事前確認
今日は、学校に全員が集まる日だった。
一応制服で行くと、全員が制服だった。
よかった。
俺は、木箱に入ったハチミツや乾燥させたハーブを持って来た。生のハーブも直前で足せたらなと思っている。
「ソルレイ様、手伝います」
「ありがとう」
何人かが前に来てノエルも来てくれた。
ハチミツの瓶の木箱の上に、木箱を乗せこちらはハーブが入っていたのだ。
上の木箱を持って下ろしてくれる。
「置いて来て悪かった。どうせ学校に戻るんだ。運んでおけばよかった」
「寮ですからね。すみません。気づきませんでした」
「アハハ。これくらい、いいよ。ハーブも干していたからね。個別で移動させるより、一気に運んだ方が瓶も割れる心配をしないでいいよ」
割れるといけないので、ハチミツも足元の入り口とは反対側に置いておく。
まだ始業時間ではないのだが、全員が揃っている為、瓶の確認をする振りをして話をしておく。
「ビアンカ嬢、ソラ嬢。クッキーの件なんだけど、ちょっといいかな」
男子が、まさか、という顔で反応をする。
「なにかございまして?」
「うん。二人は事前準備班だからね。こっちに来てくれるかな? これが、クッキーに使ってもらうハチミツの大瓶だよ。ヨモギもとれたから使うか分からないけれど乾燥させて持って来た。……ああ、そうだ。調理室は前日と当日しか許可を貰っていないんだけど、全員で事前に練習したりするのかな? 申請が必要だから確認しておきたい」
これは確認のための正当な行為である、とアピールしつつ練習は必要ですか? と聞いている。
男子が固唾をのんで見守っている。
「クッキーはよく作りますし、皆さんもそうおしゃっていましたわ」
ビアンカは口元に指をやり、練習は必要ないのでは? という意見のようだ。
「そうですわね。練習と言ってもすることは変わりませんし……」
この分なら大丈夫だな。
ハーブの確認をする振りをして留まっていた皆も話を聞いて胸をなで下ろしている。
「そうか。いや、国が違うと材料の配合も変わるし統一したほうがいいから練習するのかと、ふと思ったんだ。国によってはスパイスを入れたり、小麦粉ではなくそば粉で作ったりもするから。事前に作る場所を見ておかなくても問題なさそうかな」
オーブンも火力が違うと焼き加減が変わるからね、と、つけ足すと何かに気づいたような顔をして、少し焦った仕草をする。
「み、皆さまに必要か確認致しますわ」
「そうですわね。皆様の作り方が違うとなると少々まごつきそうですわ。不安な方がいらっしゃるか尋ねて相談致します」
「そうだね。今日中に言ってくれればいいから、また決めたら教えてくれるかな?」
「「ええ。分かりましたわ」」
ノエルには、よく作っているのなら大丈夫だよと伝えた。
全員への通しの報告として、裏方の制作した幕や案内板など必要な物を作り終わったので、後は前々日に設置することを伝えた。
前日は午前に予行演習を行うので、クッキー作りは午後に頼んだ。
男子が集めてきたハチミツやハーブも十分な量に達したこと、余った場合は市価の半値で販売することなども決まった。
ついでにポプリも作成してもいいか?聞くと、反対も出なかったので予算から計上することになった。
刺繍に使う事前準備班が買ってきたハンカチと刺繍糸を女子に纏めて渡す。
ハンカチは11枚だと少ないかもしれないので、15枚買ってきたと聞いている。
刺繍が得意な子が余分にやるようだ。
ここからは男女別で、素材をどうするか話し合うが、すぐにフォルマの家の領で獲ることが決まり、そのメンバーは狩りの得意な者で構成された。
他の皆は採集に回り、今日は布を買いに出てポプリづくりになった。
乾燥したハーブを種別に砕いて、香りの良い物と組み合わせ男子作の大量のポプリが出来上がり平和に過ぎた。
刺繍をしていた女子達からは念のため調理室の申請をと頼まれた。
申請を頼まれた日は、設営の日と同じなので、多くが学校に来ると知り、マクベルなど、休みで来なくていい男子も来ることになった。
設営を手伝ってくれるか聞くと笑顔で、いいとのことだった。
忙しいのか先生は来なかったが着々と準備は整っていった。次に全員が揃うのは6日後で、裏方も1度来れば終わりだ。
ようやく肩の荷が下りる。
昼で作業は終わり、ラウルとようやく遊べると図書館で絵本を借りて足早に帰るのだった。




