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日本列島支部巡り(その他の支部全部行っちゃおう編)

「ファズ、シャルはどう?もう少し?」

「……」

「……ねぇ、どうなのよ。」

 灯りのほとんどない暗い部屋で、ファズと呼ばれた人物は、動かずに横たわる人物にそっと手を当てている。

「……もう少しだ。クト、お前はロザに集中しろ。ザクス様が目覚めるときには、そろってお出迎えするのだ。」

「わかってるけどさぁ、今日なんて、コタローが来たよ。危うく見つかるところだった。本当は会っていきたかったけど、我慢して帰って来たんだよ。この姿じゃぁ、僕だって気付いてもらえないしね。そうだ、コタローは瞬時に移動できる魔法を身に着けたみたいだね。」

「……それで、ロザはどのくらいで回復する?」

「何?無反応?コタローまた強くなっているみたいだったのに、反応薄くてつまらないなぁ。ロザはもう少しかかるよ。体が再生できないように鉄で固められているんだ。ロザが光魔法でどうにかしない限り脱出はできないよ。」

「……なるべく早く復活させるんだ。ザクス様復活の日は近い。」



 ふと目を覚ますと夜中の3時だった。いい時間だ。僕は起き上がり制服に着替える。

「……コタロー?どこか行くのか?」

 眠そうなクロが僕に気付き声を掛けてきた。

「ああ、クロ。ごめん、起こしたか?」

「シロとファー、起こすか?」

「いや、いい。僕だけでちょっと出かけてくる。クロもまだ休んでいていいよ。」

「……そうか?じゃあ、何かあったら呼んでくれ。」

 そう言ってクロはまた布団へ戻った。昨日連れまわしたせいか、3人ともとても疲れている。僕は普通に勤めていた時には、徹夜でそのまま通常出勤なんてことがたまにあったので、このくらいの睡眠時間でも意外と平気だ。それに、僕が力を使っているというよりは、3人の精霊たちの力を使っているのだ。実際に疲れるのは彼らなのだろう。

 さて、僕はゲートを開いて外へ出る。誰にも見られないように東京上空へ出た。東京の夜景は、上空から見ると静かに寂しく夜明けを待っているように見える。

「まずは、中部支部か。」

 僕はスマホで中部支部の人に連絡を入れる。黒スーツたちは24時間営業なんだな。ありがたいが大変だ。

「よし、では長野駅まで出発しますか。」

 待ち合わせた場所は長野駅。僕は東京上空から長野駅に向かって飛んでいく。

 なぜ一人で支部に行こうとしているのか。実は昨日ひらめいた。僕が各支部に行けるようになっておけばユーリを連れて行ける。ユーリは、連れて行かれたその場所だけ記憶しておけば、ゲートで移動できるようになる。僕は空を飛んで行けるから、わざわざ公共交通機関を使わなくて良いし、時間もかからない。こんな簡単なことを何で思いつかなかったんだろう。まぁ、昨日の飛行機の旅はなかなか面白かったし、道中立ち寄った場所も覚えられた。ファーもユーリに言葉遣いを教わることができたから、悪くはなかったけどな。

 ……あともう一つ、確認したいことがあった。

 僕はシロとクロとファーが近くにいなくても魔法を使うことができて、彼らは、すでに僕から独立して活動できるのではないか、と考えている。昨日も、3人を仙台空港に残して部屋に戻り、再び仙台空港に戻ることができた。魔法が使えるのが彼らとの距離なのか、それとも、近くにいなくてもお互い魔法を使えるのか試しておきたい。戦闘の時は、シロもクロも僕を守るためにストップとリバースを使ってくれているから近くにいてもらわないと困るけどな。今までは離れると人型から猫に戻ってしまったり、消えてしまったら困るので、出かけるときは常に一緒だったけど、離れても大丈夫なら、彼らも僕の行動に縛られることなく活動できるようになる。

