63話
広々とした正方形の空間の、その中央に数名が集まっている。
訓練場の持つ凛とした静謐な空気と、そこで注目を集める美しい少女の凛とした風貌が相まって、いささか張り詰めたようにも見える。
メイリーンはそのまとめ髪の影響で、幼い顔が周りからよく見えていることに、そしてその場にいる全員からじーっと見られていることに気がつかないほど、集中力を高めていた。
メイリーンはまだ小さな身長ではあるが、人形のように完璧に整った顔立ち、滑らかで透明感のある肌、集中して少し赤くなった頬、金糸の刺繍がほどこされた美しい衣装、そのどれもがメイリーンを神秘的な存在に思わせた。
「すう…、はあ…。」
小さな音ではあるが、呼吸を整えようと深く息を吸って吐く。
メイリーンは両手で宝剣を持ち、先ほどと打って変わって、真剣な表情でその感触を確かめた。
「すう…、はああ…。」
呼吸を整え終わるやいなや、自らが立つ方向の前を向き、目にぐっと力を入れる。そして、型をひとつひとつ、力強く決めていった。
「ひっ…。」
声を漏らしたのは騎士団長だろうか。
先ほどのメイリーンよりもはるかに動きが良くなり、まさに歴戦の戦士かのように力強く、その動きの正確性は高くなった。
こんな才能を隠しておくだなんてできない。それどころか、自分も敵わない存在ではないかと小さな少女に向けて、ありえないような思考に捉われて、どっと冷や汗をかいたのだった。
王子たちは当初彼らが予想していたような可愛らしい動きは一切ないことに驚いたのちに、徐々に、そのキレッキレな動きの格好良さと己と圧倒的に違う存在を、物語のヒーローみたいだと胸を熱くしてみていた。
今、目の前で一体なにが起こっているのか、彼女の動きをつぶさに見たいと目を皿にしていた。この瞬間、三兄弟は完全にメイリーンのファンになっていた。
そして、メイリーンの父親であるスチュワート侯爵もまた、娘のまさかの剣術の才の開花によって、感動と喜びに大いに浸っていた。
娘は誰とも違う素晴らしい存在だ、そう、常識とかけ離れた事態も親バカなら簡単に納得が行くのだった。
そんなそれぞれの思惑を超えて、型を行うメイリーンは宝剣に魔力を込め始めた。
宝剣を彩る大きな宝石が淡く光り、徐々に色味を増した。
「シャラララララララー。」
宝石が輝き、光がメイリーンを照らすなら、宝剣はその美しい音色を広い空間いっぱいに鳴り響かせたのだった。
「う、美しい…。」
メイリーン以外の全員の思いはその美しさゆえに一致したのだった。
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