48話
この世界にない料理を作りたい!
と思い立ってさっそく料理長のもとへやってきたメイリーンだったが、結論として、料理をすることはできなかった。
メイリーンの頼みを聞いて良いか料理長が侯爵に尋ねたところ、慣れないことをして万が一切り傷や火傷でもしたらどうするのだと取りやめるように言われた。
それにもうすぐ王城で王子様の誕生日パーティーがあるのだ。傷だらけで登場しておかしな噂を立てられても困る。
そこで、メイリーンが自ら父親である侯爵のもとに向かい、直におねだりをしたところ、火や包丁を使わないなら料理をしても良いと言うことになった。
つまり、下ごしらえや、火を使う場面は、料理長か他のコックにしか頼めない。
彼らに工程の大半を任せてしまっては、とても料理したとは言えないだろう。
よく考えたら、食べたいからと言って、和食を作っても知識の出所が怪しまれそうだ。複雑な作業やスパイスを使い分けてもおかしい。あれこれと色々と考えた結果、メイリーンは子どもらしくて自分の食べたいレシピを見つけた。
それは、フレンチトーストだった。
切ったパンを牛乳、卵、砂糖を混ぜたものに浸してから焼いたら出来上がる。
そして、好みに合わせて蜂蜜を贅沢にかけるのだ。
いつものティータイムで食べるぎっしりとした食感のケーキもおいしいが、メイリーンは久しぶりにふわとろ食感を求めた。
そして、料理長につきそってもらい、持ってきてもらった材料を混ぜて、パンを浸す。
パンから卵液がしたたり落ちるのを確認して、熱したフライパンにバターを入れて、そこに先ほどのパンを置いてもらう。
バターの豊潤な香りがふんわりと広がり、幸せな気持ちになる。
そして、両面を焼いたら、お皿に盛り付けて、蜂蜜をかける。
料理長とともに食堂に移り、お願いして、試食に付き合ってもらうことになった。今後のアドバイスはもちろん、どんな反応があるのか、家族に渡す前にチェックするためだった。
そして、席についたメイリーンは、ナイフとフォークでフレンチトーストを切り分けて、たっぷりの蜂蜜とともに口に入れる。
頬張るとともに、じゅわあーっと旨味が溢れ出して、ふわとろの食感で口が満たされる。なんて幸せなのだろうか。
「うん!とってもおいしい!」
満足して思わず笑顔になっていると、目の前に座る料理長が驚いて固まっていた。
「あの、料理長?」
「メイリーン様!こんな食感の料理は初めてです。なんということだ。素晴らしいレシピですな。」
「良かった。お父さま、お母さま、シャーリー、シロちゃんにも渡したくて、それと、できればみんなに出来立てが行き渡るようにしたいの。どうしたらいいかしら。」
「そうですね。本日の夕食の最後にデザートとして出しましょう。そして、シャーリーたちは今食べさせましょうか。」
「ええ、お願いします。シャーリーはこちらで、シロちゃんはその後にわたしの自室で渡しますね。」
そして、またパンを卵液に染み込ませて、料理長に渡す。
その間に、シャーリーを食堂に座らせた。忘れていたけど廊下で護衛のジョンを見かけたので、ジョンもついでに座らせた。
そして、焼き上がったフレンチトーストを順に食べてもらった。
「メ、メイリーン様!あっかたくてあまくてふわふわでおいしいです!」
「わっ。すごいですね、ぷるぷるしてますよ。おいしい!」
「二人が喜んでくれて嬉しい。いつもありがとう。」
初めて食べるふわとろフレンチトーストと美少女の笑顔に撃破された二人だった。
そして、食べ終わるのを待って、シロちゃんの分を用意させて、自室に入った。
「シロちゃーーーん。料理作ったよ。焼くのだけ手伝ってもらったけどね!」
「メイリーンすごいね!んー、いい匂い。黄色いパンに蜂蜜がかかってるね。あまいもの、だいすき!」
「へっへーん。ほら、あったかいうちに食べて食べて。」
「うん。…お、おいしーい!なにこれ。あまい。おいしい。あまくておいしーーーい!」
シロちゃんは口の周りを蜂蜜だらけにして喜んでいた。どんなシロちゃんも可愛いけど、いつもの毛並みが台無しで滅茶苦茶に笑った。
なんだか、自分が食べるだけよりも嬉しい。作ってよかったとメイリーンは思った。
そして、夕食の最後に両親に小さめのフレンチトーストを出すと、二人も悶絶して喜んでくれた。
我が家に新しいメニューが加わった一日だった。
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