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報・連・相の重要性

 予行演習のために学校に行くと、ノエルがビアンカを始め女子達に詰め寄るという見たことのない光景に出くわした。

 後ろに集められた女子達が輪になり、ノエルに怒られているようだ。

 教室の入口を開けたまま呆然とその光景を見ていたが、そっと何人かが近づいてきて声をかけた。

「ソルレイ様、おはようございます」

「おはようございます。状況を説明してもいいですか?」

 ハルドはノエルと同じで寮生の為、来るのが早く事情を知っているらしい。

 他にも、情報を知っている男子たちが集まって来た。

「うん、おはよう。どうしたの? 何かあった?」

「それが、使ったらまずいハチミツの小瓶まで使って朝からずっとクッキーを焼いていたみたいで……」

「へ?」

 意味が分からず間抜けな声で聞き返した。

 それでも、全員眉根を寄せたまま説明を続けた。

「6日前と今日とクッキーを焼いて製菓材料をほとんど使ってしまったんです」

「え? 当日足りなくなった時にも焼けるようにって余分に買っていたはずなんだけど……」

「そうなんですよ。あんなにあったのに全部使って、その上、一番良い景品のハチミツの小瓶まで使っていたので、ノエル様が、どういうことか? と調理室まで聞きに行ったんです」

 製菓材料がない、ハチミツもない、となり、今日は俺が調理室の使用許可願いを出していたので、そちらかもしれないと何人かで向かったそうだ。

 俺が来るまでに、皆、相当慌てたようだ。

 最初は、ハチミツの木箱が僅かに空いていることに気づき、ハチミツを盗まれたんじゃないかと教員棟のクライン先生のところに向かおうとして、女子達の鞄に気づいたらしい。

 何人かに話を聞くことで、最初に何があったのかが分かったが、目的がよく分からない。

「クオリティーを高めたかったとか? あと、明日焼くのが嫌になって今日にもう焼いてしまえ、とか? 当日の朝から焼いて欲しいけど、数が多いから、前日の今日に許可をもらったんだけどな」

 頭を掻くと、数人の男子達が頭を振る。

「ソルレイ様、食べられるクッキーは1枚もありません」

「どういうこと?」

「俺も調理室に一緒に行きましたが、酷い匂いで丸焦げでした」

「クッキーではなくコゲッキーです」

「クッキーは、もう景品になりません」

「その上、一番いい景品の小瓶のハチミツまで無断に使ったんです。ノエル様が怒るのも分かりますよ。明日なのに」

 それを聞いてようやく事態を把握でき、あちゃーと頭を押さえる。景品にするハチミツもお菓子の材料もないってことか。

「ありがとう。大体の状況は分かったよ」

 席に座るように言い、おかんむりのノエルに声をかける。

 何人かの女子が泣いているので何とかしないといけない。この状況は双方にとって良くない。

「ノエル様。おはようございます。何かございましたか? 何人か泣いているようですが……」

 俺の来たことに、今気づいたようで、眉根を寄せたまま振り返って一言。

「それだけのことをした」

「そうでしたか。では、話が終わりましたら明日のことについて話しましょうか。時間は今日しかありません。成功のために精一杯動きますのでお声をかけてください」

 微笑んで言うと、女子達を一瞥した後に俺の元に来る。

「材料を使いきってクッキーを焼いたが、全部黒焦げた。ハチミツも大びんだけではなく小瓶を8個も無断で使った。その上、無駄にしたんだ。領内での採集を認めて下さったラインツ様に申し訳がない」

 ただ単に怒っていたわけではなく、お爺様に対しての心苦しい気持ちがあったようだ。ノエルのこういうところは本当に尊敬できる。中々言えることじゃない。

「大丈夫ですよ、ノエル様。お爺様は穏やかな方です。大びんを無駄にした時点で、小瓶は使わずに自腹でやって欲しかったというのが本音ですが、今はリカバリーの方法を考えましょう。一度使った物は不衛生だから、その小瓶は洗っても使えません。買い直しです」

