第十話
朝起きて、朝食を頼もうかと迷う前に今後この世界で生きていく上でどのくらいまでランクをあげようかそれとなく考えてみた。
「確か、Cランクが半年に1回以上依頼をクリアだからそこまで上がればって感じかなぁ・・・」
とつい独り言が出るとアイが
「一ついいですか?Cランク以上に到達するとなるとパーティーを見つけて組むことを推奨します」
「パーティーかぁ。やっぱり上に行けば単独より複数で行動した方がいいのかぁ。ケイン達もそうだったよなぁ」
「ええ。Cランクに到達する迄に大魔導士としての素質をある程度使いこなせる程にレベルがアップし、幾つかのスキルを使いこなせる状態になっていれば話は変わってきます。
しかし、いくら戦闘なった時に私がバックアップできるとはいえ、貴方の実力以上の魔物と対峙した時に貴方の肉体が耐えられない程の力を出せたとしても勝てる可能性が無ければ意味がありません」
うーん、かと言って見知らぬ人達といきなりパーティーを組むというのもハードル高いしなぁ・・・と考え出すとキリがないので
「ああ、もういいや。取り敢えず今日依頼書を達成すれば登録証の有効期限の最低ラインはクリア出来るしまずは依頼をクリアだ!」
そう言いながらアイとの会話を切り上げ朝食を取らずに支度を整えてギルドへ向かう。
ギルドへ到着し、掲示板を確認する。
「ん?なんだこりゃ」
1枚の依頼書に目が止まった。
<攻略し終わったダンジョン周辺の低級魔物の掃討>?
受付の女性に
「この依頼書ってどんな内容なんですか?」
「ああ、上級レベルのパーティーが攻略し終わったダンジョンから逃げ出した弱い魔物達を討伐してくれって依頼です。
全員でダンジョンのボスは倒せたものの、体力がギリギリでダンジョンの外へ逃げ出した魔物達を討伐する余裕が無かったらしくて」
そのパーティーの証言では低級の魔物が複数体逃げ出したので、ギルドを通してその魔物達を討伐してほしいと。いわば自分達の後始末を頼みたいって事か。
薬草を採取するとかの依頼より報酬がいいな。それに低級とは言え複数の魔物との戦闘も経験しておきたいし。
「確認できてるのは6体程・・・よし、この依頼受けます」
「わかりました。低級の魔物と言えど複数体いるので気を付けてくださいね」
目的地がダンジョンという事もあり街の道具屋で何か購入しようと行ってみると<松明セット>と書かれたコーナーを発見した。成功報酬を考えても1セットがそこまで高くなかったので複数購入する。
もしも洞窟の中に入る場合、絶対必要になるだろうと思ったからだ。
依頼書に書かれているダンジョンの入り口へ到着したが、見つけたのは魔物と人間の足跡だけ。しかも魔物の足跡は消えかかっていて入り口から外へ向かうものや外から入口へ入っていくものと入り乱れていた。
戦闘ミッションで一緒だったケイトの様に周囲を探知する魔法は覚えていないので、肉体強化で魔力を少しだけ身体に通して耳を澄ましてみたが周囲には魔物がいそうな音はしない。
アイに
「一度逃げ出したダンジョンに再び魔物が戻ってくるって可能性はあるの?」
と聞いてみると
「あり得なくはないです。一度人間に攻略されたとしても誰もいないと分かれば、低級な魔物も元居た住処に戻る事はあります」
念の為ダンジョンの入り口から1m程進み、耳を澄ましてみると
「あー、聞こえる。確かに魔物がいる音が聞こえてくる」
そう言うとアイが
「どうしますか?先に進みますか?」
と聞いてきたので
「ああ、進んでみる。もし無理だと判断したら早めに撤退するよ」
「わかりました。いざとなったら私が戦闘をサポートします」
「ありがとう」
奥への通路は暗く全体が見えづらかったので、いざという時のために道具屋で購入しておいた松明セットをアイテムボックスから出して魔法で小さい火の玉を造り出し火をつける。
道具屋に行っておいて良かった~・・・と思いながら1本道を奥へ進んでみると大きく開いた場所に出た。
かなり広いホールの様な場所を入り口の端から隠れながら覗いてみると、意外と明るく全体が確認出来る程だった。
中には魔物が6匹ほど。しかも低級しかいなかった。
「これならイケるか」
掌にサンダーボルトを2つ作り、肉体強化を発動させて一気に部屋の中へ入る。
まず、一番近くにいたゴブリン2体を倒し、すかさず両手を前に出して先端が尖った無数の岩を造り出し
「ストーンショット!!」
と叫び、目の前にいたキラースワブを3体仕留めた。
残り1体の大きな蜘蛛の様な魔物はサンダーボルトを命中させてトドメを刺した。
肉体強化を解除しようとした時、アイが
「まだ気を抜かないで下さい。強力な魔物が1体残っています」
唐突なアイの忠告に周囲を確認すると、自分が入ってきた入り口から2mはあろうかという巨体の魔物が現れた。
「なんだ、ありゃ?!」
「あれはオークです。どうやら1体のみですが、先程倒した魔物達とは比べ物にならない強さです。撤退しますか?」
「いや、1体だけならなんとかやれるかもしれない。今の自分がどれだけ出来るか試してみる」
あれ程の巨体なら反応はそれほど速くないはず、そう考えてまずはオークの周り足元や頭上へ速さでかく乱してみる。
すると思った通りオークの攻撃は見事に空振りして当たる気配がない。
ならばとあちらの2撃目が空振りした後、顔の前に移動しキラースワブを倒した無数の石を顔面に喰らわせる。
オークが堪らず顔を抑えているところに水の球体を当てて体をずぶ濡れにした後、自分の体程のサンダーボルトを命中させた。
するとオークは悲鳴にも似た声を上げその場で倒れた。
「やったか?!」
こんなセリフが思わず出たがその時は大抵倒してないのがお約束だよなぁ
オークの体から雷魔法を受けた時の煙は出ているが・・・するとアイが
「念のため、先程の雷魔法をもう一度打ち込んで確かめてみてはどうでしょう?」
(でも、その攻撃のショックで蘇生されたりしない?)
とも思ったが、ここはひとつ試してみるか
(どうせそれしか確認する方法が無いし)
オークから少し離れてもう一度先程と同じ大きさのサンダーボルトを撃ちこむ。
・・・やはり反応は全くない。
どうやら本当に息絶えているようだ。
「良かったぁ。取り敢えずゴブリンとキラースワブはこちらで解体出来るとして、あのデカい蜘蛛とオークはどうしたもんかな」
と考えていると
「いっその事、全部ギルドの換金所に持ち込んで解体してもらいお金に換えてみては?」
とアイから提案された。
「オークは色々使える場所があり、綺麗に解体してもらった方が今までよりも高値で換金して貰える筈です」
「ああ、そういえばあっちでも解体してもらえるんだった。じゃあ、そうしよう」
倒した魔物の亡骸をマジックゲートに全て収納して、ダンジョンを後にした。




