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ラウルツ・フェルレイの高等学校 10

 翌日、スニプル車を大金で買い上げアインテール国に戻った。大幅に日数が伸びたため、皆、早く帰りたいだろうという配慮だ。


 これは、僕が料金を支払ったんだけど、ラピスはソウルにいいところを持っていかれたと勘違いをして悔しそうに見ていた。仕方がないね。休憩の時にでも言っておこう。


 アインテール国の正門を無事に潜る。戻りの2日を入れての20日間にも渡るダンジョンはようやく終わった。


 これで夏休みを謳歌できることになり、各国に鉱石採取をしながら旅する楽しい夏休みを過ごせる。


 夏休みのボランティア活動もソウルやノンが、アレアレ達とやってくれていたし、聖職者の使う魔法を勉強したいという友人がいたらしく、頻繁に教会へ行ってくれていたために問題なく旅行に行くことができそうだ。


「ソルレイ様! 俺とした約束は覚えてますか!」

「あ、あぁ、うん。ごめん」


 帰国する時は、連絡するという約束だったらしく、寮に着くなり、ソウルはモルに怒られていた。行きは一緒に来て、ダンジョンに入る時に帰るように言ったみたい。

 僕は、お風呂に入るからと逃げるように自分の部屋へと入った。


 心配していたアリスにただいまを言い、夏休み中にアイネに会いに行くからまた旅行の用意をして欲しいと頼む。


「すぐに出られますか?」

「明日は休むよ。あーそうそう、アリスも連れて行くからね」


 ソウルが鉱石採取に行きたいという約束をミュリスにしていた。僕も行きたいから行きと帰りにグリュッセンに寄るつもりだ。


「グリュッセンでのんびり過ごしたいから先にワジェリフに行くよ。行きにも寄るからアリスはアイネとのんびりしていて」

「はい、ありがとうございます」


 土産を大量に買い込み、アイネの好きなお菓子も買った。

 何日かの滞在になるけれど、帰国すると言っていたミュリスに同行して、まずは、遠いワジェリフ国に遊びに行くことにした。


 グリュッセンは道中にある国のため、屋敷で一泊してもらったが、これがグルバーグ家の屋敷だとすぐにバレてしまった。

 呼んだことなかったのに、変なの。

 アイネやカルムお兄ちゃん、ダニーに会うのは半年ぶりだから話したいことが多く、賑やかな食事となった。


「ワジェリフ国の鉱石か。あそこは良質な鉱石が採れても外には出さんからな」

「「そうなの?」」

 僕はミュリスに聞き、ソウルはカルムお兄ちゃんに聞いた。

「輸出はしていませんが、学者の方には鉱山を開放していますよ」


 ミュリスとカルムお兄ちゃんの間で何か始まりそうなのをソウルが止める。


「今日のデザートは、俺が作ったんだよ」

「ふむ。そうか。楽しみだ。……ワジェリフは、そういう外交的手腕が高くてな。特定の相手だけに、貴方は特別だと言って良い鉱石を譲る。そうするとされた方は、悪い気はしないだろう」


 カルムお兄ちゃんが止めずに言い切り、ソウルが睨め付けてからミュリスに気にしないでいいと伝えると、今度は、ダニーが笑顔を見せる。


「ソルレイ様、エルピカという魔獣の魔導石が有名ですよ。ワジェリフから近い荒野に住み着く怪鳥ですね。真っ青で綺麗です」


 こちらは、専門店で買えるという。

 良い機会だと言って、カルムスお兄ちゃんが鉱石を頼むのをソウルが請負う。


「分かった、買ってくるよ」

「ああ、頼んだ。大きいものを頼む」

「約束はできないけど、お店の人に聞いてみる」


 綺麗なら僕も買っておこう。アイネは青が好きだ。

 帰りはのんびりできるからと翌日には発った。


 ワジェリフ国では、侯爵家のエリエリとも会えたけど、まだ卒業できてないから戻り辛かったというので笑った。


「大体3年で卒業だって聞きましたよ」

「うん、僕も。気にしないでいいと思うよ」

「そういう訳にもいかなくてな」


 初等科の入学の時は、3番目だったから高等科で成績が落ちたのは、遊んでいたからだと思われているんだって。


 気の毒すぎだよ。

 初等科の試験は、アインテール国の貴族は手を抜くように言われる。ソウルも手を抜いていた。他国の生徒に華を持たせるから当てにならない。

 それに高等科からは、魔法陣が得意な優秀な外部組も入ってくるからね。


「今日は家へ泊まるといい。明日はミュリスのところだろう」

「ありがとうございます」

「うん、その予定だったよ」

「ハハハ。そうか。ゆるりと過ごしてくれ」


 国内の案内がてらエリエリもミューも一緒に行ってくれると言うので、せっかくだから4人で鉱石の採取をした。

 自国の侯爵家が、二人もいれば普段行けない採取場所にも入る許可が下りると予想したソウルの言うとおりになり、研究者ではない僕も助手だと一緒に保護地区にも随行でき、貴重な鉱石を手に入れることができた。


 魔道具を皆で作ろうとソウルが言えば、二人とも喜んでいたし、急な予定にも関わらず、泊まったどちらの家でも歓迎を受けた。


「ソルレイ様、エルピカの魔導石はご入用ですか」

 帰る頃にミュリスが変な声のかけ方をした。

「買って帰ろうと思っていたけど……もしかして、貴重だったかな」

「買うには、紹介状が要りますが、買えるのは一つです」

「そうなのか」

 ソウルは一つだけでも買いたいと頼むと、微笑んで頷いた。お店に行くのに紹介状がいるんだね。

「ミュー、僕も欲しい。紹介してくれる?」

 いいか尋ねれば、あっさり良いと言う。

「カルムス様は噂通りの方でしたから、助けてもらえて助かりました」

「ああ、あれか。ごめんな、ミュリス」


 ソウルが申し訳なさそうに謝っていた。食事の時のことだね。僕はもう謝ったよ。

 カルムお兄ちゃんも変なとこで貴族スイッチを入れるんだから。友達相手にやめて欲しいよ。


「いえ、輸出できない石ではなく、エルピカで折れてもらえたので気にしないで下さい。王都にある店でいい物が手に入ります」

 

 僕が謝った時も、笑って気にしていないぞと言ってくれた。ミュリスが王都の店に一緒に行ってくれたため、大きい鉱石を購入することができた。


 そうして、礼を言って、また違う国に向かう。といったことを繰り返していた。

 ソウルも僕も他国から来たクラスメイトを大切にしていたので、レリエルクラスの友人を訪ねると笑って歓迎してくれるのだ。


 家の人は驚くけど、偶々この国に来たから顔を見て帰ろうと思ったと言えば、『ようこそ』と言ってくれるので夕飯をごちそうになり、鉱石採取をして帰るのだ。


 本当に充実した夏休みを過ごし、会えなかった時間を取り返すようにグリュッセンで過ごした。

 だから、夏休みが明けるのが嫌だった。


「ソウル」

 ぎゅっと抱き着くと、分かっているよ、とばかりに僕のまわした腕に手をそっと重ねてくれた。

「また今日から頑張ろうな」

「うん」

「お弁当も作ったよ」

「うん」


 卒業までもう少しだから頑張ろうと気持ちを切り替え、ようやく鞄を手に持った。

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