 とりあえず、小瓶は買い直せばいい。使用された8個は明日持って来るからハチミツの景品は大丈夫だと話した。

「クッキーの材料は全くありませんか?」

「調理室に僅かにはあるが……一度一緒に来てくれ。菓子作りは分からない」

「分かりました」

 所在なさ気な男子に声をかける。

「悪いんだけど。誰か、小瓶8個を買いに隣町まで行って来てくれないか?」

「寮生なので馬車はあります。出すのはいいのですが、場所が……」

 ハルドがそう言い、女子達と買いに行ったファビルが一緒に行くと請け負ってくれた。

「ハルド、ファビル。ありがとう。もし、店が閉まっていたら、帰って来てくれていいからね。残りの男子は、製菓材料の如何によって買い出しに行ってもらわないといけない。一緒に確認に調理室だ。女子達は、まずは泣き止むこと。泣いていても何の解決にもならないからここで少し反省しておくようにね。戻って来たら手伝ってもらうよ。まだ時間はある。明日は皆で成功させよう」

 女子達に席に座るように言い、男子達と高等科にある調理室に向かう。

「参った」

 渡り廊下を歩きながら、しみじみとノエルが言うので笑いそうになる。

「それは、男子全員が思ってるよ。俺も参ったなあ。クッキー得意っぽく言ってなかった? って思ったもん」

 明るく言うと、男子達も口を開く。

「せめて6日前に言って欲しかったですね」

「あの時も黒焦げにしたってことだもんな」

「正直にできなかったって言って欲しかったです」

「で、隠す為に今日も朝から練習ですか? ちょっと酷すぎませんか?」

「材料をほとんど使われたのは痛いですよね。出来ないなら少量で試すのが普通ですよね? なんでそんなに大量にやったのでしょうか」

「アレクが的を射ているよ。大量に試すから大量になくなるわけで……」

 クッキーのレシピが分からないなら家で聞けばいいだけなんじゃ……そもそも混ぜて焼くだけだしな。

 何で失敗したんだ? と首を傾げる。

「ソルレイにここで匙を投げられると詰む。悪いが残っている材料で可能か見てくれ」

「分かっています。クッキーが無理でも他の菓子が作れれば一番良いんですけどね」

 卵やバター、牛乳と割高な物が使われる。

 下手したら蕎麦粉クッキーとか独特なものに変えないといけないかもしれない。

 調理室に着いたが、扉を開けた途端嫌な匂いがする。

 ハンカチで口元を抑え、全ての窓を全開にした。

 オーブンの中で黒焦げになっている炭化した何かを取り出し、ゴミ箱に捨てる。

「みんな炭化している物は全部捨てて。こんなに焦げていたら食べたら病気になる」

 頷いて黙々と片づけをしてくれる。

 製菓材料を確認すると、小麦粉とハチミツに漬けられたレモンがあった。

 丸々つけられているのを見て、驚く。

 これは使えそうだ。

 残りの材料を確認していくが、バターやミルク、トッピングのナッツなどもない。

「小麦粉とハチミツに浸かったレモンしかない。ソルレイどうだ?」

「レモンのパウンドケーキにしよう。卵と重曹、値の張るバターの代わりに植物油を足せば作れます。1日経った方が味も馴染んで美味しくなるケーキです。これから焼いて間に合わせます」

 片づけていた男子達がピタッと止まった。

「一度家に帰ってラウルにハチミツの採取を頼んできます。卵も領内でもらってきましょう」

「もらうのは駄目だ」

 ノエルにそれをするとキリが無くなるため採集でない以上は駄目だと言われる。

「山鳥の卵とかもあるけど、夏になると種類も少ないし明日までには無理です。養鶏をしているから買ってきます。街よりは安いですね。割れるのが嫌だったから学校の近くで買いたかったけど、仕方がありません。ここは、節約します」

