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第4話 魔王再び 発現する真の力



「久しぶりだな~勇者~!」


 フードを取った男は開口一番そう言うものの、ディールはその褐色の肌をしたダークエルフの男に会った記憶など全く無かった。


「誰だお前? 全然記憶に無いんだがな」

「フザけるなよぉ~勇者~! この俺様を散々な目に遭わせておいて、全く記憶にないた~言わせねぇ!」

「で? 誰なんだお前」


 全く思い出さないディールに対し、その男は額に青筋を立てながら言う。


「魔王アスモデウス様の四天王だった、オズボーンだ!」

「あー、確かにそんな奴も居たかもな。てか、あんまり記憶には無いけど、お前、俺と戦ってよく生きていられたよな?」

「ああ、勿論もう少しで死ぬところだったさ~! だが、邪神の力によって復活された魔王様によって、俺も新たな力を与えられて、お前に復讐をする機会を窺っていたんだ~」

「ほう? 新たな力ねー。てか、魔王の奴も復活したのか?」

「ああ、魔王アスモデウス様は復活なされた! ところでお前、勇者の座を追われたらしいじゃないか~?」

「確かにそうだが、それがどうかしたか?」

「ざまあないなぁ~。聖剣まで取り上げられ、もうお前には以前程の力なんて無いんじゃないのか~?」


 ダークエルフの男が、聖剣の事について知っているのを不思議に思い質問するディール。


「ずっと後をつけていたのか?」

「ああ、王宮の中からずっとだ~」


 オズボーンの答えを聞いたディールは、その殆んど記憶に無い元四天王の事を少し見直す。


「この俺に対して、今の今まで殺気も気配も消してつけて来られたのには、少し驚いたな! だが、俺を殺すつもりなら、途中何度も襲うチャンスは有ったはずだが?」

「もう少し、お前の惨めな姿を見ていたかったんでな~。だが、この領内ではお前、わりと人気者みたいじゃないか~? だから、これ以上お前が惨めを晒す事もなさそうだったし、そろそろ飽きてきてたから、ここをお前の墓場にする事に決めたんだ~」

「そうか……それで、復讐を果たしたら、その後はどうするつもりなんだ?」

「さあな~。暇潰しに、この領地の人間どもを皆殺しにでもするかなぁ~」

「お前一人でか? いくらなんでも、それは無理だろ?」


 あまり力の無い侯爵家とは言え、父のスコットは一応二百を超える私兵を持っており、兵士達は全員が高価な魔道装具を支給されていて、それなりに精強な軍団であった。

 また二人の兄も、ああ見えて実はかなりの武人であり、ディールはオズボーンの言葉に対し流石にそれはフカシ過ぎだろうと思ったのだ。

 しかし、そんな感じで冷やかな視線を向けるディールに向かってオズボーンは平然と言う。


「新たな力を得たと言ったろ~? すぐにお前も、その恐怖を味わう事になるさ~!」


 オズボーンがそう言った瞬間、その体はみるみるうちに変化していく。2メートル弱の身長だった彼の体は、倍の大きさの褐色の鬼へと変貌した。

 いきなり魔法を放つつもりなのか、呪文の詠唱を始める四天王のオズボーン。


~ネミセス ウカブジ……


「お前、馬鹿なのか? 前衛も無い状態で、呪文なんか唱る余裕なんて普通無いだろ? 悪いけど面倒だから、あっさり終わりにさせてもらうぞ!」


 ディールはそう言った直後、容赦なく右手に持っていたケラウノスの弾丸を全て撃ち込む。

 空中に展開され続ける、半透明の壁をいとも簡単に撃ち抜きながら、鬼の体を蹂躙していく極超音速の弾丸。

 いくつもの閃光が貫通する度に、鬼の肉体は至る所が弾け飛んでいく。

 しかし、最後に頭を吹き飛ばされたはずのオズボーンは、何故かディールに対して話をしてきたのだ。


「詠唱中に攻撃するた~卑怯な奴だなぁ~」


 首の部分が新たな顔に変化していくオズボーンは、更に詠唱を続ける。


 ナウォット オイイサ マトノシ……


 ケラウノスのリロードを即座に済ませたディールは再び全弾撃ち込むも、オズボーンの体は弾け飛んだそばからすぐに再生してしまうようであった。


「俺もかなり上級の防御障壁を展開しているはずなんだけどなぁ~。それがまるで紙同然とは、こえ~こえ~」


 首の部分にもう一つ口を出現させ、そんな余裕の言葉を挟みながらも、残りの詠唱を済ませるオズボーン。


 ……ムツティロイ イナラキット オヌコックナ オウォノモナック オユオイエト ヌコギジセシ アヒソウィマヨ ヌカラン~


~奈落の闇を支配せし地獄の帝王よ、かの者を暗黒の力により包み、その魂を永久に呪縛せしめん~


「どうした~? 途中で攻撃を止めるなんて~? もう俺を倒せないと悟って諦めたのか~?」


 そう言うオズボーンに対し、不敵な笑みを浮かべながらディールは平然と答える。


「別に諦めたわけじゃないさ! 受けてやるよ、その魔法!」

「じゃあ、大人しく死ね! 暗黒の渦に飲まれて、その身を塵も残さずに消滅させるが良いわ~!」


 オズポーンがそう言い放つと、ディールの上空には直径が10メートルは有る大きな漆黒の球体が渦を巻いており、彼の周りには強力な圧力が発生していた。


暗黒圧滅死星(タナトスアステーラス)!」


 巨大な球体のわりには、かなりのスピードで落下してくるその攻撃に対し、左手に持つ愛銃を向けその名を叫ぶディール。


「アイギス!」


 続けて彼は、謎の言葉を叫ぶ。


「テメノス!」


 ディールがそう叫びながらトリガーを引くと、彼の上空には青い半透明の防御膜が展開される。

 それは漆黒の球体と激突し、僅か数秒の後にその威力を完全に霧散させてしまった。


 信じがたい光景を目にして、愕然とするオズボーン。


「ばばっ、馬鹿な! 今のは天災級呪文だぞ!?」

「聖剣が無くても俺は強かったろ?」

「し、しっ、しかーし、お前の攻撃も俺には無効みたいじゃないか!」

「確かに普通にやっていたら、そうみたいだな……」


 ディールはそう言うと、左手の甲に有る痣に一瞬だけ目をやってから呟く。


「仕方がない、やるしかないか……」


 そう言った直後、ディールの体に変化が起きる。

 彼の髪は銀色に輝き、その全身からは強烈な青白い光を放っていた。

 ディールの放つ神的な力の波動により、恐怖で身動きすら取れなくなってしまうオズボーン。

 そんな彼に対し、ディールは容赦なく引き金を引く。


「じゃあな! 四天王!」


 一筋の閃光がオズボーンの体を貫き、その胴体に大きな風穴を開ける。


「無駄だ! さっきと同じ事よ~! こんな穴……こんな穴なんて……はれ? 何で再生しないんだ?」

「無にしてやった。その部分の存在自体を消してやったんだ。じゃ、今度こそサヨナラだな、オズボーン!」


 閃光が走る度にオズボーンの肉体は、どんどん消滅していく。

 弾丸を全て撃ち込んだ場所には、そこに今まで何かが存在していたとは思えない程の静寂が漂っていた。

 目の前に居た存在が完全に消滅した事を確認したディールは、左手の痣に視線を移して呟く。


「これくらいの力なら、殆んど変化は無いみたいだな」


 続けて彼は独り言ちる。


「それにしても魔王の奴、復活したのか……ま、ほっといても、後は異世界の連中が何とかしてくれるだろう」

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