ペットが増えました
顔合わせの後、僕は仮眠室に戻ったが、仮眠室もサーバールームにもファーが見つからなかった。そういえば、サーバーに向かって歩いて行ったのは見かけたが、それ以来見かけていない。木村さんが来るのに気づいて隠れていたのだろうから、そのうち出てくるだろう。僕は仮眠室のベッドに横になった。シャワーにも入らないといけないけど、結構疲れているようで、このまま眠ってしまいそうだ。僕は次第に意識が無くなっていった。
ここは…?夢?
街が破壊されている。
横たわる人間たち。誰も生きていない。
「コ、コタロー…」
誰かが呼んでいる。
「私を過去へ…」
過去へ?
夢の中の僕は声のする方へ歩いていく。よく見たら僕自身もボロボロだ。
「ごめん。また失敗だ。」
失敗?
僕は声の主の手を取る。
「もうこの世界はいいよ。僕も限界だ。また僕たちのことをよろしく頼むよ。」
僕はそう言って、僕は持っていた力のすべてを注ぎ「リバース」と囁いた。
声の主は強い光に包まれ、光が収まるとそこに姿は無くなっていた。
消えたことを確認すると、僕はそこへ倒れた。
あれ、僕、死ぬのか…
そのまま意識が遠くなった。
目が覚めると、布団の上にファーが寝ていた。
やっぱり夢だったのか。それにしてもリアルな夢だった。あれは僕だった。僕はそっとファーを撫でてまた眠りについた。
翌日、僕は木村さんに言われた期限よりも少しでも早く仕上げるためにプログラムの組み立てを行うが、実はプログラム自体はほとんど完成していた。そもそも現在のウェポンマスターのプログラムをコピーしたものに手を加えたものだし、AIも地盤のプログラムができていたから、あとはコアとなる部分が何なのかを解析すればよかった。僕が実際に「ウェポンマスター」をプレイしてみて、こうしたほうがいいんじゃないかというのも加えておいた。AIの方は、プログラム自体は完成しているものの、起動しない。そういえば、最近バタバタして気づかなかったけど、AIが話しかけてこなくなった。
「おーい、AI。最近静かだな。」
誰かに聞かれたら、おかしな状態だな。誰もいない空間に向かって話しかけているんだ。
『…プログラムはほとんど完成したようですね。』
「お、いたいた。AIも忙しいと無口になるのかい?」
『いえ、そうではなく、間もなく私は任務を完了し機能を停止します。そのため、大部分が休止状態となっており処理速度が遅くなっております。』
「任務が完了って、『ウェポンマスター』はどうなるんだい?」
『ゲームとしての『ウェポンマスター』は間もなく終了いたします。ブレスレットの管理は既存のコンピューターのみで管理できます。ご安心ください。』
「それはそうかもしれないけど、君の任務って何だったの?」
『新しいプログラムのAIが起動すると私は消えます。私は記憶するものであり、伝えるものです。そして私は過去の産物であり、この時代のAIが完成したら消えなくてはなりません。同じものは同じ時代に二つ存在しないのです。』
そう言うと、AIはまた静かになってしまった。確かに僕が作ったAIはコピーしたものだけど、同じものは二つ存在しないってどういうことだろう。
「どうだ、昼休憩行けるか?」
部屋に木村さんが入ってきた。そうだ、今日は木村さんと一緒に昼食を食べる約束をしていた。
「ええ。大丈夫です。プログラムはほとんど完成しています。」
「えっ、そうなんだ。頑張ったね。じゃあ、ちょっと出ようか。あ、その前に…これ虎太郎君の制服ね。」
そう言って木村さんは段ボール一箱を置いていった。開けてみると、実戦演習のメンバーが来ていた服と同じものが入っていた。ラインは…4本だ。4本だけど1本ブルーのラインだった。
「木村さん、このラインって意味があるんですよね?」
「そうだね。魔法のレベルによって本数が違うんだけど、君は四本ラインで特別枠だから青色ね。それ着ちゃうと誰だかわからなくなっちゃうでしょ。他の四本ラインと区別つくように青色が入っているんだ。」
