を貰う事にした。

「では、授けるよ」

と言うと、アイがスキルを解放する時と同じ体がふわっとした感覚と共に、体の周りがじんわりとした光に包まれる。

そうだ、俺よりも先にこの世界に来ているなら聞いておきたい事がある。

「あと、一つお聞きしたい事があるんですけど、この海を渡った先にご飯や味噌汁を食べる習慣がある国があるって聞いたことがあるんですが、行った事はありますか?」

そう、もし行けるなら一度でいいから行っておきたい。

「ああ、日本みたいな国だろう?行った事はあるよ。

ただ、私が若い頃行った時は諸外国との交流が殆どない時で、尚且つ言葉が通じなかったよ。

あと、お米も一般のお店で食べられるのは白米ではなく雑穀米だったから、オススメはしないよ。

<鎖国制度真っ只中の江戸時代>って言えば想像しやすいかな」

と言われた。

「あ~、そうなんですか~。そんな感じですかぁ・・・」

そりゃ、残念。そんな所に<外国人>が行ったら流石にまずいか。

「じゃあ、道順を忘れない内に私はこれで失礼するよ。

ああそうだ。先程授けた能力は内臓にも適用されるから滅多な事じゃお腹を壊したり、内臓系の病気になったりしないから」

と翼を大きく広げてアイが出したマップの方角へ空高く飛んで行った。

「お元気で~!!」

と俺が叫ぶとチラッと俺を見て、軽く手を振ってくれた。 


海岸から街に戻る途中、検問所には兵士がいつもより多く立っていた。

「どうやらドラゴンの飛来に紛れて不法入国する人を取り締まっているようですね」

面倒だな。

そう思って肉体強化を使い、複数立っている兵士の近くに小石を投げて、兵士達が注意をそちらに向けている隙に、音を立てない様に一気に検問所の裏に回り込み、街の中に入る。

一旦シャルナンに戻ると、部屋の窓は空いたままで周りには誰もいなかった。

どうやら街の人達はまだドラゴンに怯えて、外には出ていない様だ。

この隙に窓から部屋に入り、そっと閉めて何事も無かったように椅子に座った。

扉を開けて店のカウンターをそっと覗くと、店の主人が相変わらず椅子に座っている。

「よかった~。ばれてない」

と扉を閉めて小声で呟く。

「さて、これからどうしようかな。

まさかドラゴンが街に来るなんて想像していなかったし、今日は依頼も受けられないし、どうしようかな」

とアイに聞いてみると

「まだお昼前なので、ゆっくりすればいいかと思いますよ。

街の様子から見るに、他のお店も開いていない様ですので」

と言われた。

「そうだね。そういう事ならお腹がすくまでまったりするかぁ~」

と椅子に座ったままアイと暫く雑談をしていた。



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