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護衛

 お爺さんの結論は、予想通りアインテール国に戻るというものだった。戦えるだけの戦力は残っていなかったらしい。王族たちが道中の護衛に魔法士達を全て連れて行ったと、俺とラウルに聞かせないように大人たちが話しているのを聞いてしまった。

 出立は明後日の朝となった。

 早朝はドラゴンが動かないというのは軍でも知られていたようだ。

 明日の薄暗い内に必要な物資を揃えたら翌日に出発すると決った。お爺さんは、身の回りの世話をするメイドや執事達をすでに逃がしていたので、連れて行けばいいのは俺たちだけだった。

 せっかく旅支度を調えるのなら俺もラウルも市場に行って買い物をしたいとお願いをしてみた。

「市場に買いに行ってもいい?」

「おやつを買いに行きたいの。おじいちゃんいい?」

「む?市場に人はおるのかの?」

「ううん。いないよ」

 誰もいないけれど、商品はあるのでお金をカウンターに置いて買い物をしていたことを話した。

「なるほど。この辺りの商店は軍が物資を集めたので、そちらの方がいいかもしれませんね」

 ダニエルが、補給部隊が王の命で物資をかき集めていたと言った。

「では、全員で行きましょうか」

「ふむ。そうじゃな。私が収納して魔導具で記録をつければいいじゃろう」

 なんでも移動する時に大荷物にならないで済むように、魔法陣を使って別空間に収納し、魔導具のカードによって選択して取り出すという。要するに、魔導具の収納庫と管理カードをお爺さんは使えるらしい。

 カードの持ち主欄に名前を記録すると、お爺さん以外の人も取り出せるようになる。俺とラウルも名前を記録することになった。

 血を数滴カードに落とすと完了だ。

 大切な物のはずなのに、いつでも好きに使いなさいと言うので俺も言えなかったことを言う。

「お爺さん、あのね、買い物をしたらそのまま出立したほうがいいかもしれないよ」

「うん、雨になりそう!」

 ラウルも賛成してくれた。

「「「雨?」」」

 全員が窓に目を向ける。

 ああ、うん。今は晴れてるけどね。

 ダニエルは、ラルド国の騎士なのに忘れているのかな。

「この時期は長雨になるんだよ。一度降ると2週間は続くから……」

「しまった。もうそんな時期になっていましたね。ラインツ様、急いだ方が宜しいかと。長雨は体力を奪います」

 ダニエルがこの国特有の豪雨について説明をした。平民は食料を買い込んで巣篭もりのごとく家から出ないのだ。仕事も勿論休みだ。

「師匠、流石に2週間の足止めはまずいです。途中で降られるにしても1日は距離を稼ぎたいですね。スニプルならハッセルまでは、3日でしょう」

「ふむ。では、屈強な軍人を二人見繕うとしよう。腕も性格も良い者だ。ダニエル、誰かおらぬか?」

 折り合えば俺とラウルの護衛として雇うので、ダニエルやカルムスとも相性の良い者を頼むぞと言われると思案気な顔だ。

「そうですね……そこまで親しくはないのですが、モルシエナとベンツが軽傷で下がっています。怪我人はいらぬと、王が命じられまして。槍の腕もよく面倒見も良い明るい者たちです。回復しているはずですから声をかけに行って来ます」

 そう言って足早に出て行った。

 回復した人から身の振り方を考えるのは当たり前だもんな。まだいるといいな。

 エルクは、腹の傷は癒えただろうか。

 怪我人がいらないのならエルクも無理に連れて行かないで欲しかった。

 軍人にきつく当たる王だと聞いて心配になるのだった。

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