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アニメや漫画の主人公は一度は挫折を経験するもの

 雨に濡れて風邪を引いた私はしばらく学園を休んだ。

 そして回復し、久しぶりに学園に来たのだけれど……。

「おい、ハナの様子おかしくないか?」

「まだ熱があるんじゃねーの?」

「だったら僕が看病してあげようじゃないか。いつかハナちゃんが僕に看病してくれた時のように」

「いつも元気なハナくんが大人しいと心配になるな……」

 上から西園寺、金剛、本条、獅子堂がひそひそと会話している。

 私は自分の席で、魂が抜けたかのように口を開けっ放しにしてボーっと一点を見つめていた。

 エリカの泣き顔と『ハナは私の大事な親友だったのに……』その声が頭から離れない。

 すると、開けっ放しにしている私の口の中に、何かが入った。

「うぐぅ!」

 びっくりした私が口を閉じると、甘味が口いっぱいに広がる。

「チョコレートだ。お前が元気ないと調子狂うんだよ」

 神崎が私の前に立つ。

「ははは……エリカに何も言えなかったや」

 弱々しく私は笑う。

「ハナ……」

 神崎は何か私に言おうとした。しかしそこで校内放送が入る。

『今から緊急集会を始めます。皆さん体育館へ集合してください』

 その切羽詰まった理事長の声に、私は嫌な予感しかしなかった。


 嫌な予感は的中した。

 学園が、なくなることになった。

 今後は生徒一人一人の転学先や転校先を見つけていくから安心して欲しいとのことだった。

 だからと言って安心できるはずがない。集会が終わってもなお、体育館は生徒の不満や不安な声でざわついていた。それを必死に止めようと教師が叫ぶ。


 私は体育館を出て真っ先に理事長室へと向かった。

「理事長、どういうことですか⁉」

 ノックもせずに理事長室のドアを開けた私は、すぐに口を閉ざした。

 久しぶりに見る理事長は過労からか、やつれているように見えたからだ。 

「ハナさん。必ず何とかすると言っておきながら、このような結果になり申し訳ございません」

 理事長が頭を下げる。

「私も必死に抵抗して調停を申し立ててみたのですが、エリカさんの父親がこれから先の学園入学者の数やの経営状況などのデータを見せつけてきまして……。今後を見通した結果、手放した方が賢明だろうということになり……」

 この学園を必死に守ろうとしてくれた理事長。

「いいえ。私たちのために今まで闘ってくれてありがとうございました」

 私は私はこれ以上何も言えず深々とお辞儀をすると、理事長室を出て行った。


 これで学園はなくなり、行く当てがなくなる私は野垂れ死にエンドか……。

 ぽつぽつと廊下を歩く私。

 乙女ゲームのヒロインになって、この世界でセカンドライフを楽しむ計画がこれでパァだ。

「随分としょぼくれてるな、ハナ」

 私の目の前に立つ神崎。

「何もかもが終わったのよ。私は野垂れ死ぬバッドエンドを迎えることになるわ。今まで協力してくれたのにごめんね」

 私は立ち止ることなく歩くと、神崎とすれ違う。

「あっさり諦めるなんてお前らしくないな」

 私の足が止まった。

「何よそれ……()()()()()? それはハナのことを言ってるの? それとも私⁉」

 つい、大声が出た。

「私はハナじゃないの! ハナじゃないからエリカを傷付けて、この学園までもなくなってしまって……私が、私なんかが転生したせいで!」

 嫌だ。こんなこと言いたくないのに。

 こんなこと、ただの八つ当たりに過ぎないのに。

 そうやって、今度は神崎まで傷付ける気なの? 月並花子(わたし)は――。

「そうだ。お前はハナじゃない」

 神崎が言い切る。

「ガサツで女の子らしくなくてヒロイン向けじゃなくて生前は喪女で地味でモブで」

「何よ、悪口じゃない、それ!」

「だけど、そんなお前に救われたヤツがここにいる」

 そう言うと、神崎の後ろから、西園寺、金剛、本条、獅子堂が現れた。

「俺はハナのお陰でゲームセンターやハンバーガーを知ることが出来た」

「俺はたくさんの友達が出来た」

「僕は母に素直になることが出来た」

「ハナ君の声援のお陰で今の俺がある。次は俺が支えてやりたい。ここにいる全員がそう思っている」

 何よ、これ……。キャラが勢揃いして、まるで私、主人公みたいじゃない――。

 地味で喪女でモブで。そんな私なのに。そんな私だから。

「さてハナ、これからどうする?」

 神崎が私に問い掛ける。だけど私の答えを知っているのか、口元がにやけている。

 私は真っ直ぐに前を見つめると、大きく息を吸う。

 廊下の窓から日差しが入り込み、世界がキラキラと輝いて見える。

「もちろんエリカに会いに行くわ!」 

 私はハッキリと大きな声で答えた。            


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