6話
教会で洗礼を受ける日が来た。
「お父様、お母様、いってまいります。」
「ああ。気をつけて行ってくるんだよ。」
「いってらっしゃい、メイリーン。」
両親に見送られて、私はマクロンとともに馬車で教会に向かった。
教会では事前にお父様から教会に手紙を出しているので、すんなりといくだろう。
御者によって、馬車が幾分かゆっくりとではあるが、道を走り抜けていく。
少しでも初めて目にする屋敷の外の景色を楽しみたいと、マクロンの存在を忘れて、じっと窓の外を見てしまう。
「フフッ。景色に夢中になる、そんなメイリーン様の可愛らしい一面を発見しました。」
「・・・まあ。」
少し気恥ずかしくなって、慌てて見えないようにゆっくりと座りなおすと、話題を変えるために、洗礼の手順を質問した。
マクロン曰く、洗礼は聖水に手をつけて、真摯にお祈りをすることで、魔法が使えるようになるそうだ。
あまりに簡単な手順で拍子抜けしてしまった。7歳まで洗礼を待つ意味があったのだろうか?
「お祈りの後で、メイリーン様が使った聖水を、特別な道具に移し替えることで、ご自身の使用できる魔法の属性も把握することができるのですよ。」
「魔法が使えるようになり、属性がわかったら、次はレッスンということですね?」
「ええ。その通りです。」
マクロンは何かを考えるように少しだけ窓の外に目をやった後、私に真剣な表情で話しかけてきた。
「通常は10歳から12歳あたりで洗礼を行うことが多いのです。
これはなぜかと言うと、仮に強力な魔法を使えた場合に、その者の思考が幼いと、魔法によっては周囲への危険を及ぼす可能性がわからない場合があるからです。
メイリーン様は、貴族として市井の民よりも高等な教育を受けています。また、賢さと思慮深さが大人並みにあります。それゆえに、早期の洗礼になりました。」
言葉を区切ると、マクロンはさらに10cm程、顔を寄せてきた。
切れ長の瞳は近くで見ると潤いがあって綺麗だった。
「もうお分かりかと思いますが、もし火魔法などの攻撃性がある魔法が使えた場合でも、当面は1人でいる時に使わぬようにしてください。私が制御のお手伝いをしますので、しばらくはご辛抱くださるとお約束ください。」
マクロンがあまりの迫力で顔を近づけて約束を迫るものだから、私はギョッとして瞬時に頭を縦に振った。
「ええ。もちろんお約束します。」
私の言葉を聞いて、マクロンがにこっと笑うと、ちょうどよく馬車がスピードを緩めて、停止した。
なんだか、まだ数日しかつきあいの無いマクロンに圧倒されて、気持ちが疲れたような気がした。
男女問わず、美人のドアップは精神的に疲れるタイプ。




