60話
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大人数を収容できる広々とした王城の訓練場は、十時ごろの穏やかな午前中に数人を集めて贅沢な使われ方をしていた。
高貴な子供が四人、訓練用の剣を持って素振りをしている。
王子たちはそれぞれに真剣に取り組んでいた。
とりわけ、長男のアウグストは、騎士団の練習に混ざることがあるという自負から、いくらメイリーンという客がいようとも、一心不乱になって素振りをした。
次男のフェルディナントは、普段は読書家で穏やかだが、王族として課せられた剣の訓練は同い年の貴族たちに負けぬようにしっかりと取り組んでいる。
そして、三男のエドゥアルトは、己の好奇心を満たすために読んだ冒険譚や、騎士団の勇ましい姿から剣に憧れて、まだまだ剣筋や型は荒削りで甘い仕上がりだが、とにかく熱中して行っていた。
その隣で異色を放つメイリーンも、剣はここ三ヶ月という浅い経験だが、宝剣を手にしてからはすっかりはまってしまい、エドゥアルト王子ではないが、冒険物語の主人公さながらの気分で剣を振っている。
ステータスがチートなのもあって、本人的には習い事気分のお気楽なものであった。
そして、近くに控える騎士団長はあまりの事態に頭を悩ませていた。
四人の子供たちの中で、メイリーンだけが突出して、達人のような剣捌きなので、今日の訓練が王子たちのやる気を引き出すどころか、心が折れてしまうのではと危惧していた。
騎士団長は、もちろん初対面のメイリーンには慣れていないので、家庭教師のマクロンのようにすぐに事態を受け入れることも出来なければ、プランの立て直しにも時間がいる。
いつまでも素振りをさせるわけにはいかない。そう思って、一旦、高貴な子どもたちに休憩を取らせることにした。
「皆さま。素晴らしい素振りでした。一旦、休憩を取っていただき、飲み物を飲んでくださいね。」
各々がうなずいて、休憩に入り、歓談している様子を騎士団長はしっかり見ていた。
そして、「よし。ここはひとつ、メイリーン嬢に現状を理解して手を抜いてもらおう」と作戦を立てたのだった。
そして、協力者としてスチュワート侯爵を巻き込もうと思い至った。
「では、王子殿下がたは、いつもの通り、型の練習に入ってください。メイリーン嬢はこちらへ。初めてだと思いますのでまずは私が解説いたします。」
騎士団長は、メイドを呼び、自身が信頼する副騎士団長と騎士二名の名を挙げて、急いで連れてくるように頼んだ。
そして、メイリーンとスチュワート侯爵に席を勧めて、自身もその隣で型の解説を始めるのだった。
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