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62話

一般的な成人男性よりも頭ひとつ大きい身長、広い肩幅、そして鍛え上げられた強靭な肉体。子爵という貴族では中堅どころの爵位ではあるが、その圧倒的な存在感と実力で騎士団長に任命されたカラーナは、天真爛漫な美少女のメイリーンの手綱を全く握れずにいた。



「型?知ってるー!やってみまーす☆」みたいなノリで、練習用の剣を構えて振り始めたメイリーンは、すぐに楽しくなって真剣に型を披露していったのだった。


小さな女の子がひとつひとつを丁寧に、それでいて次々と流れるような所作で披露する様はまるで舞を踊っているかのようで、その場にいる全ての人の視線を一手に集めていたのだった。



「うう…。しまった…。なぜこんなことに…。」



自身の計画と全然違う展開にカラーナ騎士団長が小声でうめく。こうなってしまった以上は、もうどうしようもないのではないかと思うが、そうは言ってもどうしていいかとっさにはわからない。



そんな悩める騎士団長に向かって副騎士団長が歩み寄ってきた。



「団長、どうしたんですか?」


「いや、型を教えようとしたら、できるから見てほしいと言われてこうなったんだ。」


「はあ…。あてが外れましたね。で、どうします?」


「申し訳ない。本当にどうしたものか。彼女の剣の能力で王子たちがやる気を失わないといいのだが。」


「そうですよね…。」



ふと、王子たちを見ると、元いた場所にはおらず、メイリーンの近くに集まっていた。

そして、キラキラした目で舞うような動きのメイリーンを見て、王子たちはそれぞれに感想を言い合っていた。


メイリーンは、ひと通り覚えた型をやりきったところで、動きを止めた。チートなHPのおかげで、これくらいのことでは呼吸の乱れもない。



「素晴らしいな、メイリーン嬢。」


「本当ですね。こんなに美しい剣の所作は初めて見ました。」


「ぼくにも教えてほしい!」



王子たちが口々に褒めそやす。メイリーンは、にっこりと微笑み、お礼を言った。

その様子を見ていた騎士団長たちは、助かったと安堵した。


しばらく質問攻めにされた後、王子たちの興奮が収まったところで、メイリーンも自身の知らない型について教えてもらい、交流を深めた。


その様子を父親であるスチュワート侯爵は、微笑ましく思うとともに、また一段と王族との婚姻が近くなったと寂しく思うのだった。


そんな和やかな雰囲気の中、フェルディナンド王子が提案を投げかけた。



「メイリーン嬢、宝剣を持ってきているようでしたら、振ったところを見せてくれませんか?」


「う、ごほごほっ。」


「アウグスト王子、大丈夫ですか?フェルディナンド王子、私の拙い型でよろしければ、お見せいたします。」



そして、メイリーンは宝剣を手にしてにっこりと笑うのだった。

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