表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/261

第19話 古城防衛戦



 ガルドと奴隷達が領地にやって来た翌日には、其々の役割分担が決められた。

 13歳以上の男子は出来る範囲ではあるが、城の改修工事に当たる者、農地を開拓し麦の種をまく者の二組に分けられる。

 彼らの監督はガルドが担当し、午前中だけ其々に割り当てられた仕事を行い、午後は軍事教練をする事となった。

 それ以外の者達も適正に合わせた仕事があてがわれ、ディールの領地経営は本格的に幕を開けたのである。


 新たなるスタートが切られ、数日が経ったある日のこと──。


 物見櫓(モノミヤグラ)で周囲の警戒を担当していた少年が、異常を知らせる警鐘を打ち鳴らす。

 同じく警戒に当たっていた少年の一人が、息を切らせながらディールの元にやってきて、その内容について報告する。


「ディール様! 何百もの人影が、こちらに向かって来ているのを確認しました! 大型の魔物とかではないみたいですが、たぶん敵襲だと思います!」


 報告を受けたディールは、ガルドと共に物見櫓に向かいその状況を確認する。

 既にその影は、はっきりと視認できる距離まで近づいてきており、明らかに武装した集団である事が確認できた。


「どうやら、ホブゴブリンの集団のようですね? この規模の集団による襲撃が有るなど、ディール様によって魔王が倒される以前にも、それほど頻繁には無かった事ですが……」


 ガルドの発言に対し、ディールは最近起きたあの一件を思い出し気まずそうに言う。


「あー、魔王だけどな……どうやら復活したらしいぞ」

「なんと! それは誠の話ですか!? まさか、最近、魔物共が異常に増えたと言われているのは、それが原因なのでしょうか?」

「さあな! それについてはよくわからないが。魔王が復活したって話は、たぶん間違いないと思うぞ。ここに来る途中で、魔王の四天王だったって言う男に襲われたんだけど。その男がそう言ってたんだ。しかも、そいつの話じゃ、魔王の奴は前よりもパワーアップしてるって事みたいだったぞ」

「以前よりもパワーアップした事によって、魔物を操る能力も格段に上がったのかも知れませんね。しかし、とりあえずこの急場を、どうにかしのがなけらばなりませんが。この数は流石にかなり不味いですね……幸いな事に、城壁だけは無事みたいですから、壊れた城門を何かで塞いで、籠城(ロウジョウ)するのが最上策かと」

「いや、城門にバリケードするのは良しとして。籠城はしないぞ。却って対応が間に合わなくなるからな。俺とあんたの二人で打って出て、奴らを殲滅する事にする!」


 ディールの決定に、驚きを隠せないガルドだったが。余程勝算が有るからこその発言だと思い、彼は腹を決めて言う。


「この命、あなたに捧げると決めたのです! このうえは一人でも多くの敵を斬り殺し、華々しく散りましょう!」

「おいおい! 討ち死に前提みたいな事言うなよ! 俺が一人で殆んどの敵を受け持つから、あんたは俺が討ち漏らした奴らを片付けてくれれば良いぜ! 兎に角あんたは、俺の後方で城内になだれ込もうとする敵を始末してくれれば良いさ!」

「承知した! そこまでおっしゃるのなら、よほど勝つ自信がお有りなのでしょう! 後方は私が受け持ちますので、ディール様は安心して存分に戦ってください!」

「よし! じゃ、出陣するとしようか!」


 ディールは、ガルドにそう声をかけると、一緒に居た警戒担当の少年達に対し、自分達が城門を出たら皆で協力してバリケードを築くよう伝え物見櫓を下りていく。

 二人が朽ち果てた城門を潜ると、既に五百を超える武装したホブゴブリンの集団は、すぐ目の前の所まで迫っていた。

 百人の少年少女達によって、門を塞ぐ為に次々と城内に有ったガラクタが運び出され、バリケードはどんどん積み上げられていく。


「うへへぇっ! 廃城だと聞いていたけど。人が住んでいるホブゴブ! 久しぶりに人間を殺し放題ホブゴブ!」

「こちらの方が、圧倒的に数が多いだろうから。全員生け捕りにして、後でゆっくり楽しむホブゴブ! 皆で一斉にかかったら、すぐに楽しみが終わってしまうホブゴブ!」

「まさか、こんな何も無さそうな所で、殺しが楽しめるなんてラッキーだったホブゴブ!」


 身長2メートルを超す大型のゴブリン達は、軍団長の「蹂躙ホブゴブ!」の合図によって、一斉に進軍を開始する。

 しかし、ディールの放った七本の青紫をした閃光により、その射線上に居た兵士達の体は跡形もなく弾け飛ぶ。

 一瞬の出来事に驚いた魔物共の進軍は一旦停止した。


「今の雷は一体何だホブゴブ?」

「外に出ている奴らは、たったの二人ホブゴブ! あんな魔法は、すぐに放てないはずだホブゴブ! 一斉にかかるホブゴブ!」


 再び動き出すホブゴブリンの兵士達。それに対してディールは、続けざまにリロードを繰り返しながら間断なく閃光を放ちまくる。

 あまりにも一方的な蹂躙劇に驚愕して、その場に立ち尽くすガルド。

 堪らず迂回して、城門に取り付こうと別れた部隊を確認したディールは、左手に持つもう一つの愛銃に命じる。


「テメノス!」


 ディールの発した言葉の後、アイギスから放たれた青白い光の壁は別動隊の目の前を遮るように展開される。

 突然、目の前に現れた障害物に止まる事が出来なかった兵士達は、壁に突っ込むなり全員が消し炭になってしまった。

 光の壁が消失した一瞬の隙を突き、後から続いていた一部の兵士達がディールの後方へとすり抜けて行く。

 ハッと我に返ったガルドは、すぐに霊気を練って力を脚力に集約し、すり抜けて来た十名のホブゴブリン達に一瞬で迫りその首を次々と跳ねていった。

 五名の首を跳ねたところで、剣は刃こぼれを起こし六人目の首の半分の所で止まってしまう。

 ガルドは、首を半分まで斬られた兵士の剣を奪うと、残りの兵士達の首を一瞬で宙に舞わせた。

 最初は恐怖に怯えていた子供達だったが。憎き亜人型の魔物達が一方的に蹂躙されている様子を城壁の上から見て、次第に興奮に包まれ大歓声を上げ始める。

 いまだにディールに対して馴染んでこようとしなかったマギですら、いつの間にか憧れていた勇者の姿に興奮し声援を上げていた程である。

 気付けば元の形状を保たない死体、というよりもただの肉片の山がそこに築かれていた。

 体の一部だけが吹き飛ばされ、地に伏していた者数名を除き、ホブゴブリンの軍団は壊滅したのだった。

今回は久々の戦闘回でしたが、一章終わりに予告した魔法は二章終了回に登場いたします。

Sランク冒険者フレイアとしてのディールは、大魔道士という位置付けとなります。

主人公が、いろんな顔を持っているのも面白いかな~と思い、そういった設定にしました。

もう少し先にはなりますが、どうぞご期待ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