55話
二階の窓から日光が差し込み、金色の髪が柔らかな光を放つ。メイリーンは朝食を終えた後に、メイドのシャーリーに髪を梳かしてもらっていた。
シャーリーは手慣れた動作でメイリーンの髪にブラシをあてて、丁寧に梳かしていった。そして、髪をいくつかのブロックに分けて、軽くリボンでまとめると、その一つを取って編み込んでいく。
朝食後に座ってまったりとしているメイリーンは、シャーリーに髪を委ねて、自身は紅茶を飲みながら考え事をしていた。
真剣な表情で、髪を編んでまとめていくシャーリーと、静かに紅茶を飲んでいるメイリーン。見目麗しい主従の穏やかなひと時であった。
そうしているうちに、シャーリーが手際良く、それでいて凝った美しい編み目のアップスタイルの髪型を作り上げた。
すべてはメイリーンに動きやすく、それでいて優美な髪型を提供するために、シャーリーはここ数日の間、メイリーンを見つめてはその髪型を考えていた、そんなこだわりの出来だった。
「メイリーン様、髪のセットは終わりました。問題がなければ、お着替えに移らせていただきます。」
「まあ、いつもよりまとまっていてとっても新鮮。これなら動きやすくていいかな。シャーリー、ありがとう。」
「お気に召していただけてなによりです。それでは次の支度に移りますので、少々お待ちください。」
メイリーンの満面の笑顔を直視してしまったシャーリーは、下唇の内側をぐっと力を入れて噛むことによってギリギリながら正気を保った。そして、メイリーンの衣装部屋へはけた瞬間、顔が緩んで、溶けるかと思うほど幸せそうな顔をしてしまった。
メイリーンには見せたくないが、シャーリーはメイリーンにデレデレなのであった。十秒ほどはにやにやが止まらず、その後、深呼吸を繰り返して平常心を取り戻した。主人を待たせてはいけないと内心で何度も言い聞かせて、ぐいっと背筋を伸ばす。
今日のこの日のために仕立てた、メイリーンの剣の訓練用の服を持って衣装部屋を出る。
メイリーンが擦り傷一つ作らないようにと、普段がよりは厚くしっかりした生地だが、動きづらくないようにきっちりと採寸して服を仕立てていた。
女騎士の正装ようなフォルムだが、貴族の華やかさや優美さも演出された特上の衣装であった。
それもこれも、親バカで過保護な侯爵夫妻が呼びつけたデザイナーと長時間に渡って話し合い、細かなチェックを受けた上でできた逸品だからだ。
「メイリーン様、準備が終わりました。いかがでしょうか。万が一心配な点がありましたら、予備の一着と変えますのでお申し付けください。」
「あら、着心地も思ったよりいい。それに、お父様とお母様がアドバイスくださっただけあって、格好良いデザインね。」
「ええ、三時間以上も話し合っておられましたね。」
「ふふ。忙しいはずのお父様まであんなに真剣になるなんて思わなかったかな。さて、披露にいきましょう。」
ぶんぶんに尻尾を振って近寄ってくるシロちゃんに、メイリーンは「ありがとう。行ってくるね。」と言いながら頭をなでる。シャーリーがいるから、シロちゃんは無言のままだが、そのキラキラした目から喜びが伝わってくる気がした。
そして、何より一番良い反応だったのは、談話室でメイリーンを待っていた両親だった。
父親も母親も口々に褒めてくれた上に、画家を呼ぼうと言い始めたので何とか止めるのに結構な労力を割いた。
そんなこんなで、支度が整い、メイリーンと父親の侯爵は、王城へ向かうのだった。
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