46話
良く晴れた空と、いつもより少しだけ気温が高くなり季節の移り変わりを予感させるような昼下がりに、またいつものメンバーでメイリーンの訓練を開始する。
今日はメイリーンが待ちに待った宝剣の訓練だ。
王城でのお茶会で、国王ヨハンが気まぐれのように下賜した宝剣は、儀礼用の魔法剣で、見た目は金を使って彫り込みがしてあり、柄には宝石が輝いている。
「まあ。なんて綺麗なの。宝剣を振れるなんてとっても楽しみです。」
メイリーンは、異世界っぽいアイテムにときめいていた。
見た目が豪華で美しいため、ただの飾りのように思えるが、柄にある宝石に向かって魔力を流すと音楽を奏でることができる。
また、あまり知られていないが、刀身も流した魔力で強化されるので、普通の剣の何倍もの強度と切れ味を誇るまさに逸品だ。
「ええ。メイリーン様に相応しいと、国王陛下が思われたわけですからね。見た目も素晴らしいですが、性能も凄まじいですよ。」
「ま、まあ、そうなの。」
せっかく盛り上がっていた気分に、いつものマクロン節がちょっと冷や水をかけてきた。
一瞬だけ少し熱が引いてしまったメイリーンだったが、気を取り直して、再び宝剣に向き直った。
「それでは、マクロン様。教えていただけますか。」
「はい。王城の者に確認したところ、まずは宝剣をしっかりと持ち、少量から宝石に向けてゆっくりと魔力を流すそうです。そして、宝石に十分な魔力が集まると段々と光輝きます。その後、剣舞を踊るように長めに振ると、音が鳴るそうです。」
「わかりました。では、持ってみますね。」
「メイリーン様、魔力を流すのはテーブルの上で行ってみましょう。何かあったときでも、すぐにクッションの上に置けますので。」
「ええ、そうしてみます。」
庭の隅っことは言え、今日はわざわざ宝剣のためにテーブルを出してあった。
そして、台座になっている長方形のクッションと、その上の宝剣の前にメイリーンが立つ。
どの角度から見ても美しい宝剣を手に取り、鞘から刀身を抜く。美しく光を反射する鋼が現れた。
訓練用ではない、初めての自分の剣にしばし見惚れたメイリーンだったが、周りからの視線を感じて、魔力を流す工程に移った。
「それではいきますね…。」
数十秒程、身体の巡りを意識していると、温かな魔力の循環をしっかりと感じることができた。
その後、指先から少量ずつ魔力を放ち、柄にはまった宝石に移していった。
薄くて少し透けていた緑色の宝石が、徐々に色濃くなり、そして光輝き始めた。
あまりに美しい輝きに、その場にいた全員が見惚れていた。
「なんて美しい。」
「ええ、いつまでも見ていられますね。」
宝剣を間近で見れる人間は王城の限られた者だけなので、全員が人生で初めての経験だった。
「それでは、ゆっくりと振ってみますので、少し離れてくださいね。」
「かしこまりました。」
「今すぐに。」
口々に了承の意を示して、五から七歩程度、離れていった。
メイリーンは、周囲に気を配りながら、ゆっくりと横になぎ払う動作をした。
「シャラララララララー。」
美しい音が鳴り響く。曲ではなく、音そのものが流れるようだった。
「め、女神のような美しさだ。」
「わかります、マクロン様。メイリーン様が神々しいですわ。」
「ああ、なんていう素晴らしさ。このような光景を目にするなんて。」
あまりの光景に興奮して口々に感動を述べ合う、マクロン、シャーリー、ジョンだった。
美しい装飾、白く反射する刀身、宝石が放つ輝き、それを舞うような動きで優雅に扱う美少女。あまりに絵になる光景だった。
メイリーンは集中して宝剣を振っている。
「シャラララララララ〜。」
振り続けてみてわかったことだが、速度を変えて抑揚をつけたり、角度を変えると音階が変わるようだった。
しばらく振り回して楽しんだメイリーンは、ふと我に返って、周囲の面々を見てみた。
「あれ…え?」
なぜかむせび泣きながらこちらを見ている三人に驚いて、体がびくっとなり、反射的にぐっと剣を握っていた。
「そ、そろそろ、休憩にしましょうか。」
みんなして一体なんなんだと思いながら、宝剣を鞘にしまったのだった。
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