73話
絢爛たる白亜の城の一室に、少年がそわそわと落ち着かない様子を見せていた。
豪華な衣装を身に纏い、艶やかな髪を後ろへと流している。
最も次期皇太子に近い男、アウグスト王子は現在、十三歳だ。
そして、あと数ヶ月後には十四歳になる。
思春期真っ只中の高貴なる少年は、一人の年下の美少女のことで頭がいっぱいだった。
「久しぶりに、久しぶりに会えるのだ。」
何やらぶつぶつと呟いては、立ったり座ったりと、落ち着かない様子を見せていた。
「ミラ、まだか。」
「はい、王子殿下、まだでございます。」
「そうか…。」
「まだ、大広間に行く時間ではないのか?」と、もう三回目も確認を受けている王城メイドのミラは、アウグスト王子のいつもと違う様子に内心驚きながらも、平静を装って、丁寧に応対していた。
アウグスト王子は、弟たちが生まれてからはずっと自制心を持って行動するように躾けられていた。
そのため、メイドにも不要な干渉はして来なかった。
それが、今日に限って些かしつこいほど話しかけてくるのだ。
コンコンと、ノックの音がして、ミラとは違うメイドが入ってきた。
アウグスト王子がはっとして、即座に扉を見ると、そこにはフェルディナンド王子とエドゥアルト王子が立っていたのだった。
アウグスト王子は思わず、はあと息を吐いた。
「なんだ、お前たちか。」
「お兄様、なんだとはなんですか。」
「そうですよ。まったく、僕たちはお兄様に会いたくて来てるのに。」
「お、おお。すまなかったな。入場の出番を知らせに来たのかと思ったのだ。」
「…お兄様もやっぱりメイリーン嬢に会いたいのですか?」
アウグスト王子にそっと近づいたフェルディナンド王子が小声でそう問いかけた。
「なっ。ま、まあな。あれ以来、剣術の訓練をするたびに思い返しているよ。あんな動きは騎士団との練習でも見たことがないからな。」
「ええ。格好よかったですよね。」
「僕も出来るようになりたい。」
「うん…。そうだな。しかし、また一緒に訓練するにしてもお父様からの許可がないと難しいからな。」
「そうですよね。しかも、貴族令嬢に指導をお願いするなど許されそうにもないですね。」
「ああ。さすがにな。」
「どうしたものでしょうね…。妙案がほしいものです。」
「焦っておかしなことを口走るわけにもいかない立場だからな。」
「ええ。まずは当たり障りなくお茶会ですかね。」
「えー、剣の訓練の方がいいのに。」
「エド、そう無理を言うな。」
「はい…、お兄様。」
わちゃわちゃと話し合う三兄弟は、いまだ出番の回ってこないパーティー会場に向けてため息をつくのだった。
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