第二十三話
ケイン達と新たな武器を購入した日から2日経過した。
この間に何をしていたかと言えば(食って、寝て、アイと雑談して)の繰り返しだった。
たまに散歩に出かけたりして、本屋を探してみたりしたが当然そんな店は存在すらしない。
仕方なくリフルに戻り、また部屋でダラダラと過ごす。
まるで前の世界での生活を少し再現したかのような生活だった。
魔力が完全回復したであろう3日目、一応攻撃魔法が使えるか試すために街外れの何もない所へ来て、試しにファイヤーボールを撃ってみるといつも通り撃つ事が出来た。
ついでにアイとの合体魔法の件で話に出た(相性のいい魔法)を試してみる事にした。
組み合わせは<火と風>だ。
まずいつも通り掌を目の前に出して、火の玉を作り出す途中で風を集めて混ぜてみる。
すると普段作り出す火の玉よりも大きく、作り出す速さもアップしていた。
「おお!」
と思わず声がでてしまったが、驚きよりも感動の方が強かった。
これならオークよりも格上の魔物と対峙しても対抗できそうだ。
次に考えたのは<水と土>だったが、これについてはキラースワブの動きを止めた時に使用した魔法があるのでこれでいいとして、問題は<雷魔法をどれを掛け合わせるか>だ。
水魔法を1回ずつ掛けてからでも良いのだろうが、それでは時間が掛かってしまい下手をすれば反撃されてしまうかもしれない。
水以外だと・・・氷かな?
でも、氷を使用した魔法なんて使った事が無い。
氷って<水と風>かな?と思い早速試してみる。
(まずはストーンショットの様な先端の尖った氷を)と頭の中でイメージしてみる。
そして掌を前に出し、水と冷たい風を・・・と魔法同士を掛け合わせてみるが氷になるどころか水が風に混ざらずに弾けてしまった。
「う~む、全然だめだなぁ」
何度か試してみたが上手くいく気配すらない。
流石に水を氷にする程の冷気を一瞬で作り出すのは難しいか。
こればかりは練習が必要だな~と改めて魔法の難しさを実感した。
魔法の確認と練習を終えてリフルに帰る途中、ケイン達と偶然会った。
「アイカワさん。久しぶり!」
とルーシーの元気な声が聞こえた。
「あ、皆さん。こんにちは。武器屋の帰りですか?」
と聞くとケインが
「ああ、そうだ。アイカワさんは?あっちは街の外れだが依頼の帰りかい?」
と質問されたので
「いえ、少し実験を兼ねて魔力が完全に戻ったのか確認をしてたんです」
と言うと
「実験?なんの?」
とルーシーが不思議そうな顔で聞いてきた。
「色々相性のいい魔法を掛け合わせて、試し打ちしてみたんです。
<炎と風>は上手くいったし、<水と土>は初めてキラースワブと戦った時に偶然出来たのを覚えているんですけど」
と言うとまたルーシーが
「え!?どういう事?アイカワさん、もしかして複数の属性の魔法を使えるの?しかも同時に?」
と驚きの顔を見せた。
「はい。風以外は使った事があります。あれ?ルーシーさんには話してなかったんですか?」
てっきりオークの群れの依頼の話をした時に話したと思っていたが、どうやら俺の魔法に関する話はしてなかったようだ。
苦笑いをするケイン、ウィル、ケイトを他所にルーシーは
「見たい!見たい!」
と目を輝かせながら迫って来た。
ここで拒否するのも後々面倒かなと思い了承すると、先程まで練習していた場所まで戻った。
到着すると<火と風>、<水と土>を組み合わせた魔法をそれぞれ見せると全員が唖然とした表情で俺を見た後ルーシーが
「だめだ。アタイ、魔導士としての自信を無くしそう」
とその場でうずくまっていじけだした。
「わかるわ、ルーシー。しかもこの人補助魔法まで使えるらしいわ・・・」
とケイトまでルーシーの隣でうずくまって2人揃っていじけだした。
「ていうか!それってもう大魔導士クラスに手が届くくらい凄い才能ってことじゃん。ズルい!ズルい~!!」
と今度は俺の両肩を掴んで体を前後に振りながら喚きだした。
「ま、まあまあ」
とケインとウィルが女性陣2人をなだめているとケイトが
「実験ってこれだけ?他に何か試したの?」
と聞かれ
「実は雷魔法との掛け合わせをどうするか考えて、氷で相手の動きを封じてそこに雷魔法を撃ち込もうと魔法で氷を作ってみようとしたんですけど上手く出来なくて。
氷になる途中で失敗してしまうし、例え出来たとしても作るまでの間、時間が掛かりすぎてしまって地道に練習するって事で諦めて帰る途中だったんです」
すると何とか気分を持ち直したルーシーが立ち上がって
「でも、こんなに多くの魔法が使えるならもう十分じゃない?雷魔法だって相性で言えば、例えば水魔法を相手に掛けてから強めの雷魔法を撃ち込んで倒すとかすれば・・・」
と言い終わる前に
「あ、それなら初めてオークを1人で倒した時にもう試しました。
確かに効果は大きかったんですが、それだと何か面倒くさくて。
もっとこう、一度に雷と水、或いは同時ではなくても氷で凍らせた後に雷魔法を撃ち込む事が出来たらなぁって思って」
と率直に答えると
「なによ、なんなのよ、それ。そんな軽々とトンデモない事言っちゃってさ。才能があるからって色々と試すとか・・・」
とルーシーが小声で言いながらまたうずくまり、今度は体全体から黒いオーラの様な物まで見え始めた。
な、何故か闇落ちしかけてる。
またケインとウィルがルーシーを慰めてる時、ケイトが
「そんなに氷を作る魔法を覚えたいならルーシーの師匠を紹介しましょうか?」
と言ってきた。
「え?ルーシーさんのお師匠さんをですか?」
と聞くと
「ええ。近隣の(アイゼルムの村)に住んでるの。あそこに見える山の麓の村よ。
ルーシーの師匠は男性魔導士で攻撃魔法専門、私の師匠はルーシーの師匠の奥さんで回復魔法や補助魔法専門の魔導士なの」
とケイトが説明をしてくれていると男性陣になだめられてたルーシーが立ち上がり
「アイカワさん、明日アイゼルムの村へ一緒に行こう!」
と唐突に言い出した。
「え?一緒に!?」
この娘さんはまた突拍子もない事を言い出す。
「アタイ、一度村に戻って師匠に修行をさせてもらう。アイカワさんも一緒に行こうよ。
氷の魔法を教えてもらいにさ」
まあ、願ったり叶ったりって事にしとくか。
「ではお願いします」
という訳で
「じゃあ、明日お昼にこの場所に集合って事で!」
と約束をしてその日は別れることになった。
リフルに戻り食事を済ませ、部屋に戻る。
椅子に座りながら天井を見つめて
「なんか、人に自分の力を見せるっていうのも微妙なものだなぁ」
と思わず呟くとアイが
「あまりいい気分ではありませんでしたか?」
と話しかけてきてくれた。
「うん。他人に自分の事を良く見せたり、自慢したりした事が無いからそう感じたのかもしれないけど、どうであれ気持ちのいいものではなかったな」
たぶんそう思い続ける事が所謂(自分を律する)という事になるし、戦いの中でも冷静な判断か出来る要因にもなるのだろう。
このまま色々なスキル習得していく中で、(自分を律する)事を続けていけるだろうか。
まあ、とにかく出来るだけ今の自分を見失わずにいれば良いか。
そう思いながらベットに横になりこの日は眠りについた。