 長野駅に着くと、黒スーツが待っていた。仙台と東京間で魔法が使えたんだ。長野までは飛べると思っていた。早朝のこの時間は良いな。誰もいないから制服のまま活動できる。僕は中部支部の待合室を覚えると、すぐ次の場所へ向かう。まだみんな寝ている時間だから模擬戦も挑まれない。支部の人との挨拶は今日ユーリを連れてからにしよう。

 僕は中部支部の後、近畿支部、中国支部、四国支部を巡った。四国まで離れてもまだ飛ぶことができる。飛べるということは、試せないけどおそらく魔法も使えそうだ。このまま九州・沖縄支部へも行ってしまおう。


 ピピピピッピピピピッ


 目覚まし時計が鳴る。

「ファー、朝だよ。コタロー起こしに行くよ。」

 もぞもぞ動いたが、ファーはまだ寝ている。

「しょうがないなぁ。私一人で起こしに行ってくるか。」

 大きな欠伸をしながら、シロはコタローの部屋へ向かった。


 トントン


「お、シロ、おはよう。」

 ドアを開けると、シロが驚いた表情で僕のことを見ている。

「……コタローが起きてる。」

 最近は、シロが起こしに来てくれるから目覚まし時計がいらない。魔法を使うせいなのか、一旦眠るとなかなか起きることができないから、シロが起こしてくれるのはありがたい。クロは同じ部屋で寝ているが、クロも起こされないと起きない。クロはしっかりしていそうでダメな部分がある。

「さっきラクさんに会ったけど、今日の夜は演習場で魔法の練習をするそうだ。だから、夜までにはユーリを残りの支部に連れて行く。」

「そりゃまた、ハードだねぇ。」

 シロは眠そうに目をこすっていた。

 九州・沖縄支部から戻ってきて間もなくラクさんに会った。朝から制服を着ていた僕に不思議そうな顔をしていたので、九州・沖縄支部に行って来たことを話して、『ゲート』のことも説明した。ラクさんには『ゲート』の持ち主は、九州・沖縄支部の人だと話をしておいた。

 準備ができ次第、僕たちはユーリと合流した。

「おはようございます。コタローさん。」

「おはよう、ユーリ。じゃあ早速行こうか。」

 そう言うと僕はゲートを開く。

「このゲートはどこに繋がっているのですか?」

 ユーリに質問されたが、早朝に各支部に行って来たことはまだ誰にも言っていないから、シロとクロとファーも不思議そうに見ている。みんなの驚く顔を見てみようじゃないか。

「中部支部だ。」

「え?」

「は?」

「ふぇ?」

 おお、見事に僕の精霊たちは驚いてくれた。

「ふふっ。実はみんなが寝ている間にすべての支部に行って来た。」

「だから部屋に行ったら起きてたの?」

 そうだ、その通りだ。実は、九州・沖縄支部の黒スーツがのんびりしている人で、なかなか待ち合わせ場所に来てくれないものだから、部屋に戻るのがシロが起こしてくれる時間ギリギリになってしまったのだ。早く帰れるなら少し寝たかった。

「コタローさん、休まなくて大丈夫ですか?」

 ユーリが心配そうに見てくれている。

「ああ、何も問題はないよ。じゃあ行こうか。」

 その後、各支部を回るのはあっという間だった。各支部の支部長に挨拶をして、模擬戦を挑まれたら「シャイニングアロー」で蹴散らして、昼頃最後の九州・沖縄支部に到着し、たらふく沖縄料理を味わってきた。

「ユーリ、お疲れさま。」

「はい。コタローさんのおかげでずいぶん簡単に行けました!本当は電車とか飛行機で旅をするのも楽しみだったのですけど、私たちはいざという時のために待機していないといけないですからね。」

「そうだね。……ユーリ、何かあればすぐに僕のところに来てね。」

「?昨日も言っていましたけど、『何かあれば』ってどんな時ですか?こちらでアンノウンが暴れたりしたら私は他の戦士の方と共に戦うことになりますが、そう言うことではなくて?」