そうだよね。他の人たちに戦えると思われたら困るもんな。だけど、僕がこれを着て「何か」と戦うことってあるのだろうか。僕が考えながら制服を見つめていると、木村さんは部屋を出て行ってしまった。
そして僕たちは二人でレストランの個室に入った。
「なんでも好きなもの頼んでいいからね。」
木村さんが優しい。雪か雹でも降るんじゃないだろうか。
料理が揃ったところで、木村さんが話し始めた。
「虎太郎君、昨日の敵の話を聞いてどう思った?」
「どう思ったかと言われても、正直実感はないし、魔法を見たと言っても窓越しで、大画面で他人がプレイするゲームを見ているように感じていましたから、あまり実感はないですね。僕自身が魔法でボーンって攻撃しているわけではないですし。ただ…」
「ただ?」
「昨日仮眠室で寝たときに、怖い夢を見ました。街が壊れていて、人がたくさん死んでいて…。僕を呼ぶ声がして…『戻してくれ』って言っていました。その後、僕も倒れて…。」
「…なるほどね。君は『時』属性の持ち主だから、それは夢ではなく記憶かもしれないね。」
「記憶って…、夢の中で僕死んでいましたよ。」
木村さんは水を一口飲み、遠くを見つめたあと少しうつむき気味になって話し始めた。
「…36回目だそうだ。」
「36回?」
「そう。36回目。雪華君がやり直した回数だ。」
「やり直すって、何を?」
「あいつとの闘いだよ。もう35回負けているんだ。その度に『時』属性の君に5年戻してもらっているそうだ。5年だぞ。5年を35回。ははっ、僕らよりはるかに年上だな。」
「僕が…?」
「やり直すってどんな気分なんだろうな。その時の仲間が死ぬのを見て、その時の世界を捨てて、自分だけが戻ってやり直す。君が見た夢はその中の一つかもしれない。ところで、昨日解散した後、雪華君は何をしていたと思う?」
「そんなことは知らないし、興味もありません。」
「虎太郎君は冷たいなぁ。見た目は19歳の女子だよ。色々想像することあるでしょう?」
僕は冷たい視線で木村さんを見ていた。いい歳したおじさんはこれだから…。
「…冗談だよ。配布したブレスレットは、属性のバランスを保つようになっているだろ?不足した属性を追加しているのは雪華君の力だ。属性を与えてしまったのは自分だから、少しでも暴走する人が減るように、自分の力を分け与えているんだ。彼女が頭に付けているやつあるだろ?あれは常に君たちのブレスレットとリンクしている。常に力を吸い取られている感じなんだろう。23時を過ぎるとパタリと活動できなくなるんだ。眠っている間に力を補充しているのだろうけど、その間も常に力は吸われ続けている。特別な力を持っていたとしても、あいつを倒すのには、一人では限界がある。これまで何度も挑んだんだろうな。だから仲間を増やす必要があった。魔法を使える人間を増やす必要があるが、そのために犠牲になってしまう人がいる。何度もやり直して犠牲が最小限になる方法を今も探し続けている。あと何回やり直すのかわからないからね。」
木村さんにそんな話を聞かされても、僕には実感が沸かなかった。だけど、昨日の夢みたいなことが何度も何度も起きているのだろうか。僕はなんであんな夢を見たんだろう。現実世界で実感が沸かなくても、あの夢は本当に自分が体験しているようだった。
昼食を終えた僕たちは、サーバー室に戻ってきた。今日は午後から実戦演習をしている。演習風景を見て木村さんは言った。
「本当はこんな力を使う世界にはなってほしくないよね。でも、『あいつ』の復活は確定事項だから、仕方ないんだ。今日は19時にはみんな実戦演習が終わるから。虎太郎君も制服着てあっちの部屋行ってみて。『浮力』と『重力』の使い方を教わるといい。他にも色々教えるよう話をしておくよ。」
「木村さん、僕ここで実戦演習の人たちの管理画面見ていますけど、どうなるとまずいんですか?僕は何を見てどんな対応をすれば良いのでしょうか?」