「割れても免符だ。誰も怒る資格などない」

「ありがとうございます。みんな!小船で帰るから戻るまでに時間が掛かる。その間に調理室の調理台を2台使えるように申請を出し直してくれないか? 前日だから無理かもしれないけど、あのオーブンじゃ嫌な匂いがつくかもしれない。せめてオーブンだけでも違うので焼かないと駄目だ」

 はい、と皆が請け負ってくれた。

「任せておけ。すぐに教務課へ行く」

 ノエルに頼んだよ、と俺はすぐに教室に戻った。

 女子達は泣き止んでいてほっとしたが、ちゃんと話をする時間が今は惜しい。

「一旦領に戻るよ、また来るから!材料はなんとかするから心配しないでいいからね!」


 急いで学校の最寄りの船着場まで走って領内に戻り、突然の帰宅に驚くロクスやラウルを捕まえ、皆の協力が欲しいと話をすると、ラウルはハチミツを手隙の家の者たちと取りに行ってくれるという。

 執事のロクスが養鶏場を当たると言ってくれたので、俺は逆にすることがなくなり、料理長に椿油と重曹を分けてもらい、瓶に入れた。

 牛乳も豆乳も冷蔵庫にあったので、豆乳をもらっていいか確認をした。

 ノエルに貰うのは駄目だと言われたが、少量をわざわざ買うのもな。


 うん、内緒にしておこう。


 卵を貰って来てくれたロクスに、買わないと駄目なのだと言うと10個は買ったという。

 残りはおまけでもらったようだ。

「10個も?」

「はい、ソルレイ様がお菓子に使うと言えば頂けました」

「いつも買いに行っているけど……そうか、またお礼を言いに行くよ」

 いつものおじさん気を回したな。

「お気になさらずとも良いのですよ。領民はソルレイ様とラウルツ様を歓迎しているのです」

 包み込むような笑みに少々照れた。

「うん、ありがとう」

 その後。ラウルも1時間で戻って来てくれたので抱きしめた。

「ごめんな。急に頼んで。みんなもありがとう。材料が足りなくなったんだ。助かったよ」

「ハチミツなくなっちゃったんだね」

「うん。使ったら駄目なやつまで使って、教室に入ったらノエルが怒ってて、女の子たちは泣いてるし……大変だったんだ」

 ぎゅっと抱きしめて癒される。

「お兄ちゃん、ラウルやおじいちゃんと夏休みを過ごせるように頑張って!」

「うん!ここから挽回するよ!これできっと大丈夫だ!行って来るね!」

「行ってらっしゃーい!」

 ロクスに我が家で一等早いスニプルの車で送ってもらい、お昼前には着いた。

 教室に入ると誰もいないので予行演習中かもしれないな。

 教員用ボードに、調理台はそのままで、新しいオーブンの使用場所が書かれていた。

 どうやらノエルがなんとかしてくれたようだ。

 前に行き、“ありがとうございます、調理室で作業するので手が空いたら味見に来て下さい”と書きこんでおく。

 そのまま材料を持ち、調理室へ急ぐ。まずは、ハチミツに漬けられたレモンの皮を削いで刻む。

 レモン果汁はスプーン2杯。

 ハチミツにもレモン果汁を少しだけ入れた。

 小麦粉と重曹の分量を量り、篩にかける。

 牛乳の代わりに豆乳を、ハチミツと卵を計量カップの中で混ぜてから椿油を少しずつ混ぜ乳化させていく。

 粉に入れ木べらでさっくり混ぜ、レモンを入れて完成だ。

 パウンドケーキ型に流し10分170度で余熱をして160度で20分。

 まず、魔道具であるオーブンの癖を見るための試食用なので1つの型だけ焼いた。

 作られた時期でだいぶ違うんだよな。

 家はお爺様が俺の為に最新式の魔道具のオーブンを買ってくれたのだ。

 凄く嬉しくてラウルのように抱きついた。

 ここのは旧式だ。

 安全装置もなく、庫内の温度が上昇しても焼き続けてくれるので、パンやピザにはもってこいだ。

 その分、高温になるから夏は暑いけど……あれ? 女子がクッキーを失敗したのって、もしかして、ここのオーブンが使えなかったのか?

