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第13話 奴隷市場と剣闘士の町



「だっ、誰かアイツを止めてくれ!」


 恰幅の良い、顎にちょび髭を生やした中年の男が、コロシアムのVIP席からそう叫んでいた。

 その日、突如として現れた、フルフェイスの兜を被った外部参加者の戦士が、圧倒的な強さにより連戦連勝を重ねていた。

 自前の剣闘士達に大金を賭けていた男は、彼のせいで既にかなりの損益を出してしまっていたのだ。

 戦士のあまりの強さに会場中の観客達は魅入られ、すっかり彼はその日の戦いだけで一気に注目の的となっていた。


 試合を終え、人けの無い所で鉄仮面を外すディール。

 そんな彼の元に猫耳カチューシャを付けたアルが、大きな袋を台車で転がしながら合流する。


「どうだ? アル。今いくらくらいになってる?」

「凄いですよディール様! 今日、引出した100,000Gがもう300万G以上になっちゃてます!」

「そうか。じゃ、そろそろ引き際のタイミングだな。それだけの金が有れば、相当な人数の奴隷も買えるだろう」


 二人は、領地の民を得る目的で奴隷を大量に購入する為に、娯楽の町と呼ばれるデリコダールと言う町に来ていた。

 ディールお手製のポータル発現装置は一ヶ所しか繋ぐ事が出来ない為、彼はリムダの出口を解除して新たにこの町に出口を設定した。

 この町のギルド支部は、一度に下ろせる金額が100,000Gであり、リムダに比べて段違いである。

 それに加え奴隷市場も有る為、領地と繋げる場所としては非常に都合が良かったのだ。

 購入した奴隷達の搬送は、ポータルを使い行う予定である。


「優勝賞金は狙わないんですか?」

「アルお前、意外と強欲なんだな? これだけ稼いだら

、もう十分だろ」

「別に、もっとお金を稼いだらとか、そういうつもりで言ったんじゃないんです。あまりにもディール様の戦いぶりが格好いいから、優勝するところまで見てみたくなって」


 天然なのか、逆にあざといのか。そんなアルのストレートな言葉に、ディールは少し照れながら言う。


「まぁ、次で最後の試合だしな! オッズも俺が1.1倍みたいだし。もう少し稼いだとしても、お前が運びきれなくなってしまう事もないか」

「次の大会で1,000回優勝となる、虎の獣人戦士ガルドのオッズが1.7ですからね。ディール様の方が人気高いですよ~」

「なるべく人気が上がらないように、かなり手を抜いて戦っていたんだけどな」


 多くの人間達の前でレールガンをぶっぱなすわけにもい。そう思ったディールは、古城の武器庫から適当な片刃の長剣を持ち出していた。

 元勇者だけに、ディールは剣の腕前についても超一流である。

 彼は、その流れるような動きで、つばぜり合いをする必要もなく並みいる豪傑達を瞬倒していった。

 倍率を下げないようにするため、毎試合かなり手を抜いて戦っていたが。必要最小限の動きで決着をつけるその様が、むしろ観客達の目には華麗な剣技として映ったようである。

 彼の美しい動きに、観客達はすっかり魅了されてしまったようだ。

 対する獣人戦士ガルドはというと、強靭な肉体を活かした豪快な戦闘が売りの戦士である。

 今回と合わせて、あと二回で達成される1,000回優勝を果たす事ができれば、剣闘士奴隷から解放される約束のようであった。


 決勝戦を前にして、そのまましれっとコロシアムから抜け出すつもりだっディール。

 しかし、アルの言葉に考え直した彼は、彼女のリクエストに応えて決勝戦に臨む事にした。


 再び仮面を装着したディールは、闘技場へと向かう。

 アルの方は、今までに稼いだお金を全て券の購入に当てに行った。

 彼女の着けている猫耳カチューシャには、認識阻害機能が付与されており、これもまたディールお手製の魔道具であった。

 少女一人で券の購入や換金を行い、大金を持ち歩いているのは危険極まりない行為である。

 しかし、このカチューシャのお陰で、アルは安全にディールに求められたお使いをこなす事ができていたのだ。


 闘技場へと向かっていたディールの後ろから、数名の護衛を引き連れた男が声をかける。


「戦士サガよ! 少し待たれい!」

「俺に何か用か?」

「私は、この町で少しは名の知れた商会の頭目で、アントンと言う者だ! 君の目的は一体何なんだね? やはり優勝賞金の10万Gか?」

「まあな。話はそれだけか?」


 サガと偽名を名乗っていたディールの素っ気ない答えに、したり顔で後ろに控える男に目で合図するアントン。

 後ろに控えていた護衛の男は、手押し車に乗っていた袋の口を開いてみせる。


「20万G有る。次の決勝戦は、わざと負けてくれんか?」

「俺に、八百長しろって事か?」

「君にはスター性が有る! 私と契約しないか?」

「契約?」

「そうだ! 次の決勝戦は、わざと負けてもらって、ガルドの方がやっぱり強いと世間の者達に思わせる。奴の記念すべき1,000回目の優勝が懸かった大会が一週間後に有るのだが。君にはその試合で奴の事を殺してもらいたいのだよ。その後は私と契約して、この町の新たなスターになって欲しい! どうだね? 悪い話じゃないと思うが」


 すぐに意図を理解したディールは、瞬間的にあるプランを思いつき、アントンに対して了承する旨を伝える。


「良いだろう、その申し出を受けよう」

「交渉成立だ! この金は、約束が果たされた際にVIPルームまで取りに来てくれるか?」

「わかった」


 仮面の剣闘士ディールは、そう端的に答えると決勝戦の場へと向かう。


 謎の剣闘士サガの入場に、観客席からは大歓声が巻き起こった。

 既に入場を終え、中央で待ち構えるガルドの前まで進み出たディールは彼に対して言葉をかける。


「一週間後に有る大会に優勝すれば、1,000大会優勝達成らしいじゃないか?」


 ディールが話しかけたにも拘わらず、全く答えようとしない虎の獣人戦士。

 彼は、おもむろに剣を抜き構えるが。その表情からは、全く余裕がない事が窺えた。

 既に戦闘体勢に入るガルドに対して、抜刀する事さえしようとしないディールは、もう一度彼に話しかける。


「お前のご主人様は、さっき俺に対して。この試合、八百長するように言ってきたぜ! ただ、一週間後の大会でお前を殺せだとさ!」


 そう聞いて、ようやく口を開くガルド。


「ば、馬鹿な! それでは約束が違うではないか!」

「まぁ、わりと良くある部類の話だとは思うけどな」

「何故その話を私にするのだ? 今日、私がこの試合に勝ったとして、その後で逃走してしまうかも知れないではないか?」

「一応、受けるとは言ってあるが。俺自身がそんな話に全く興味が無いからな。それより俺が興味を持っているのは、ガルド! あんたの事だ!」

「私に興味が有ると? どう言う事だ?」

「俺と一緒に来ないか? あんたに新しい活躍の場を与えてやる」


 仮面剣闘士の突拍子もない提案に、困惑するガルド。

 しかし、彼はすぐに咆哮を上げると、ものすごい速さでディールの懐に向かって飛び込んでいくのだった。

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