「戦っているメンバーが『戦闘中』の表示になるのは知っているよね。『戦闘中』の人のゲージのバランスがまず保てているかを確認、保てていない場合はすぐにアラームが鳴るから戦闘が終わる。属性を保ったまま肉体が限界を迎えると、ゲージ自体が赤くなる。肉体が耐えられなくなったとき、化け物に変化する恐れがある。もちろんゲージが赤くなった時もアラームが鳴るし、エーワンメンバーが対応するから何かしなくてはならないということはないんだけど、君はエーワンメンバーに何かあった時に動かなくてはならない。何をすべきかはもうわかるよね。」
「では、僕は19時に実戦演習場に行きますね。」
じゃ、よろしくと言って木村さんは出て行った。本当にあの人は政府の偉い人なんだろうか。
僕はまたプログラムと向き合った。AIの部分がどうしても起動しない。調べているうちに、今まで見たことのないフォルダを見つけた。フォルダには「MEMORY」と書かれていた。
「あれ、こんなフォルダあったかな。」
僕はクリックしてフォルダを開こうとするが開くことができない。この部分が何なのか、この部分がAIを起動させる鍵なのか、色々試してみたが、やっぱり開かなかった。そもそも、MEMORYってそんな重要なフォルダと思えない。やっぱり他に起動を妨げている何かがあるのかな。ここだけわかれば、もう「ウェポンマスター」も連動させて動かせるのにな。
さんざん悩んでいたらあっという間に19時前になってしまったので、僕は言われた通り制服を着た。サイズがピッタリだ。個人情報が漏れているのは重々承知していたが、僕の服のサイズとか靴のサイズなんかもバレているんだな。個人情報漏洩って怖い。フードも被ってみたが、本当に目元しか出ない。しかし、視界が悪いわけでもなく、呼吸も苦しくはなかった。一体何の素材でできているのか不思議だ。
僕はエレベーターで地下5階まで下がった。僕の職員カードでも、どの階にも行けるようになっていた。
「皆さんおつかれさまです」
実戦演習を終えたエーワンメンバーに挨拶すると、疲れているだろうに快く迎えてくれた。服装がみんな一緒だから分かりづらいけど、話をするとすぐに誰かわかった。
「コタロー君、いらっしゃい。木村さんから聞いているよ。『浮力』と『重力』の使い方を教わりたいんだって?」
「ラクさん。僕、まだ団長から属性もらったばかりで、そもそもどうやって魔法を使うのかわからないんですけど。」
「あれ、コタロー君、魔法使ったことあるんじゃないの?」
フクさんは僕の「ストップ」にまだ興味があるようだった。
「使ったことはありますけど、僕が使ったというより、僕の中の…僕の…中の…」
なんて説明すればよいのかわからなかった。
「あぁ属性の子たちね。そうそう、基本的に魔法を使うときは彼らを頼るんだよ。属性にはそれぞれ意思があるんだけど、後から追加された『浮力』と『重力』は既存の属性の子たちが管理することになっているから、こうやって『浮かせておくれ~』ってお願いすると、浮いたり、『着地するで~』ってお願いすると下ろしてくれる。ちなみに、『浮力』と『重力』は自分にしか効果がないから、物や他人を浮かせたり沈ませたりすることはできないよ。」
フクさんは大雑把に説明してくれて、少し浮いたり着地して見せてくれたが、そんな説明でわかるわけがない。
「って言うか、コタロー君、属性具現化できる?」
「属性を具現化?」
「そう。属性の力が強いと具現化できるんだ。まだやったことない?」
「いや、具現化できるって知りませんでしたし、どうやるかもわかりません。」
「じゃあ、今日は属性の具現化をやってみよう。」
ラクさんが先生のように教えてくれる。紗奈さんと銀次さんは静かで、なんだか疲れていそうな感じなのに付き合わせちゃって申し訳ない。
「制服は、防護服になっているから、窮屈かもしれないけど着ておいてね。じゃあ、まずフク、出してみて。」
