78話
ふかふかの広いベッドにさらっとした触り心地の上質なシーツ。大きな枕がいくつか並び、寝返りを打つ頭をしっかりと受け止めてくれる。
侯爵家の寝具は国内でもトップクラスの極上品なのだった。
メイリーンは、昨晩開催された王城での新年祝賀パーティーを無事に終えて、屋敷の部屋で待っていたシロちゃんを抱き抱えて眠りについた。
初めて会ったときには小型犬サイズだったシロちゃんは、今はもうすぐ中型犬にさしかかるほどに成長していた。
相変わらず可愛らしいくりくりの瞳と、ふさふさした白い毛並みがメイリーンの癒しだった。
親友とも言えるシロちゃんの存在が無ければ、メイリーンは社交デビューでもっとストレスを貯めていただろう。
丸くなって寝ているシロちゃんを視界に捉えながらも、少しだけ薄く開けた目を再び閉じて、メイリーンは二度寝をしたのだった。
◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
王城帰りで疲れているから寝かせておこうという両親の気遣いにより、いつもより遅い朝を迎えたメイリーンは食堂で一人遅い朝ごはんを食べて、その後も自室でまったりとお茶を楽しんでいた。
ふと気まぐれに昨晩のことを思い返してみる。
久しぶりの王城は相変わらずキラキラとしていて美しく、集まった貴族の装いも美しく、なにもかもが幻想的な世界だった。
おいしい食事に心を奪われて大量に食べていたら、両親に驚かれたので咄嗟に「屋敷で食べるためにメニューの研究をしている」と言ったことで、料理をする口実が得られた。
ここまでは良い。
しかし、ここから先が問題だった。
国王陛下ら王族に短い挨拶をしに行ったところ、何故か王子たちに無言でガン見された。
とりあえず国王陛下に視線を向けることでスルーしたが、何かあったのだろうかとそわそわしてしまうほどに居心地が悪かった。
そして、挨拶の終わりに、国王陛下から父親である侯爵に、「また招待状を出す」という言葉があった。
…がっかりである。非常にがっかり。
メイリーンは王城に特段のこだわりもない。
屋敷で料理して、剣を振り回して運動して、知らない魔法を使えるようになって、食事は親と食べて、夜にはシロちゃんと寝る。
そんな幸せな日々が大好きなのであって、王族のご機嫌を取ったり、貴族に噂されたりして過ごしたいわけでは無い。
しかも、前回の昼食会後、いくつかの貴族たちはマクロンに群がったらしく、だいぶ迷惑をかけてしまったと聞いている。
「まあ、でも…。お父様とお母様のためになるなら、やらねば…。」
少し暗い目をして、そう自分に言い聞かせるのだった。
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