9話
静寂が部屋に満ち満ちている。
真っ白な天井、壁、床、調度品、質素だが清潔な部屋に、少しの物音もしない。
先ほどからぽかーんとしていたメイリーンだが、気を取り直して、マクロンに質問をした。
「5属性というのは…それは多いのでしょうか?」
メイリーンの言葉を聞いた途端に、それまで呆然としていた状態から、サッと強張ったマクロンの顔を見ると、ただ事じゃないのだとすぐに理解できた。
「もちろんです。メイリーン様。建国の祖である初代国王が4属性だった他、この1000年の間に賢者や魔術師ら3人が4属性でした。
しかし、5属性というのは聞いたこともありません。現在の宮廷魔術師のトップですら、3属性です。」
「えええ・・・。」
歴史上初とは、ずいぶんとやっかいなことに巻き込まれたものだ。
せっかく、今度こそのんびりと過ごしたかったのに・・・と、メイリーンはドン引きしながら聞いていた。
忙殺されて体力が尽きるだけの平日や、体力回復にいそしむついでに少しだけ漫画を読む休日。
周りは恋愛どころか、結婚の話をしている中で、新しい出会いすらおっくうに感じる自分の気力の無さにがっかりしながら、受け入れ続けた日々。
自分はなんてだめな人間なんだろうと思いつつ、プライベートが怠惰だろうが、仕事をこなして自活しているのだからもういいじゃないか、という気持ちにもなっていたあの日々。
内向きの思考の癖がまだ抜けないのか、せっかく転生したのに、前向きになれないのだった。
もちろん、実際には魔法全属性の付与も史上初であるし、神様から直接洗礼の儀を受けたことも、長きにわたる中でも過去に1人、2人程度で、かなり光栄なことなのだが。
神様がその1人、2人の経験と照らし合わせて、気前よく振舞った結果が、魔法の全属性付与なのだ。
「いいですか、メイリーン様。これは、神様が貴女に課した天命なのです。この天命が何かはまだわかりませんが、史上初の存在として、この比類なき能力を発揮するために、
不足かもしれませんが、まずは私が身を粉にして、魔法をお伝えいたします。」
マクロンが一歩、二歩と近づき、熱のこもった視線で切々と語りかけてくる。本当に嫌だ。逃げ出したい。でも、この熱気を前にしてそうは言い出せない。
もっと楽しそうな感じで魔法を習いたかったけれど、もうだめなのかな。あああああ。懐かしい、久しぶりに追い詰められたこの感じ。
「・・・よろしくお願いいたします。」
はあああああ。自分自身に負けた。とりあえず、よろしくお願いしちゃった・・・。悲しい。しかし、これはしんどい。
ハッとして、思いついたことを試そうと思った。
「シスター、先程の属性付与の感謝を込めて、神様へお祈りを捧げたいのですが、案内いただけないでしょうか。」
「もちろんご案内いたします。素晴らしいお心がけですね。」
シスターが嬉しそうに微笑んでいらっしゃるけれど、私は苦笑して答える。私にそんな殊勝なお心映えはない。
ちらりとマクロンを見てみると、にっこりしながらうなずいていた。
「こちらへどうぞ。」
シスターについて部屋を出て、祭壇の前にいく。
祭壇は白くてつややかな石を彫って作っているようだ。大理石のような艶のある綺麗な石だ。
中央には、ギリシャ神話のような恰好をしたキリリとした顔の青年が彫ってあった。
あの少年神よりも10歳は年上に見えるが、同じとも言えない顔立ちに少し戸惑いを覚える。
とりあえずは、お祈りをしなければ。
洗礼と違い、手を水に浸す必要はないらしく、そのまま立ってお祈りを捧げる。
意を決して、うつむき、両手を胸の前に組み、目を閉じる。
すると、また眩しい光をまぶたに感じながら、目を開けると、真っ白な世界に囲まれていた。
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