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51話

輝くいくつものシャンデリアの美しい煌めき、優雅な演奏、着飾った多くの貴族たち、その美しい広間の中心地に構える王族たちの席へ、メイリーンと両親であるスチュワート侯爵夫妻が挨拶へと向かった。



「国王陛下ならびに王家の皆さまにおかれましては、ますますのご健勝をお喜び申し上げます。また、アウグスト殿下におかれましても本日は誠におめでとうございます。」


侯爵が口上の後に恭しく頭を下げたのに合わせて、侯爵夫人とメイリーンもそれに倣う。



「うむ。スチュワート侯爵と家族も元気そうで何よりだ。」


「スチュワート侯爵、お祝いの言葉をありがとうございます。」


「もったいなきお言葉、恐悦至極に存じます。」


国王ヨハンとアウグストが口々に返答して、それに侯爵が返す。いつもならその程度の会話だった。



「そうだった。メイリーン嬢、久しいな。あの剣はどうだ。なかなか良い剣であろう。」



まさかの衆人監視の最中に国王から話しかけられたメイリーン。しかし、うろたえて見せるわけにはいかない。これは、事前に両親、とくに母親から言い聞かされている。

万が一の場合は、にっこりと笑うことでわずかな時間を稼ぎ、その間に少しでも落ち着き、その後に堂々と答えるのだ。母親からは「余裕がなくとも、いくらでも余裕を見せるのが侯爵家」と指導されている。


メイリーンは、顔をあげて、にっこりと笑う。



「はい。お久しぶりでございます。あのような素晴らしい剣をいただきましたので、まだまだではありますが、いつか振れるようにと剣術を習い始めました。」


「おお。そうか。それは素晴らしい。なあ、ゾフィー。」


「ええ。」



国王ヨハンはおもむろに、王妃ゾフィーに話しかけた。

ゾフィーはメイリーンのほうにゆっくりと顔を向けてにっこり笑う。メイリーンは、何を言われるかわからない緊張で、すでに伸ばした背筋がさらに伸びたような気がした。



「とても素晴らしいですわ。いつかはあの美しい剣で華麗に舞う姿を見てみたいわ。メイリーンさん、しばらくしたら、息子たちの剣の訓練を見に来てはどうかしら。始めたてなら少しは参考になるかもしれなくてよ。」


「おお。それはいいな。どうだ、メイリーン嬢。」


「はい、私でよろしければ、ぜひお願いいたします。」


「良かったわ。誰かに見てもらったほうが、息子たちもやる気になるでしょうからね。」


王妃ゾフィーが嬉しそうにしているのを見たメイリーンは、相変わらずにっこり笑いながらも背筋に冷や汗が伝い落ちるのを感じ取っていた。なんてこったい。また王城に来なくてはいけなくなった。気まぐれか何か知らないけど、本気でやめてほしい!



「お父様、私が学院から戻っている日にお願いします。」


「そうだな。アウグストは騎士団でも鍛えているからな。メイリーン嬢の手本になるべく励むのだぞ。はっはっは。」


「はい。お父様。」



満面の笑みのアウグストの隣にいる、ほかの二人の王子もそわそわした様子でメイリーンを見ているが、教育が行き届いているのか、会話の邪魔をせずに黙っていた。



「ごほんっ。僭越ながら国王陛下、他の方々もご挨拶なさいますので、ご歓談は程々になさいませ。」



ジト目で苦言を呈す宰相ディーンに助けられて、スチュワート侯爵夫妻と、メイリーンは御前を辞した。



メイリーンは、どっと疲れを感じた。ふと、両親を見ると二人とも顔色が優れない。



「お父様、お母様、先程のお席でお茶でも飲みませんか。喉が渇いてしまいました。」


「ああ、そうだな。私もなんだか喉が乾いたよ。行こうか。」


「ええ。本当にそうですわね。それに座りたくなりましたわ。」



そういって連れ立って歩き、席に着いた。

両親はしばらくぐったりとしていたが、徐々に立て直したようだった。メイリーンもぐったりとしていたが、抜け目なくスイーツをメイドに持ってこさせていた。


しばらくの後に復活した面々は知り合いに挨拶してから、ほかの人たちよりも早く帰路についたのだった。

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