第二十二話
武器屋に到着し中に入ると、ケイン達は武器屋の主人に武器の手入れの申し込みをしていた。
その間に俺は最初に購入した短剣と同じものを手に取り、購入するか考えていた。
そこへ手続きを終えたケイン達が俺の所に来ると
「購入する武器はもう決まっているのかい?」
と武器屋の店主も連れて来た。
「ああ、あんたは確か何日か前に来たお客さんだよねぇ」
と一言。どうやら俺の事を覚えてくれていたようだ。
何故覚えていたのか聞いてみると
「そりゃあ、ギルドの事も知らないのに武器や防具を買うなんて変わり者がいたら、商売をしている人間なら顔くらい覚えるさ」
と笑いながら答えた
「実は、昨日の戦闘で武器が完全に壊れてしまって新しい武器を買いに来たんですが、同じものにしようか迷ってまして・・・」
と言うと店主が
「前に買っていったのは短剣だったよね?比較的安物だったが、なんで壊れたんだい?」
と聞かれたので事の経緯を話すと
「それはかなり無茶をしたな、武器が壊れる訳だ」
と驚かれた。
「低級より上の魔物と戦闘するなら、もう少し良い物を購入してもいいんじゃないか?」
とウィルの助言があり店主に
「もう少し上の値段で短剣ってあります?」
と聞くと
「そうなると・・・これなんかどうだい?前回の物よりサイズは大きくなるが、全体的な性能は格段に上がるよ?攻撃魔法を併用するなんて芸当は出来ないがね」
と前回購入した物とは違うタイプの品物を出してきた。
実際に手に取り感触を確かめる。
「価格はケース付きでこれくらいか・・・うん、これにします」
とあまり悩む要素も無かったので早く決まった。
「防具はどうする?新しい物に買い替えるかい?」
と聞かれたが、今のままで十分だったので買い替えなかった。
前の短剣は小さめだったので防具に備え付けが出来たが、今回はサイズが一回り大きくなったのでナイフのケースが取り付けられるベルトを購入しそれに取り付ける事にした。
ケイトの買い物も済んだ様で解散する雰囲気になったので
「では、俺はここら辺で失礼します。ルーシーさんに宜しく」
と言ってケイン達と別れ、リフルに戻る事にした。
リフルに戻って部屋に戻ると、防具とベルトを外す。
ベルトを外すのに少し手間取ったが、何とか終えて椅子に座り新たなスキルを解放するためアイに話しかける。
「ねえ、アイ。新しいスキルを選びたいんだけど、いいかな?
「はい。では2つ選んでください」
と画面に出てきた一覧に目を通す。
さてと、次はどんなスキルを選んだものか・・・
選んでいる途中でケイトの言葉をふと思い出した。
<魔導士は2つ、多くても3つの属性しか扱えないのよ>
ならば
「ねえ、アイ。2つの属性を掛け合わせた合体魔法みたいなものはあるの?」
と聞いてみると
「合体魔法というものはありません。厳密にいえば
(相性のいい魔法を掛け合わせて威力を倍増させる)
という手法はあります。例えば炎魔法と風魔法を組み合わせて威力を倍増させる等です。
初めてキラースワブを倒した時に使用した(粘着性の水魔法)も水魔法と土魔法を掛け合わせた物を貴方は無意識に使用していたんですよ?」
なんだ、スキルとしては無いのか。ん?相性のいい魔法?という事は
「じゃあ、初めてオークを倒した時に使った水魔法で体を濡らして雷魔法を撃ち込むってのも、やろうと思えば同時に出来たって事?」
とアイに聞いてみると
「やろうと思えば可能かもしれませんが、その場合(雷と水の比率)を考えて撃たないと有効打は与えられない可能性があります。
なので雷魔法と水魔法を別々に打つのは間違っては無いと思います」
との意見だった。
そうか、あれはあれで間違っては無いのか。ならいいや。
画面に目を戻し、再度選び始める。
するときになる項目に目が止まる。
「重力を操る魔法?相手を引き寄せたりとか?」
と聞くと
「いいえ、魔物がいる場所に一時的に重力を加えて態勢を崩したり、特定の部位を押し潰したり出来ます」
とのアドバイスだった。
「なるほど、じゃあ1つ目はこれにするよ。さてともう1つは・・・」
空を飛ぶ魔法とかあれば・・・いや、高所恐怖症だから駄目か。
なんとなく眺めていても決まる気配が無かったので過去に見た事がある
「人の心の中が読めるスキルにする!確かこちらでONとOFFは出来たんだよね?」
とアイに確認すると
「はい。出来ます。宜しいんですね?」
と再度確認されたが
「うん、もうこれでいいや。ずっと眺めていても決まりそうにないし」
とこちらも再度了承した。
スキルを解放してもらった後、アイから心を読むスキルについての解説をしてくれた。
「まず、心を読みたい相手を自分の視界に入れた後スキルを発動します。
そうすれば相手の心の声が貴方の頭の中に聞こえるという手順になっています。
一度に複数の声も聞く事は可能ですが、脳にかなりの負荷が掛かってしまうのでお勧めはしません。
なので発動する時は出来るだけ心の声を聴きた人間を視界に入れてください。
尚、レベルが上がれば上がる程脳にかかる負担は軽減されますので覚えておいて下さい。
因みにスキルとして使用するので魔力を必要としませんので、今試してみても大丈夫です」
という事なので夕日が差し込む窓から外を覗き、偶然視界に入った男性の心の中を聞いてみた。
(あ~、残りの仕事めんどくせ~。このままサボりたいなぁ~)
おお、聞こえる。今度は笑顔で歩いている2人組の若い女性を視界に入れてスキルを発動すると
一方は(家に帰りたくないなぁ。帰ったらお父さんお酒飲んで酔っ払ってんだろうな~。
絡まれると面倒くさいから嘘ついて彼氏の所に泊りに行っちゃおうかな~)
もう一方は
(そろそろコイツと遊ぶのつまらなくなってきたなぁ。もうコイツの彼氏奪って絶交しちゃおうかな~)
・・・なんで笑顔でそんな事考えてんだよ。
てか友人の彼氏奪ってから絶交って、どんだけあくどい事考えてんの?友達の方は。
なんか人間の覗いてはいけない一面を見た気がするし、頭痛とまではいかないが頭が重い感じがしたのでこの辺でスキルをOFFにした。
アイが言ったように人数に応じて脳に負担が掛かるようだ。
「人間が対象のスキルだし、そこまで多用するような物でもないかな」
と呟くと自分のお腹の音が鳴った。
もうそろそろ食堂に晩御飯でも食べに行くか。
食堂に行くと壁に張り紙がしてあり
(今日のおすすめオーク料理!オーク肉大量入荷!)と書いてあった。
たぶん俺達が討伐したであろうオーク肉が街の料理屋に出回ったらしい。
他のお客さんも運ばれた来たオーク肉の料理を美味しそうに食べている。
俺もオークのトンカツを注文し、出来上がった料理を
(迷わず成仏してください)
と心の中で思いながら美味しく頂いた。
部屋に戻って暫く窓から星空を眺めた後、ベットに入りアイに
「おやすみ、アイ」
と言ってこの日は眠りについた。




