54話
雲ひとつない快晴の空に、湿度が高すぎない爽やかな風。もうそろそろ夏から秋に移りゆく予感がする、そんな空気を感じながら、メイリーンは部屋から窓の外を眺めていた。
数日前に王城から招待状が届いた。王子たちの剣術訓練を見て励ましてほしいといった内容だった。そこには、宝剣のことはひと言も書いてなかった。
しかし、両親が言うには、国王から下賜された宝剣を持たずに、剣の訓練に向かうなどあり得ないということだった。
もちろん、下賜された宝剣で訓練するわけにはいかないので、メイリーンのイメージに合わせて、細身の華奢な剣、レイピアも持っていく。宝剣ほどではないが、侯爵家が用意しただけあって、装飾として綺麗な彫り込みや彩色が見られ、また、性能も驚くほど良く、まさしく一級品であった。
王家の面々は、華奢で可愛い少女のメイリーンに、剣の腕前など求めてはいないのだが、メイリーンは宝剣を気に入ったせいで剣術が楽しくて仕方がないし、両親はメイリーンにめろめろなので、才能のある我が子を万全の状態で送り出したいと考えていた。
「メイリーン、剣がうまくなったね。」
「シロちゃん!ありがとう。」
「剣が風を切る音が鋭くなったと思う。」
「ほんと?嬉しい。音がなると格好良いよね!」
「うん。メイリーン、格好良いよ。」
もふもふフェンリルのシロちゃんが、丸いフォルムをゆらして、とことこと近づいてくる。
メイリーンは、シロちゃんを抱きとめて頭をなでる。
「王妃様にね、宝剣を振るうところを見たいって言われたの。私、結構体力があるし、これなら侯爵家の、お父様とお母様の役に立てるかもしれないから、気合いが入ってるんだ。」
「メイリーン、素敵な想いだね!メイリーンならきっともっともっと上手になるよ!」
「てへへ、シロちゃんありがとう。まだ始めて間もないからこれからもっと頑張るよ。」
メイリーンの心境を聞いたシロちゃんが、興奮気味に尻尾をぶんぶん振って、目をキラキラさせてメイリーンを見る。
シロちゃんの励ましの言葉にメイリーンも嬉しくて破顔して満面の笑みになった。
「よーし、シロちゃんのお墨付きをもらえたから、今日も訓練を頑張っちゃうぞ。お城に招待されたその日まで、ブンブンに剣を振っちゃうんだから。」
「いいね!メイリーン頑張って!私も応援してるよ。」
「ありがとう、シロちゃん!」
メイリーンは気持ちを込めてシロちゃんをぎゅっと抱きしめると、そのもふもふを堪能する。
そして、そろそろ剣の訓練に行こうと手を緩めた瞬間に、なぜだかシロちゃんの体がぽうっと光り、そのあと、メイリーンはぽかぽかとした温かさを感じた。
「え・・・?光って、体があったかくなった。」
「あれー?なんだろう。ぽわーって光りがでたね。」
メイリーンも、シロちゃんも、不可解な出来事に先ほどまでの威勢を削がれてしまった。
しばしあぜんとしていたが、結局よくわからないと二人して首を捻り、そしてメイリーンは訓練へと向かった。
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