第三十三話
ダンさん達とリフルへ向かう途中、ケイン達とエヴァン達両グループと合流する。
どうやら両グループがそれぞれ宿泊している宿はリフルより近かったようだ。
「お、おひさしぶりです!ケインさん、ウィルさん!」
とケイン達に合流したエヴァンがガチガチに緊張しながら挨拶をした。
そんなエヴァンの様子をケイン達は微笑みながら
「相変わらずだな。エヴァン君」
とケインが言うと
「エヴァン達とはどういった経緯で?やっぱり俺と同じ初心者ランクでの指導ですか?」
と俺が聞くと
「ああ。そうだよ。アイカワさんと同じく俺達が彼らを担当したんだ。」
とウィルが言った。するとメイが
「あの~、今日の浄化の中心だったダンさんとケインさん達とはどんな関係なんですか?
アイカワさんはケインさん達の紹介で知り合ったって聞きましたけど・・・」
と言うと
「な~んだ、ちゃんと説明してね~、アイカワさん。何を隠そうここにいるダンさん夫妻はアタイとケイトの師匠なのだ~」
と自慢げに胸を張りながらダンさん夫妻との関係を説明するルーシー。
何処に何を隠す要素があるんだよと心の中でツッコみを入れると
「何を自慢げに話してるんだい?この子は・・・」
とマリンさんが頭を抱えながらルーシーにツッコんだ。
ケイトも苦笑いをしながらルーシーを見ていると
「おおお、お2人のお師匠さんんん!?」
とエヴァンとメイが素っ頓狂な声を上げると
「あわわわわ、私達、今、すすす凄い人達と同じく、空間にいる~~~!?」
と2人が凄い動揺っぷりを見せた。
「いや、動揺し過ぎでしょ。俺と一緒に入った初めてのダンジョンより緊張してるぞ」
と俺がチャチャを入れる。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ~。取って食べやしませんから~」
とダンさんはいつもの調子でなだめる。
そんな会話をしている内にリフルに到着する。
すっかり日も落ちて辺りが暗くなっている中、リフルの扉を開けて
「こんばんは~」
とダンさんが変わらない口調で入っていくとリフルの主人が
「おやおや、随分と久しぶりだね~」
といつもと変わらない笑顔で俺達全員を迎え入れる。
「お久しぶりです。中々挨拶に来れずにごめんなさいね」
とマリンさんが今にも泣きそうな感じで、リフルの夫婦にそれぞれハグをする。
「おお、そちらは確かケイン君達だったね。みんな元気そうで何よりだよ。
最後に来たのはCランクに昇格したすぐの頃だったかな?」
とケイン達両腕を久しぶりに再会した自分の子供達の様に触る。
「はい!お久しぶりです。ご無沙汰しております」
とケイン達も再会を懐かしむ。
「ささ、座ってゆっくりしていってくれ」
とテーブルを3つくっつけて俺達9人全員が座れるようにしてくれた。
エヴァン達はある程度緊張がほぐれてきたみたいで、ダンさん夫妻ともつたないが雑談を交わしている。
他のお客さんがいなくなった頃合いを見計らって、主人が店の「OPEN」を「CLOSE」に変えてしまった。
それを偶然見ていた俺が
「良いんですか?お店閉めちゃって?」
と小声で聞くと
「ああ、大丈夫だよ。ピークはもう過ぎたから。
それにこれだけ懐かい顔が揃えば、早めに閉めた方が私達も落ち着いて料理が作れるってもんさ」
と笑顔で答えた。
それぞれ注文した料理が運ばれてきて、全員分揃うと早速いただく事となった。
「ん~~~、美味しい~~~!」
とルーシーが真っ先に歓喜の声を上げる。
「ほんと、昔から全然変わってないわ。流石ですね。お2人共」
とマリンさんも夫婦の料理を絶賛する。
「ダンさんとマリンさんは、ここの御夫婦とはどういって経緯で知り合ったんですか?」
と聞くと
「私達が冒険者になってやっと独り立ちする頃、私が先にここにお世話になって、後に同じパーティーになったマリンが、ここにご厄介になったという訳です」
とダンさんが説明してくれた。
「その後、2人が冒険者を引退して結婚すると聞いた時には、飛び上がる程喜んだものよ」
とリフルの奥さんが昔の事を話し出した。
「そうそう。あの頃マリンちゃんは料理が点でダメでね、冒険者を引退する直前の数週間、私ら夫婦に毎日料理を教わってたのを今でも思い出すよ~」
とリフルの主人が意外な過去を話し出す。
「もう、おじさんたら~。その話はしない約束でしょ~」
とマリンさんが照れながらも嬉しそうにリフルの主人の肩をポンと優しく叩く。
そのやり取りを全員が笑いながら俺達が聞いている。
料理を食べ終えて、後片付けが済んで全員でまったりしているとケインが
「そう言えばアイカワさん、Dランクになったら別の街に行ってみたいって言っていたが、もう次に行く街は決めてあるのか?」
と聞かれて
「はい。次は隣のバルシス王国に行ってみようかと思ってます」
と答えた。
「ほほぉ、お隣のバルシス王国ですか。何か理由が?」
とダンさんに聞かれて
「特に深い意味は無いんです。ただ街の人からそういう国が隣にあって
(この街を流れてる小川沿いに行けばある海沿いの国)
と聞いたものですから、隣ならすぐ着くかなぁと思って」
と答えた。
まあ、魚が食べたいと思っただけで決めた行先だが。
するとルーシーが
「バルシス王国かぁ。確か海沿いの国で海魚料理が美味しいって聞くよねぇ。
海の魚食べた事無いからアタイも行って食べてみたいなぁ」
と言うと
「もう、ルーシーったらもうお腹がすいたのかい?」
とマリンさんが言うと
「もう、違いますよ~」
とルーシーが頬を膨らませる。
「いつ頃行くつもりなの?」
とウィルに聞かれて
「う~ん、そうですねぇ。瘴気の浄化が終わったタイミングでと思っていたので近日中、まあ早ければ明日にでもお世話になった人達に挨拶して、その後に行こうかと考えていたんです」
と答えると
「え~、アイカワさん、この街からいなくなっちゃうんですか~?」
とエヴァンとメイが揃って声を上げたが
「この街の人達は良い人達ばかりだしずっと居たいとは思うけど、どうせ旅に出るなら他の色々な国もどんな感じか見てみたいんだ」
と率直に答えた。
「あ、いつか必ずこの国には帰ってくるつもりですけどね」
と念は押しておいた。
「いいな~、ねえケイン、アタイ達もアイカワさんと一緒にバルシス王国に行こうよ~」
と突然ルーシーが言い出すが
「何言ってんだい!アンタはもっと研鑽を積みな!」
とマリンさんに喝を入れられる。
「そうだな。いつかこの街にアイカワさんが戻ってきたら、またここで、このメンバーで集まろう!」
とケイン達と約束をしてみんながリフルを後にする。
部屋に戻った後、椅子に座り明日の流れを軽く想像する。
武器屋の主人、ケイン達とエヴァン達、ギルドの皆、ティア、あ、国王と王女ってそう簡単に会えるのかな?
まあ、明日になってみればわかるか。
そんな事を思いつつ、ベットに入る。
いつものように
「おやすみ、アイ」
と言うと
「おやすみなさい」
とアイの言葉を聞きながら眠りにつく




