カプリとラムル
「クリスマスの夜に」
雪がしんしんと降り続けるクリスマスの夜に一つの流れ星が雪原の森に降りたった。
暗かった森の中で、ランタンの光が一つ。そこでオレンジ色に照らされた4匹のトナカイと赤い服を着た白ひげのサンタさんが休憩していた。
「フー 今年も多くの子どもたちにプレゼントを贈ることができたの〜」
「はい、みなさん喜んでくださるといいですね」
とサンタさんと先頭のトナカイが話しているとその後ろにいる小柄のトナカイが鼻をすり寄せるようにサンタさんに近づいてきた。
「ねえねえ、サンタさん。私もうクタクタ!」
「そうじゃの、どこか暖かい場所を探さねば」
彼らは周りを見渡したが真っ暗で何も見えなかった。
「ここ、どこだろね?」
と一番小さいふわふわのトナカイが前にいるメスのトナカイの足元で飛び回りながら聞く。
「そうね、私たちの家には近いと思うけど、どこかしらね」
「全く知らないところですね」
「もう、お姉ちゃんが疲れたって言わなければ早く帰れたのにー!」
「なによー!あんただって眠いって言ってたじゃない!」
「まあまあ、ワシらも一休みしたいところじゃったからケンカするではない」
と彼らが話していると、急に背後から冷たい風が吹く。それに合わせるかのように周りの木々が動く、すると目の前に一本の道ができた。
「キャ!なになに!?」
「道が、、一体これはなんでしょう、、」
「あ!サンタさん!ランタンの火が、、」
続けて冷たい風が吹くとランタンの光が風に乗り、道の先に飛んでいった。その光は道の先にあった大きな杉の木の周りを下から上へと渦を巻きながら空へ打ち上がり、降り注ぐ火の粉が木の周りを照らした。すると杉の木はミシミシと音をたてながら生き物のように動き、教会へと形を変えていった。
「なんじゃ、、あれは、、」
驚く彼らを教会まで導くように、空中の火の粉は暗かった一本道を花道のように照らした。
「教会」
サンタさんたちはいきなり現れた教会に驚きを隠せなかった。
「サンタさんあれって教会ですよね」
「そのように見えるのう」
「ねえねえ、せっかくだし中に入って休もうよ」
「賛成!私、はやく休みたい!」
せかす小さなトナカイたちがサンタさんの足の周りをグルグルと回る。
ーチリ~ン
教会の入り口にあるベルが鳴り、彼らを招くように教会の大きな扉が開いた。
「開いた、、」
「うわ〜なんか暖かそうだよ、早く入ろうよ」
「せっかくじゃし、入らせてもらうかの」
サンタさんたちは教会に入ると、外とは反対の世界がそこには広がっていた。正面には天井まで登るステンドグラス。そこにはマリア像がサンタさんたちを歓迎するように見つめていた。
「あったか〜い」
「きれいですね。すみませんどなたかいらっしゃいませんか?」
『はーい!ただいま〜ウッ!、、、、、、、、、』
奥の方からオレンジ頭の子とミドリ頭の子が駆け出してきて、サンタの姿を見ると口を開けたまま固まってしまった。サンタがそのことに気づかず話し始める。
「わしらは家に帰ろうとしたんじゃが、一休みしてたらいきなりこの教会が現れて、それでの、、、」
『あの!もしかしてサンタさんですか?』
「そっそうじゃが、、」
『やったーー!本物のサンタさんだー!流れ星に言った願いが叶った!』
「流れ星?」
『はい、実は先ほどシルビアという女の子がこの教会に訪れまして、サンタさんに伝えてほしいことがあると言われたのですが。私たち、どうしたら会えるのか分からなかったもので,そしたら空に流れ星が見えたので願いを聞いてもらったんです』
「そしたら叶ったってこと?」
「はい!それでですね。シルビアからの伝言なんですが、、」
(サンタさんトナカイさん毎年、寒い中。プレゼントを届けにきてくれてありがとう。来年はお姉ちゃんになるからプレゼントはいりません。これからは、赤ちゃんにあげてください。)
「プレゼント」
伝言をきいたサンタさんはシルビアという名前に聞き覚えがあった。金の表紙でできた一冊の本を懐から取り出しその名前を探す。
「サンタさんそれはなんですか?」
カプリが聞くと、サンタさんは本の中身を見せてくれた
「これはプレゼントを受け取れなくなってしまった子たちのリストなんじゃ」
「大人になってしまった子やわたくしたちを信じなくなった子。それに魂がこの世にない子などの名前が書かれた本なのですわ」
「そう、シルビアもここに先ほどプレゼントを届ける前にリストに載ったんじゃ」
「そうだったんですか、、じゃああれはシルビアさんの魂だったんですね」
サンタさんは手元に残ったひとつのプレゼントを袋から取り出した。
「これを渡す予定だったんじゃが、リストに載ってしまえば渡すことができん、ましてやこの世にいないとなるとわしらでも渡せないんじゃ」
「それなら私たちが代わりにお届けします!」
「君たちって一体何者なんだ?」
「私たちは天使です!神様の代わりに人のいる世界でお仕事をしているんです」
「え!うっそ!本物の天使なの?私初めて見た。あれ?じゃあなんでシルビアが魂だってわかんなかったの?」
「この教会は天界と人間界をつなぐための場所なんです。だから、生きてる人も無くなっている人も訪れるので私たちは見分けがつかないんですよ」
「そうだったんだね。でも天使なら簡単に僕達に会えるもんじゃないの?」
「それは、、私たち天使になりたてでまだよく分かってなくって」
と苦笑いする二人。
「でも安心してください!人間界には詳しくなくても天界のことなら大丈夫です!確実にプレゼントをシルビアさんに渡すことができます!」
「なら、任せようかの。これを彼女に遅れてすまないと伝えてくれるか?」
「はい!お任せください」
「また会いましょう」
教会の外に出ると、朝日が昇り始めていた。
「お前さんたちのおかげで心残りなくクリスマスを終えることができたよ。ありがとう」
「いえ、私たちも憧れのサンタさんたちのお役に立てて光栄でした」
「カプリ、ラムル。これ僕達からほんの気持ち、受け取って」
一番小さなトナカイが渡したのはそれぞれの頭の色と同じ毛糸で編まれたマフラーと手袋だった。そして彼らは別れを告げ、教会を後にした。