第十七話
翌日になって、昨日の出来事を少し振り返ってみる。
いくら面倒事に巻き込まれるかもしれないとはいえ、あの依頼書の追加条件はちょっとやりすぎたかなぁ。
もう少し軽い内容にしておけば・・・と後悔にも似た感情が心の中に残る。
「今になって後悔ですか?」
とアイが聞いてきた。
「うん。結果的にあの2人に面倒事が無かったとはいえ、もう少し内容を軽くしても良かったかなぁ、と」
「しかし、私もあの選択は間違いでは無かったと思いますよ。依頼とはいえ素性の分からない2人といきなり組んで自分の命を預けるのですから。
それにあの2人にはそれぞれ素質がありそうなので、ちゃんとした人材と出会う事が出来れば立派な冒険者になれると思います」
とアイも昨日の俺の選択を同意してくれた。
「そうだよな。あれで良かったんだよ、きっと。それにギルドに行けば普通に会えるっしょ」
そうだ。変に深く気に病む事は無い。アイもあの提案には同意してくれた。
そう考えながら身支度を整えてギルドに向かう。
いつもの如く依頼書が張られている掲示板へ。
何枚か張られている中で目に留まった依頼書には
「キリアナ王国より特別依頼」
と書かれている。
内容は
<遠く離れた廃墟に魔物が住み着いてしまったので、街や周辺の村に被害が出る前に廃墟を解体する為魔物を討伐しておきたい>
だそうだ。
<尚、城の兵士も同行し一緒に依頼をこなす為、低いランクでも魔法が使えればOK。稼ぎたい人はチャンス!!>
・・・国が出す依頼にしちゃ随分ポップだな。
まあ、兵士の人達も一緒ならそこまで大変な内容でもなさそうだな。
そう思い、依頼書を受付に持っていき手続きをお願いすると受付の女性が
「では、この依頼は一度お城に集合してから目的地に出発なので、お城に着いたらこの紙を渡してください。
依頼が完了したらギルドへ直接兵士の方達が同行して完了の旨を報告してくれる流れになってます。
倒した魔物を換金したお金は、依頼に参加した全員で均等に山分けという事になっていますが宜しいですか?」
国が依頼なんか出す時もあるんだなぁなんて思いながら
「はい、大丈夫です」
早速お城に向かい、門番をしている兵士達に声をかける。
「あの、ギルドの依頼を受けたアイカワなんですが」
と受付で貰った紙を門番に見せると
「では、あちらでお待ちください」
と言われ、その方向へ目を向けると、如何にも<魔導士!>という格好をした男性が2人と、フード付きのローブを頭まですっぽり被った男性か女性か分からない人物の合計3人が、遠征に向かう兵士達と共に立っていた。
「あ、よろしくお願いします」
とこちらから何気なく挨拶をしてみると全員素っ気ない感じで軽くお辞儀をされた。
お?俺と同じ人付き合いが苦手なタイプかな?なんて思っている内にリーダーらしき人物が
「今日は王国からの依頼を受けていただきありがとうございます。
私はこの遠征隊のリーダーの<ジョージ>と言います。
これから目的地へ向かいますが、目的地へ向かう途中に魔物と遭遇する可能性もある為、気を引き締めて行動してください。
目的地の廃墟に到着したら兵士5人、魔導士2人を1班とする、計2班で行動してもらいます。班編成は廃墟に入る前に分けます。では、出発しましょう!」
その声と共に全員で城を出て目的地の廃墟を目指す。
幸いにも着くまでの間に魔物と遭遇することはなく、すんなりと目的地へ着く事が出来た。
目的地は大昔この地域で有名な豪商の一族が住んでいた3階建てのかなり大きな屋敷で、一族が没落してからは廃墟となりそこから魔物達が住み着くようになってしまったとの事だ。
早速、ジョージが手際よく兵士達を2班に振り分けて、ギルドの依頼を受けた俺達4人をそれぞれの班に分けた。
俺はジョージとは別の班に振り分けられたようだ。
そしてジョージが
「では、まず私達の<A班>が裏口へ回り準備が出来しだい合図を送ります。
もう1つの<B班>が合図を確認し、A班と同じ合図を返したのを確認して表の入り口と裏口から同時に侵入して屋敷内部にいる魔物をそれぞれの班で掃討していって下さい。
屋敷の内部探索の手順は予め兵士達が確認済みですので魔導士の方々は兵士達の後ろについてバックアップをお願いします。
注意事項としては炎魔法は使用しないでください。最終的には屋敷を焼却処分しますが探索途中に建物に引火すると遠征隊が危険にさらされるので、くれぐれも注意の程、宜しくお願いします」
と言うとA班が裏口へと向かった。
すると、1人の兵士が
「B班を指揮する<ハイド>と言います。宜しく」
と俺ともう1人の魔導士に自己紹介してきた。
「アイカワ ユウイチです」
と俺が自己紹介すると聞こえるか聞こえないかくらいの声で
「カ、カリスと言います。よろしく」
と軽めの挨拶をしていると「パン!パン!」と安っぽい花火のような音がした。
「合図が来たか。では、こちらも同じ合図を返してから突入しましょう!」
ハイドが言い、予め兵士達が火薬の入った箱に火種を入れ、火薬に点火し合図を送る。
こちらも合図の火薬音が鳴ったのを確認し、兵士の1人が表の入り口の扉を蹴破り中へと突入する。




