第二十一話
翌日、朝早く目が覚めたが起き上がれなかった。
正確に言えば
(体力は回復したが精神的な疲れが残っていたせいか起き上がる気力が湧かなかった)
と言った方が正しい。
ギルドの換金所には昼以降来てくれとの事だったのでベットから出ずにこのまま二度寝する事にした。
アイも気を使ってくれたのか声を掛けずにくれていた。
暫くしてまた目が覚めて、アイにどのくらい寝ていたか聞いてみると二度寝してから5時間程経過したとの事で、もう少しで昼になると言われたので起き上がる事にした。
のんびりと準備をしてギルドへ向かう。
換金所に到着すると、既にケイン達も到着済みで解体担当の男性と雑談していた。
「こんにちは。昨日はお疲れさまでした」
と声をかけると
「ああ、こんにちは。昨日はありがとう、助かったよ。体は何ともないか?」
とケインが体の心配をしてくれたが俺は
「はい、マジックゲートは使えますが、攻撃魔法と補助魔法は使えません。
2~3日リフレッシュを兼ねて休養を取れば大丈夫だと思います」
と答えた
「そうね、魔力を使い切った時はゆっくり休むに限るわ。
それにあの後、ルーシーに色々説明したらあの子驚いてたわよ~。
一緒に行きたかった~!って拗ねられて大変だったわ」
と笑いながら話していると換金所の男性が
「おお、揃ってるな。説明するから来てくれ」
と手招きされた。
奥へ通されると今回の金額から説明を始めた。
「まず通常のオークが11体で金貨77枚、そして群れのボスが単体で金貨15枚で合計92枚だ」
と言われた。
4人で割ると23枚になる。やはりボスクラスがいると金額が跳ね上がるなぁ。
待合所のテーブルに戻って貰った報酬の4分の1である金貨23枚を貰うとケインが思い出したように
「ああ、そうだ。最後群れのボスに魔法で攻撃を加える前に、装備していた短剣を頭部に刺しただろう?
実は、回収して翌日渡そうとしたら刃の部分頭の中で砕け散ったみたいで、持ち手の部分しか残って無かったんだ。
きっと最後の雷魔法の衝撃に耐えられなくて、砕けたんだろうな」
と言って、俺が使用していた短剣の持ち手部分をケイトのマジックゲートから取り出して渡してくれた。
持ち手の部分は木で出来ていたが、雷魔法を通したせいか一部が黒く焦げていた。
「そうでしたか。また武器屋に行って新しい短剣買わないとなぁ」
と言うと同時に昨日の朝、アイと話した
<武器に魔法を移して使用する>
件についてケイン達に聞いてみた。
「あ、そうだ。武器に関して聞いてみたかった事があるんですけど、
<使用している武器に攻撃魔法を移して武器の威力を増加させる>
なんて出来るんですかね?」
と話を振ると
「う~ん、特殊な鉱物で武器を作れば可能かもしれないが、そういう方法で戦ったなんて事は聞いたことが無いな。
それに特殊な鉱物で精錬された武器がもしあったとしても、国宝として国に納められるはずだから一介の冒険者が手にできる代物ではないと思うよ」
との意見がケインから出た。
そうだよなぁ。そんな超レア物があったら国に厳重に保管されて使われないよな、普通。
「アイカワさんの場合誰か見つけてパーティーを組めば、そんな物に頼らなくても十分強いと思うわよ?」
とケイトが助言をしてくれた。
「やっぱり、パーティー組んだ方が楽なんですかねぇ。一人の方が自由で気楽だし、集団行動が子供の頃から苦手だったのであまり考えなかったんですが・・・」
と答えるとウィルが
「そこは、メリットとデメリットがあるんじゃないかなぁ。
昨日の戦闘がいい例だと思うけど、仲間がいれば作戦の幅も広がるし、ピンチになってもお互いカバーしあえるけど、判断1つで仲間の命が危険に晒されてしまう。
かといって単独での行動だと戦力や立てられる作戦は限定されるけど、そもそもすべて自分1人で判断出来るからその分生存確率が上がる」
最もな意見だ。
「まあ、その辺はアイカワさんがこれからゆっくり考えればいいさ。
人選さえ間違えなければ、きっといい仲間にこれから幾らでも出会えるはずだ」
と笑顔で肩をポンと叩いてくれた。
「そう・・・ですよね。いや~、変に考え込んでしまうのが悪い癖で」
と頭を手でポリポリと搔きながら
「では、俺はそろそろこれで失礼します。魔法がほぼ使えないんじゃここにいても意味ないし」
と立ち上がりるとケインが
「今日は何か予定はあるのか?」
と聞かれたので
「そうですねぇ、新しい短剣を購入した後は、今お世話になってる宿屋でゆっくり回復を待とうかと思ってます」
と答えた。
どのみち攻撃魔法や補助魔法が使用できる状態でも休養日は入れようと思っていた。
「では、我々も同行してもいいかな?」
とケインが聞いてきた。
「実は、我々もここ最近疲れが溜まっていてそこにきて昨日の戦闘だったので、暫く休みを入れることにしておいたんだ。
ついでに私とウィルの剣を武器屋に手入れに出そうとしていたので、もしよかったら一緒に武器屋に行こうかと思ったんだが大丈夫かな?」
だったらちょうどいい、ケイン達に俺に合いそうな武器を一緒に見て貰おう。
「はい、全然大丈夫です。」
と即決し、ケイン達と武器屋に向かった。