「あいよ。」
そう言ってフクさんは右手に火、左手に水の塊を出した。少し経つと、火も水も何かの形になっていく。見る見るうちに手のひらサイズの人型になった。よくゲームやアニメで見かける精霊のようだった。
「きれいですね。精霊みたいだ。」
「そうだろう。こっちが炎、こっちが氷って名前だからよろしく。」
「精霊と思っていていいんじゃないかな。ウェポンマスター始めるときに、『属性決めます』とか言われて精霊が飛んで来たでしょ?そんなイメージだよ。精霊を具現化するのにはイメージが大事だからね。フクが火属性と水属性を使えるのは知っているよね。火は進化すると炎になり、水は氷になる。なので、炎と氷って名前なんだよ。フクのネーミングセンスね。」
ゲームの中で両方の属性を使えるのは知っていたけど、現実世界ではどちらかしか使えないと思っていた。双子の属性って現実世界でもすごいんだな。
「俺の属性は…」
そう言ってラクさんは、砂の精霊と風の精霊を出した。
「風がストームで、砂がアース。まぁ俺のネーミングもそのままなんだけど、風は暴風に、砂は土に進化するよ。じゃあ、銀次と紗奈も精霊紹介をお願いします。」
「はーい。俺の妖精たちを紹介するよ。毒を使うこの子が精華で、回復を担当するこの子が麗華だよ。僕の中で三人が僕を取り合うんだ!」
「…元カノの名前ね。」
渋い顔をしながらラクさんが教えてくれた。あぁ、紗奈さん、あんたがふられた理由がよくわかるよ。紗奈さんの精霊は、自分でも言っていた通り妖精のような姿をしていた。人によって形は違うんだな。
「私の精霊は、夜叉姫と妖鬼妃です。」
あぁ、銀次さん、わかってしまう自分が悲しい。桃太郎電鉄に出てくるキャラクターですね。
「銀次さんの精霊は、二人とも女性なんですね」
「そうなの。かわいいでしょ。」
「じゃあ、コタロー君も出してみようか。」
みんなの精霊が出されている状態で、ラクさんが切り出した。
「どうすればよいのでしょうか?」
「まずは、イメージだね。そうだな、魔法を使うきっかけがあったほうがいいかな。コタロー君はゲームをやったりアニメを見たりする?」
「ええ。比較的好きな方ですけど…」
「じゃあ、魔法使うときのイメージ、例えば、魔法陣みたいなのから魔法が出てくるみたいなイメージをしてごらん。ちなみに、フクは魔法陣を出そうとして、出てきたのが交通標識みたいな柄で笑えた。想像力が良ければ、キレイな魔法陣が出てくると思うんだけど。ほら、両手を出して、目を閉じて、イメージしてごらん。」
僕は両手を上に向けて出した。イメージ…、魔法陣…、シロにクロ…。
ボウン
虎太郎の右手に白い魔法陣、左手に黒い魔法陣が現れた。
「おお、きれいな魔法陣だな…。コタロー君は想像力が豊かなんだね。」
その場にいたメンバーが驚いていると、魔法陣の上に瞬く間に白い光と黒い光が現れ、その眩しさにみんな目を瞑った。
光が収まり、目を開けると…
「おお、これは…」
「コタロー君、目を開けてごらん。」
僕は言われた通り目を開けてみると、そこには白と黒の猫がいた。
「これは…猫?」
「猫と言うにはサイズが…。豹とかチーターのサイズじゃない?」
「具現化した精霊がこんなに大きいなんて…」
みんな驚いていた。シロとクロは、たぶん猫なんだけど、大きかった。犬で言うとゴールデンレトリーバーくらいだろうか。確かにみんなの精霊よりサイズが大きいが、僕のイメージが大雑把だったのだろうか。僕の精霊が動物だったのはファーが原因じゃないか?そういえば、人型のイメージは、していなかったな。シロとクロは具現化してもらえたのが嬉しそうで、僕にスリスリくっついてきている。
「かわいいなぁ。名前はある?」
「あぁ、シロとクロです。」
「…コタロー君、ネーミングセンスないね。こんなにかわいい子たちなのに、そのままじゃない。」
「こんばんは、ラクさん。コタローがお世話になっています。」
