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【10万PV感謝!!】中年ニートの異世界転生 大魔導士スキルを貰い今度こそ気ままに生きる  作者: 村居 赤彦
第一章 キリアナ王国編

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第三十二話


晩餐会の翌日。今日何をするか部屋で考える。

ギルドで依頼を受ける?どこかに出かけて魔法の修行?

当面の生活費はケイン達とオークの群れの討伐に始まり、ダイス達とのクラッシャーバッファロー討伐、王国からの大規模魔物依頼とかなりの余裕はある。

(アホみたいな豪遊をしなければだが)

そんないつものルーティーンを考えている内に、もしこの世界に転生していなければ今頃いったい何をしていただろうとふと考える・・・


転生前。

43歳の中年、職無し(一応社会人歴は10年以上あるが)、貯金も底を尽き始めて本当の意味で崖っぷち。

吹っ切れる事さえ出来れば、バイトでも派遣社員でも最低限の生活は出来たかもしれない。

でも、社会に、人間関係に対して心が折れて10年以上、そうそう人は立ち直れるものでもない。

生まれ育ったのが田舎で、昔からの親戚の付き合いだの、それ関連のしがらみだの風習だのにがんじがらめになっている挙句、買い手もつかないような畑を残されても正直どうしようもない状況だった。

いつか遊んだゲームの主人公が、死にかけて、新たな仲間と出会って、ハッピーエンドでの終わり間際

「どん底まで落ちてもあとは上しか行く道がない」とか「地に足を付けて見上げれば希望で輝いている」

とかあったが、現在進行形でどん底の状態の人間からすれば、そんな言葉は所詮キレイごとにしか聞こえない。

(まあ、所詮はテレビゲームの話だが・・・)

その他、過去の色々な出来事を思い出す。

かつて派遣先の職場で理不尽に何度も怒られたこと。

その派遣先を辞めて別の現場に移ったら、俺を理不尽に怒ってた奴が転属願を出して、俺と同じ現場で何食わぬ顔で働きだした事。

そのトラウマを引きずったまま会社を辞めて新たな会社に転職をして結局失敗し、それがトドメとなって心が完全に砕け散ってしまった事等々・・・

いっその事

(記憶喪失になり何もわからなくなってしまえば楽なのに)と何度も思った事もある。

創生神様にこちらの世界に来る時に記憶をリセットしてもらえれば、こんな事思い出さずに済んだのに、なんて思っていると気づかない内に涙が出ていた。

それに気づいたアイが

「大丈夫ですか?涙が出ているようですが」

と声をかけてくれたが

「ごめん。大丈夫。こっちに来る前の記憶を思い出していたら、知らない内に涙が出てた」

とこぼれてくる涙を拭いながら言った。

「何か不安な事があれば何時でも話してください。聞く事くらいは私にも出来ますので」

とアイが言ってくれたが

「ありがとう」

アイの様な存在が転生前の世界にいれば、もっとまともな生活が送れたかも・・・ってそれこそゲームみたいな話か。

それに、こちらの世界に来てからは今の所何事も上手くいっている。

創生神様には感謝しきりだし、調子に乗ってバカな事さえしなければ、順風満帆な生活を送る事が出来るはずだ。

取り敢えずアイと雑談をしながら心を落ち着かせる。

お昼近くになると俺に王国の兵士が訪ねてきた。

内容は瘴気の浄化についてで、今日の午後出発するので城に集まるようにとの事。

尚、依頼の部類ではなく召集との事。要はほぼ強制だ。

なら、早速城へ向かうか。


城へ到着すると中庭に魔導士達が沢山集まっていた。

先頭にはダンさん夫妻もいる。

間に合った事に安堵していると

「アイカワさん、こんにちは」

とティアに声を掛けられた。雑談を少ししていると

「魔導士の皆さん。本日はお集まりいただきありがとうございます。

これより瘴気の浄化へ向かいます。護衛は兵士が(つと)めますが瘴気は継続的に地下から発生しておりますので万が一の時には、遭遇した魔物の討伐にご協力をお願いする事がありますのでよろしくお願いします。では、出発!」

