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文化祭の話し合い 前編

「ノエル様、ソルレイ様。文化祭の概要をお願いしますね」

 そう言って教室から去って行った背中を見て、いつも通り教卓に向かい概要が書かれた紙を片手に確認する。

 予算は金貨3枚を支給。

 何をするかは自由。

 使い切るも使い切らないも自由。

 ただし、売上が金貨3枚を下回ると夏休みは学校で掃除や書籍の整理などの雑用とある。

 代理人は認めず、か。

 あくまでも生徒がやるということだな。

 夏休みは長期休暇があるが、1年生の時は帰国禁止だ。

 たぶん、親離れ子離れの意味あいもあるのだと思う。

 2年生になり、今年は帰りたいと思っている子も多いはずだ。クラスごとなのでこれは25人の気持ち一つだな。概要に目を通したので、ノエルに回す。

「けっこう厳しい内容です」

「……」

 目をざっと通し同意するように一度頷いた。

 ボードに、文化祭のルールと題し箇条書きで記入していく。

 書き終ってノエルを見ると説明を始める。

「文化祭についてだが、以前に説明の合った通り夏休みに行われる。準備期間は2週間だ。金貨3枚の予算を使い、出し物を各クラスで考える。売上金が使った予算を下回ればペナルティーだ。夏休みを返上しての雑用係になる」

 ノエルの話を聞きながらボードに書かれたルールを見て、みんな苦い顔だ。

「そんなに悲嘆しないでいいよ。予算をどれだけ使うかにもよる。ここには使うか使わないかは自由だとある。これはつまり、全く使わないことも可能なことを意味するんだ」

 俺がそう言うと、驚いた顔をして皆が見てくる。

「ソルレイ様。それは、可能なのでしょうか?」

 トーマルが尋ねるので頷く。

「いくつか思いつくよ。例えば、皆の家に不用品はどれだけある? 使われていない物や置きっぱなしになった物だな。使っていない頂き物もいいだろう。それらを持ち寄り売ればどうなる? 元手はかからず利益になる。売上は寄付になるので、どこからも文句は出ない」

 さっきよりも驚きに目を見開く。

「確かに、それなら予算を使わないで済みそうです」

「うん。ちゃんとしたお店を開こうとするから駄目なんだ。そして力を入れても金貨3枚の予算では、街にあるお店にはできないよ。みんなでよく考えて意見を出そう。予算の金貨3枚を少ないと考えるか多いと考えるかは視点による」

「ソルレイの言う通りだ。2週間の準備期間を有効に使えばいい。この国は自然も多い。自分達で何かを獲りに行って売れば低予算で利益を出せる」

 物流費もスニプルで運べばいいので、かからない。

 何にお金をかけるかが重要だというノエルの言葉に、皆が真剣に考え出す。

「案がある人は言って。ボードに書いていく。こうすればいい、ああすればいいは後から考えればいいよ。やりたい出し物を言ってくれればいい」

 一応さっき出た、不用品のバザーとノエルの言った加工品(狩り・採集)も書いておく。

 採集を見る。

「花屋とかでも良さそうだね。予算を使わなければそもそも罰は関係ないよ」

 学校が意図しているものとは違うのだろうが、みんな帰国できるので勝手に花屋と書いておく。

「ソルレイ様。辺境はともかく夏に花は少ないですわ。その代りハーブが多く出回りますの。暑さにも強いので萎れませんわ」

「ハーブか。いいね。お茶や、お菓子か。皆で摘みに行って干してお茶にして、お菓子を作るのも楽しそうだ」

 花屋を二重線で消してハーブ屋、その次にハーブを使ったお店と書いた。2つの案だ。

 書いて振り返ると、全員に凝視されるので首を傾げた。

「コホン。全員に意見を言ってもらう。今のはハーブが多く出回ると言ったリベルの意見だ」

 ノエルがそう言い、端から強制的に当てていく。

 みんなこれならどうか? と思う意見があったらしく、言われた出し物をボードに書いていく。

 貴族なのに低予算でできそうな物を考えて言うのが良かった。

 もっとぶっ飛んだ意見が出ると思ったのだ。

「全員が1つずつ言ったから、25個の案が出たね。個人的にはアロスが言った魚釣りがやりたいけど、女の子や小さい子も参加するからなぁ。服が汚れちゃうだろうから駄目だな」

 平民は汚れても気にしないが、汚れた服で回った時に他のクラスで何か言われるかもしれない。可哀想なことにならないように気をつけないとな。

「ソルレイ様。それを言うなら菓子作りもですよ。男子は参加し辛いです」

 ファビルから女子が出した案の抗議を受ける。

 あーそんな感じか。

「それもそうだね」

「……」

 ノエルがじっと俺を見るので目を逸らす。

「ソルレイは菓子作りがう「ゴホン!」」

 咳払いで無理やり終わらせた。ここで俺の腕前など関係ない。皆が納得する出し物にしないと。

「ノエル様。みんなで投票をしましょうか!」

「……そうだな」

 全員に目を瞑るように言い、3回挙手をさせる。

 3回と言うのが大事で、こうすると2番目の意見でも自分も投票したしな、と納得できるのだ。

「ハーブのお菓子店に、生演奏、貝当ての3候補だ。ここから1つに絞る」

「具体的に何をするのかを先に決めてからの方が良さそうです」

「皆の意見で決めよう」

 ハーブ店はさっき俺が言ったものが大枠で、男子も採集できるから別にいいということらしい。

 菓子作りではなく、お茶づくりに回るようだ。

 お茶を誰でも淹れられるのは貴族ならではかもしれない。

 生演奏は、楽器を弾きチップを手に入れる、大道芸人の手法だが貴族が寄付を集める時に割とやる手法らしく人気があった。

 貝当ては、片貝を机に並べ、別の場所にある隠された片貝を見つけて来て重ねるという探し物ゲームでなかなか楽しそうだった。

 庭でやり、部屋に片貝を探して行ってもらい、合わさった数に応じてお礼を渡すという伝統的な貴族のお遊びらしい。

 アインテール国の貴族なら誰でも貝を持っていると言うので、お礼に渡す物の調達だけでいい。

 参加費は銀貨1枚か。

「どれも予算はほとんどかからない」

「そうですね」

 多数決で決めようか、と挙手をしてもらい、貝当てに決まった。

 ここでいったん休憩を挟み、15分後に役割分担を決めることにした。


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