僕がちょっと恥ずかしそうにしていると、シロが挨拶をした。しゃべる猫だな。
「うわっ。驚いた。君、話ができるんだね。」
「精霊は話ができないんですか?」
「持ち主とは会話できるんだけど、他の人と会話する精霊は初めてだ。大きな猫と話ができるなんて、なんだかうれしいなぁ。よろしくね、シロ。」
「よろしくお願いします。」
クロは喋らないけど、声を出さないだけで、出すことはできるのだろう。
「ところで、コタロー君、これは何?」
紗奈さんに言われ、指差す方向を見ると、そこにはファーがいた。
「あれ、こいつ、なんでこんなところにいるんだ?こいつはファーって名前で、何の動物かはわからないんですけど、いつの間にか僕のところに…」
その時だった。あたりが真っ白くなって気づいた時には違う場所にいた。モノクロの世界になっていて、この場所がどこか僕は知らない。フクさんやラクさん、銀次さんと紗奈さんもいる。
「ここは…?」
あたりを見回すと、色はわからないが四本ラインの制服を着た人物が海を見ながら並んでいる。彼らの視線の先には、大きな山があった。あれは山?海の中に山?いや違う、あれは海だ。海の中から何か出てこようとしている。
ザバーン
出てきたのは…とても大きな化け物…。ゴジラとかそういう系の映画に出てくる感じのモンスターだ。僕たちは固まった。恐ろしくて声が出ない。全身が震えて動けない。
「あ、あれは…」
黒くて大きくて、ドロドロしてごつごつしている。もしかして、あれが「あいつ」と呼んでいる敵なんじゃないか?
四本ラインの戦士たちはそいつに向かって飛んで行った。
「陸に上がらせるな!原発に近づかせちゃいけない!手が付けられなくなるぞ!」
モノクロの世界の人が大きな声で指示を出す。戦闘に向かった四本ラインの戦士は、制服で顔は見えないが、使っている魔法が火だったり風だったりしているから、あれはフクさんとラクさんか…。攻撃するが、全く効かず「あいつ」は陸に向かって歩いてくる。戦士たちはゴミに集る蠅のように扱われている。振り下ろした腕に打たれ海に落ちていく。
あれがラスボス?あれを倒すために僕たちは魔法を使えるようになったのか?
あたりがまた真っ白くなり、気づいた時にはもといた場所に戻っていた。
「…」
「…何だったんだ?」
夢じゃない。みんなが同じ場面を見ていた。みんな青ざめていた。僕らがこれから戦おうとしている相手は、今見たモンスターなのか…。
「今の現象が何なのかだれもわからないよね。ユキに聞いてみるよ。」
静寂を破るように、明るくフクさんが言った。ユキとは団長、つまり、真城雪華のことだ。確かに彼女なら何なのか、本当にあれが「あいつ」なのかわかるかもしれない。しかし、何でそろってみんなであんな体験をすることになったんだ?これもまた何かの魔法なのだろうか。
「あ、みんな精霊戻したけど、コタロー君戻さなくて大丈夫?結構体力使うでしょ?」
「え?精霊を戻すってどうやるんですか?そういえば、とても疲れて…きた…ような…」
バタッと僕は倒れた。気づいた時には仮眠室のベッドの上だった。ここまで誰かが運んでくれたようだ。
起き上がると、シロがやってくる。
「大丈夫?コタロー」
「あぁ、君たちが具現化していると体力吸われるみたいだ。」
それにしても、ベッドの上に座っていると、膝の上にファー、右にシロ、左にクロ…。
……狭い。
「なぁ、お前らもう少し小さくなれないか?せめてファーくらいのサイズに…。」
「俺らはコタローのイメージで形ができているんだから、コタローが『小さく』ってイメージすれば小さくなるんじゃないか?」
「うーん…やってみる」
僕は目をつぶって、2匹の猫を小さくするイメージをしてみる。
すると、シュルシュルとシロとクロは小さくなった。
「おお、できた。このサイズなら具現化していてもそんなに体力吸われないだろう。」
仮眠室には、僕と3匹の動物(?)。ペットが増えました。