「たぶん、ユーリの属性は敵にとって不都合だ。奇襲をしてもすぐに応援を呼べるし、簡単に逃げられてしまうからね。昨日ロザが埋められている場所に行ったときに敵の気配を感じた。同じように敵も僕の気配を感じているはずだ。どうやってその場に来たのかもおそらくわかっているだろうから、僕が『ゲート』のような瞬時に移動できる手段を手に入れたことも把握していると思う。その持ち主が君だとわかれば、敵に狙われる可能性が高い。だから、敵の襲撃を受けた場合は、すぐに僕のところに来てほしい。」

「そう言うことですか。わかりました。私は攻撃魔法が使えないですからね。」

 そう言ってユーリは苦笑いをしていた。

「それじゃあ、ユーリも東北支部で頑張ってね。」

「ありがとうございます。王にもよろしくお伝えください。」

 僕はゲートで自分の部屋へ帰った。『王』ね。昨日眠っている時に話しかけてきたけど、ネセロスの力は回復してきているのだろうか。それにしても、今日は早朝から『ゲート』を繰り返し使っているが、僕の魔力ゲージはほとんど減らなかった。それはネセロスが回復してきているからなのだろうか。他のエーワンメンバーはどうなんだろうな。同じように力を付けているのだろうか。今日の夜みんなに会うから確認してみよう。


