プロローグ
2036年7月7日、東京上空に無数の流れ星が流れ落ちていった。それは様々な色をしており、夜の空に映し出される光の線はそれはそれは美しかった。そのうち、二つの流れ星がまっすぐではなく大きく回転しながら自分のもとへ近づいてきた。流れ星はあんなにも眩しく空で輝いていたにも関わらず、近づいてくるととても小さく、僕が手を出すと二つの光はゆっくりと手のひらに収まり、そのまますっと消えてしまった。これはお洒落な七夕の演出だろうか。東京ってすごいなと田舎出身の僕は思った。なんにしても、仕事で疲れた体に若干の癒しが加わり気分が良くなった。今日は酒に頼らずゆっくり眠れそうだ。
翌日、世間では昨日の流れ星の話題でいっぱいだった。流れ星は東京だけではなく日本各地で目撃されていた。SNSでも相当騒がれているが、同じ時間同じ場所にいた人でも見た人と見えなかった人がいたこと、写真や映像では一切残らなかったこと、星は流れただけという人もいれば、僕のように近づいてきて消えたという人もいた。そもそも流星群なんて現れる予定はなかったし、あれは宇宙人から攻撃を受けたんだとか騒いでいる人たちもいたが、特に異変も起きていないことや、証拠が一切残っていなかったため、この話題は間もなく終息を迎え世間は忘れ去っていった。