 黒こげになるってことは温度ミスかな?

 でも、このオーブンはそれほど難しいわけじゃない。設定自体は家と同じだしな。

 どういうことか分からずに、焼き上がったパウンドケーキに竹串を刺し、できていることを確認してから、表面にアイシング代わりのハチミツ塗った。

「ふふ。美味しそうだ」

 13時になったのでお昼を食べに戻ろうかと思っていると、ノエルが来た。

「遅くなって悪かった」

「今、焼き上がったところだよ。まだ熱いかな。食べてみてくれないか?景品になるかどうか知りたいんだ」

「分かった」

 ケーキはほかほかだ。切ろうと思ったがとても柔らかい。

「さすがに熱そうだから少し待って。紅茶を淹れるよ」

「ああ、湯気がすごいな」

 調理室にある茶器を使って、持っている紅茶を取り出す。

 貴族はエチケットで4人分の紅茶を淹れるための懐紙に包まれた紅茶を持っているのだ。

 いついかなる時も紅茶を愛す、というのが貴族流らしい。

 学内の食堂やカフェですら、マイ紅茶入れ専用置場もあるくらいだから紅茶好きは多いようだ。

「どうぞ。召し上がれ」

「いただこう」

 コトンと紅茶を置き、ケーキとフォークを置くと、パクンと食べてくれる。

 俺も一緒に食べる。

「旨い」

「うん、美味しい」

 バターのコクがなくても夏ならこれで十分だな。このケーキで問題なければ焼きたい、と伝えるとすぐに『頼む』と、言われた。

 男子が小麦粉はもう少しないと数が足りないと言ったのを聞いて買いに行ってくれたらしい。

 教室に置きっぱなしになっていたラウルが取ってくれたハチミツも小瓶に詰め替えてくれていると聞いた。

 女子達はもの凄く落ち込んでいるが、予行演習はしっかりやったとのことだ。

「一緒に焼こうって誘おうかな」

「やめておけ」

「ショックを受けてるんでしょ?」

「自業自得だ」

「まだ怒ってるのか」

 もう許してあげてよ、相手は女の子だよと頭をなでなでと撫でると、固まられる。

「ああ、ごめん」

 すごく柔らかい髪で触り心地が良かった。

 そういえば、エルクもそうだったな。

 侯爵家っていいシャンプーでも使っているのかなと余所事を考える。シャンプーとリンスのブランド名はハニーアンドハニーにしようかとラウルと話している最中だ。公爵家にも売れるくらいの出来にしたい。販路は他国にまで伸ばせるように商業ギルドと話をしている。

「はぁ、ラウルツと同じ扱いをするな」

 少し拗ねたように言うのに思考を戻す。

「アハハ。だって、お菓子を食べたいとか同じことを言うからだよ」

 味見も作った俺より先に食べたがるのだと言うと、新作は作ったか? と聞かれ、そんなに早くできないよと笑う。

「これも食べたことがない。日持ちするケーキは珍しい」

「3日くらいは味が同じだね。秋に出回る栗を沢山いれるのが好きなんだよ、後は無花果と胡桃だね。今は夏だし暑いから涼しげなお菓子を作りたい。できたら言うよ」

「楽しみにしている」

 機嫌が直ったようなので、お腹が減ったが皆はどうしているか聞くと、昼休憩にして食べに行ったと言うので、戻ってきた時にケーキを焼き終ってラッピングを頼めるようにしようと作り始めることにした。