「シロ、クロ、ファー、僕はちょっと昼寝するから出かけてきてもいいよ。」

「「「……え?」」」

 3人とも驚いた表情でこちらを見ている。

「だって、今朝僕は一人で沖縄まで行って来たけど、みんな僕が離れても平気だったでしょ?ずっと僕と一緒にいなくてもいいんだよ。好きなところ行っておいで。」

 そう言うと、僕は自分の部屋に入り布団に入った。


 コンコン


「コタロー、そろそろ演習場行かないとだよ。」

 ふと時計を見るとすでに18時だった。

「ああ、ありがとう、シロ。起きるよ。」

 布団から出てまた制服に着替える。部屋を出ると、シロもクロもファーも制服に着替え準備は万端だった。

「みんな、どこか行ったのか?」

 良く寝ていたのか、出かけた音は記憶にない。

「行ってないよ。」

「やっぱりコタローと一緒がいいよね。」

「俺は本を読んでいた。」

 なんだ、みんな出かけなかったのか。好きにしていいよって言ってもどうしたらいいかわからないかな。もっといろいろな所に連れて行ってあげないとな。

「じゃあ、演習場に行きますか。」

 その前に…僕は紗奈さんの部屋へ向かった。


 ピンポーン


「あれ、コタロー君。どうした?迎えに来てくれたの?」

「紗奈さん、今日みんなに報告しようと思っているのですけど、紗奈さんには先に話しておこうと思いまして……。」

「なになに?俺に相談事?」

「いえ違います。」

「コタロー君、否定するのが早すぎるよ。」

「実は、今日中部支部に行ってきまして、『ゲート』という魔法をメモリさせてもらったんです。」

「『ゲート』?」

 僕は紗奈さんに『ゲート』の説明をした。紗奈さんには中部支部の人と説明した。

「ほほーう。で、なぜ俺に先に教えてくれるんだい?」

「『ゲート』の持ち主をそのうち紹介することになると思いますが、女性なので紗奈さんには手を出さないようお願いしに来ました。」

「……そうか、そう言うことか。女性なのか。」

「……紗奈さん?頼みますよ。では先に演習場に行っていますね。」

 僕はその足で銀次さんの部屋へ向かった。


 ピンポーン


「はーい。あれ、コタローさん。どうしたの?」

「銀次さん、今日みんなに報告しようと思っていることがあるのだけど、銀次さんには先に話しておこうと思って……。」

「何でしょう?私に相談事かな?」

 紗奈さんと同じ反応だ。

「いや、そういうわけではなくて、実は今日近畿支部に行ってきて、『ゲート』という魔法をメモリさせてもらったんだ。」

「『ゲート』?」

 紗奈さんに説明したように銀次さんにも説明した。銀次さんには近畿支部の人と説明した。

「便利そうな魔法だね。それで、なぜ私に先に報告したの?」

「そのうち紹介することになると思うけど、実は、『ゲート』の持ち主が女性なので、紗奈さんがちょっかい出さないようにこっそりお願いしようと思って。」

「あ!そういうこと。」

 紗奈さんごめん。銀次さんに内緒にしてもらう理由として丁度よかった。まあ、半分くらいは本当の理由だけど。

「じゃあ、僕は先に演習場に行っているから。」

「はい。私もすぐに行きます。」

 そう言うと、銀次さんは準備のため部屋の中に戻った。


 さて、演習場に行くと木村さんとユキとシュウ君が待っていた。

「シュウ君!大丈夫かい?嫌な思いしていないかい?」

(コタローくん!大丈夫ですよ。ユキちゃんの所も快適です。)

「両親にはまだ会えないよな?」

(そうですね。この姿だし、ぼくも会うのはちょっと気が引けると言うか……)

 本当に会わせることが必要なことなのだろうか。シュウ君が気にしているみたいにご両親はこの姿を見ても我が子と認識してくれるのだろうか?

 ちょっと困惑しているようなシュウ君の顔を見ながら考えていると、次第にみんな集まってきた。

「では、今日の模擬戦ではパートナーとの連携魔法の強化を行っていこうと思う。」

「はい!」

 ユキが説明を始めると、僕は勢いよく手を挙げた。小学校時代だってこんなに勢いよく手を挙げたことはなかったのに。

「コタローどうした?」

「実は、『ゲート』という魔法を手に入れました。これを使えば戦闘中に敵に奇襲をかけられますし、逃げることも応援を呼んでくることもできます。『ゲート』を使った戦闘の練習もしてみたいのですが……。」

『ゲート』の話を聞いても誰も驚かないし説明を求めない。それはそうだ。事前にみんなに一人ずつ説明してあるんだ。でも、「他の人には内緒」で話をしたのだから、もう少し知らないふりをして欲しいものだ。

「えー、『ゲート』は僕の知っている場所や人のところへ瞬時に移動できる魔法です。」

 仕方ない。みんな知っているけど説明を始めた。

「例えば……」

 僕はゲートを開いた。フクさんの近くに出口のゲートが開かれる。ゲートをくぐるとフクさん近くの出口のゲートから僕が現れる。

「「「おおっ!」」」

 説明はしてあったけど実際に移動するところを見せたのは初めてなので、みんな驚いてくれた。

「こんな感じで移動できるので、例えば敵の背後に攻撃の要であるフクさんやラクさんを移動させたり、魔法の移動もできるので、敵の魔法をどこか空高く移動させたりもできます。」

 そう言うと次のゲートを開き、僕はみんなの上空に移動して、そのままふわりと降りてきた。

「なるほどね。攻撃にも防御にも使えるのか。」

「これは、連携難易度高いなぁ。」

「『ゲート』の持ち主は、他の戦士たちとうまく連携して使っていました。」

「わかった。では、『ゲート』の練習も含めて、連携魔法の強化をしていこう。練習には敵が必要だな。僕が相手になろう!」

 いやぁ、ユキさん。張り切っていますね。一人称が「僕」になっていますよ。

 それから、ユキを相手に『ゲート』を利用した戦闘訓練が始まった。ユキは僕たちの属性を持っているから基本攻撃は通用しない。だから思いっきり戦えるのだけど……やはり初めてだと連携がうまくいかない。ユキの隙を付くようにフクさんやラクさんを移動させるけど、フクさんやラクさんの準備ができていなかったり、逆に僕がゲートのタイミングを間違えたり……。これはうまく使えるようになるまで時間がかかりそうだ。


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