61話
高貴なる王族の子息たち三名が、ゆっくりと型を披露していく中で、騎士団長はそれよりもメイリーンの説得をせねばと背中に冷や汗をかいていた。
まずは、王子たちの型を褒めつつ、メイリーンとスチュワート侯爵に向かって、「この年齢でこの完成度はなかなかのものなのです。」と繰り返し繰り返し、しつこいくらいに言った。
メイリーンも、スチュワート侯爵も、なんだかやけにしつこいなとは思ったが、王族に対してはこれくらい過剰でもおかしくはないと受け入れていた。
メイドに頼んで急遽呼んだ副騎士団長と騎士二名が来ると、騎士団長はまたしても休憩を言い渡して、訓練場の隅で彼らに事情を明かして協力を要請した。
「えええ。団長、本当ですか?あんなに小さな女の子が?」
「こら、口の利き方に気を付けろ。相手は侯爵令嬢だぞ。それにしても、団長、本当ですか?とてもそういう感じには見えません。」
「…気持ちはわかる。しかし、そこらの子どもの比ではなく、武芸に熟練した者のような素晴らしい素振りだった。王子たちのやる気を引き出すようにと国王陛下から指示を受けている以上、このままではまずい。」
「それでは、どうするのですか?お嬢様は見学ですか?」
「…いや。それも良くないだろう。彼女は参加するとアウグスト王子と話していたからな。
そうだな。私が型を教えて、それを王子たちに披露しよう。彼女が型を覚えるまで、王子たちの指導は頼んだぞ。なるべくゆっくりと教えるからな。」
「はい。」
「わかりました。」
「承知しました。」
「…無事に終わらせよう。とにかく昼までが勝負だ。」
そうして、騎士たちはそれぞれの役目へと向かった。
副団長たちが王子たちの型披露を褒めまくり、王子たちが調子に乗っているのを横目に、騎士団長はメイリーンのもとへ歩いて行った。
「メイリーン嬢、先程の王子殿下がたのような型を、私から教えたいと思います。」
「はい。ありがとうございます。アウグスト王子がなさっていた中でいくつか見たことのない型があったので楽しみです。」
「えーっと。それでは他の二人の王子の披露した型はもうご存知なのですか?たしか二年ほどかけて習得するものなのですが。」
「そうなのですか?では、おそらく私はまだ付け焼き刃ですね。少し行いますので、見ていただけますか?」
「え?は、はい。」
メイリーンは立ち上がり、しっかりとした足の踏み込みとともに、訓練用の剣を振りかざして、型と呼ばれるポーズを流れるように行った。
八歳の美少女が振るう丁寧で美しい剣さばきに、騎士団長が気がついた頃には、訓練場の全員が見惚れていたのであった。
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