「手伝えるか?」

「もちろん」

 二人でケーキを作っていると、他学年の女子達も調理台を使うためにやって来て、まさかの男子? と驚かれるが、気にせず作り、焼き上げた。

 甘い香りが漂う。

 オーブンは熱いので部屋の温度も上がるが、魔道具で冷やされるので部屋は一定の温度だ。

 オーブン2つを稼働させれば3つずつ入れられる。

 6つのパウンドケーキ型で10ピース取れれば60個だ。

 ただ、クッキー用の袋だったため1つだと少なく感じる。

「卵白を泡立ててハチミツを混ぜて焼こうか。袋に入れて絞る。焼き菓子だよ」

「任せる」

「うん。あ。ノエルに作るお菓子も思いついた」

 そう言うと反応するので、待ってと頼んだ。

「夏休みは家に帰るんだよね?」

「ああ。これがうまくいけば翌日には出国したい」

「すぐに帰る?」

「そうなる」

 それで急かされていたのか。

「今から並行して作ろうかな。持って帰って冷やして食べてよ。ここでそこまではできないんだ」

 設備はあっても時間が足りない。

「分かった」

「じゃあ、女子が使ったハチミツの小瓶の回収を宜しく。それが器になるから」

「持ってこよう」

 席を立ち出て行くノエルを見ながら、卵白を泡立ててハチミツを混ぜたところで、パウンドケーキをオーブンから取り出す。

 天板を入れ、シート敷いて絞りがねから可愛い形に絞る。

 余っていた僅かに残るナッツを砕いてお化粧をしたら焼き上げだ。

 食感の軽い甘い優しいお菓子になる。

 ノエルが戻ってからプリン液を作り、湯せんにかけオーブンで蒸し焼きにした。

 冷ましておく。

「楽しみだ」

「凄く冷やして食べて。お風呂上りとか美味しいよ」

「分かった」

 パウンドケーキ1切れにメレンゲのお菓子が2つ。

「少ないかな?」

「十分だ」

「これが精一杯か。時間的にも」

 14時半になっている。

「後片付けは女子達にやらせる」

「さっきは男子がやったから?」

「ああ。食べに行くぞ」

「見てる人が多いから、待っててくれる? さすがにとったりはないだろうけど、これ以上のトラブルはちょっと対処できない」

 周囲の女子達の凝視に近い視線を一瞥して頷いてくれた。

「分かった。全員連れて来てくれ」

「うん」

 教室に戻り、お昼を食べに行きたいから代わって欲しいと全員に頼んだ。

 調理室に全員で行き、ノエルが指示を出す。女子は後片付けを、男子はラッピングをと言われ、それぞれが悲鳴を上げた。

「こんな感じでお願い」

 可愛いラッピングをした見本を置く。

「ケーキが一切れに焼き菓子が2つですか。豪華ですね」

「最初に言った材料だけだよ。これは卵白とハチミツだけだ」

「凄いですわ」

「ソルレイ様、そちらは?」

 目敏いファビルにプリンを指差される。

「卵を買いに行ったらおまけだと多目にもらえたんだ。それで、まあ。暑いから……えっと冷やして食べるお菓子だね」

 俺がしどろもどろになりながら説明をすると、ノエルが約束していた俺の菓子だ、と言い放ち、皆が、ああ、あれかという顔をする。

「じゃあ、食べに行くから。後は宜しく。これは試食で作った分だから食べたい人がいればどうぞ」

「1時間後にしか戻らない」

 分かりました、と全員に言われ、俺とノエルはバイキングだ。

「うぅーさすがに疲れたな」

 グッと伸びをする。

「すまなかったな」

「ノエルは悪くないよ。さすがにあんなことをするとは思わなかった。でも、明日じゃなくて良かった」

「明日か。……明日は逃げておくか。午前と午後の責任者を指名することにする」

「アハハ、それがいいかも」

 今日は文化祭の前日で混んでいる為、二人掛けだ。

 年上の人達にノエルがじろじろと見られている。

 4年生は女子が多いので唾をつけたいと言った先生の話に納得する。

 一緒にいる俺も見られているので、上品に盛り控えめなバイキングを楽しむことにした。

 それでも我慢できずにオムレツとソーセージ、パンとジェラードは変わらずにお代わりするのだった。

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