第0話
──我がまま国王の気まぐれにも困ったもんだな。
王宮の近衛騎士団が、普段の訓練に使っている練兵場へと向かう途中で、青年は国王が突然言い出した事に対し呆れ返っていた。
──いくら常人離れした能力を持っているからと言っても、相手はろくに戦闘経験も無さそうなガキだぞ。
そう心の中で呟いていた彼は、身長180センチ程の黒髪に黒い瞳をした、精悍なマスクを持つ二十代前半と思われる青年であった。
王と共に少し前を歩く十代半ばと思われる相手の少年は、ブラウンの髪に黒い瞳をした眉目秀麗な男児である。
少年の格好はというと、この国の市民がするような正装に近い服装であり、彼はそれを着崩して着用していた。
──まぁ、力の差は歴然だかな。適当に、プライドを傷つけない程度に相手してやるか……
青年が、どう決着をつけるのかをあれこれ考えているうちに、御前試合を観戦する者達と対象の二人は近衛騎士団の練兵場へと到着する。
訓練用の木剣を渡され、練兵場の中央にて対峙する二人。
観客達は、その周りを取り囲むような配置であった。
試合開始の声がかかり、木剣を中段に構える青年。
対する少年はというと、剣を構える事もなく、切っ先を地面についた状態で左の手のひらを前方に押し出していた。
そんな相手の少年から、黒髪の青年は強烈な気を感じ取る。
彼は咄嗟に考えを巡らすも、時既に遅し。少年の前方には金色に輝く、直径50センチ程の光弾が作り出されていた。
「こいつ、イカれてんのか!? こんな状況で、そんな技使うなよ!」
思わずそう叫んでしまう青年であったが。光の渦に呑み込まれた彼の意識は、そのまま深い闇へと沈んでゆくのだった──
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