とジョージの号令で兵士と魔導士が前回討伐した地点へ向かう。


道中、魔物に遭遇することは一切なかった。

流石に2日前にあれだけの数を倒せばなぁ、と思っていると浄化地点に到着する。

「それでは、ダンさんを中心に円になるように並んでください」

とのジョージの説明通り全員が並ぶと

「では次に、隣の魔導士の肩に手を乗せて私が合図したら意識を集中し、魔力を出来るだけ集めて精錬してください」

との事。

指示通り左隣にいたティアの肩に手を乗せて、右隣にいた別の魔導士も俺の右肩に手を乗せて合図を待つ。

1分ほどした後に

「では魔力精錬をはじめてください!」

との合図と同時に体内で出来るだけ魔力を集め精錬する。

すると体内で精錬した魔力が不思議な事に徐々に消えていく。

一瞬驚いたがアイが

「まだ精錬は可能です、続けてください」

との指示が来たので、それに従う。

精錬しては消え、また精錬しては消えてを何度が繰り返し大半の魔力が無くなると

「はい!そこまで!!」

とジョージの指示が出た。

魔力を精錬している間は目を閉じていて分からなかったが、円の中心にいるダンさんの目の前にとてつもなく大きく、透き通った球体があった。

「皆さんから集めた精錬した魔力です。あれだけの量は滅多に見る機会は無いですね」

とアイが説明してくれた。

そのすぐあと、ダンさんが魔力の塊を上下に少しづつ伸ばしていく。

隣にいるティアが

「ああやって私達から集めた魔力で空に溜まった瘴気と、地中から湧き出ている瘴気を同時に浄化しているの。

現状、ダンさんクラスの魔導士じゃないとあんな芸当出来ないわ、流石ね~」

とダンさんを褒めている。

確かに圧巻の光景だった。

まず、あの量の魔力をその場に維持させるだけでもかなりの技量が必要で、しかもあれだけの魔力の塊を少しづつ上下に継続的に操るなんて・・・

気が付けばダンさんの浄化作業が終わるまでずっと無言で見続けていた。

護衛の兵士達は周辺に気を配っていたが、他の魔導士はダンさんが作業中はずっと無言だった。

集まった全ての魔力が無くなり、ダンさんがジョージの方を向き笑顔で頷く。

どうやら浄化が完了したようだ。

するとジョージが

「浄化が無事終了しましたが、魔力の使い過ぎで体調が優れない方はいらっしゃいますか?

いたら申告してください。いらっしゃいませんか?」

と質問するが誰も申告はしなかった。

「ではおられない様なので、これより城へ帰還します」

と同時に全員が城の方へ歩き出す。


城へ到着し、全員が中庭に集まる。

「これにて瘴気の浄化作業は終了となります。

参加された冒険者の方々には心ばかりですが謝礼金を用意させていただきました。

お帰りになる際にこちらにてお受け取り下さい。では、解散!」

とジョージの号令と共に王国直属の魔導士は街に城にと去っていく。

ティアも笑顔で

「じゃあね」

と言い、街へ去っていく

残された俺達冒険者が残り、ジョージの所へ集まる。

この時にルーシーやケイト、ダイスやロイドにメイまでいた。

まあ、強制だからそりゃくるかなんて思っていると

「では謝礼金です。お受け取り下さい」

と兵士達が持っている小袋を1人ずつ渡していく。

渡し終えるとジョージが

「では、本日はありがとうございました。では失礼します」

と兵士達と一礼して城の中へ消えていく。

ダイスとロイドに声を掛けようと周囲を見ると既に謝礼金を受け取って城の門から出ていくところだった。

早すぎないか?てか1杯ひっかけてから帰る気か?と思いながらマジックゲートに謝礼金を入れていると

「やっぱり貴方も来ていましたか~。相変わらず凄い魔力の量と質ですね~」

とルーシーとケイトを連れたダンさん夫妻が話しかけてくれた。

「いや、俺はただ魔力を集めただけですから」

と謙遜していると

「そんな謙遜しなくても結構ですよ~。自分では気づいてないかもしれませんが、貴方の精錬した魔力は他の魔導士と少し違うんです。

それに何度かこの召集に参加していますが、あんな純度の高い魔力を集める事が出来たのは初めてなんです。

これはうかうかしていると、ルーシーやケイトもあっという間に追い越されてしまうかもしれませんねぇ~」

と冗談を言うと当の2人は

「酷い、酷いよ、先生・・・」

と言いながら揃ってその場にしゃがんでいじけだした。

「もう、2人共冗談ですよ~。ちゃんと毎日修行すれば大丈夫ですってば~」

とダンさんが笑いながらフォローを入れていると、1人で帰ろうとするメイを見つけて

「やあ、メイ。久しぶり。もう帰るの?」

と声をかける。するとメイは

「はい、エヴァンも待っているしこれで。

それにあの方々はこの周辺で1番の魔導士と言われている、ダンさんと奥さんのマリンさんですよね?お知り合いなんですか?」

と聞かれ

「ああ、氷の魔法を上手く出せない時に、初心者ランクでお世話になったケイン達の紹介で知り合ったんだ」

と説明した。

するとケイトが俺とメイに

「アイカワさん、メイちゃんも、一緒にご飯食べに行こうよ~」

と俺達の所に来る。

「ええ!?私もですか?でもエヴァンが待ってるし・・・」

と困惑していると

「だったらエヴァン君も呼べばいいじゃない。こっちもケインとウィルも呼ぶし。

久しぶりに皆でご飯食べようよ~」

と提案してきた。なんだ、ケイン達とエヴァン達は知り合いなのか。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

とメイもその提案に賛同する。

「店は何処にしようかね~。この街で美味しいお店と言うと・・・」

とマリンさんが考えていると

「じゃあアタイ、リフルがいい。あのお店の料理美味しいんだよね~。久しぶりに行きたい!」

と言い出した。

リフルかよ!心の中でツッコみを入れると

「ああ、いいですね~。あのお店に行くのは久しぶりなので行きましょうか」

とダンさんも賛同した。

ん?久しぶりって言った?言った事あるのか?と思っていると

「アイカワさんも一緒にどうです?」

と聞かれたが

「どうもなにも、今リフルにお世話になっているので帰り路っすよ」

と苦笑いした。

「なんだ~、じゃあ丁度いいじゃん。行こ行こ!」

とルーシーが言うと

「じゃあ、私とメイちゃんはお留守番の3人を呼んでくるわね」

と言い街へ歩き出す。

「では、アタシらは先にリフルへ行ってるわね」

とマリンさんがケイト達に言うと俺達もリフルに向かう。


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