43話
白亜の王城では、パーティーのない日でも、豪華な調度品がずらりと並び、一流の庭師が選定した花々が美しい花瓶に華美に飾り付けられている。
そんな王城の一室、国王ヨハンの嫡子である第一王子のアウグストは自室のソファでお茶を飲みながら、ぼんやりとした様子で考え事をしていた。
「あんなに美しく、聡明な人間がいるとは…。私より年下なのに、穏やかで賢く優しい。そして、魔法の才能にずば抜けている。学院で周りにちやほやされて、持てはやされているだけの私なんてたいしたことないな。はあ…。」
アウグストはメイリーンにお茶会で会ったから、何度も何度もその存在について考えてしまう。
その圧倒的な美しさ、そして、英知ある言動。何よりも魔法の才能は稀代のものだった。
どうやっても太刀打ちできない超越した存在だと思った。
「私なりの誇れる能力…。なんだろうか。剣術や馬術をもっと頑張るか…。いや、それだけではとても…。馬術なら弓も合うが…、うーん。王族らしさがでないな。何かないか。王族、王族、王族…、そうか、帝王学が良いかもしれないな。」
ぶつぶつと独り言をつぶやいては、思考の渦にはまり、抜け出したと思ったのに、またメイリーンのことを考えてしまう。
王子にとってのメイリーンは、短い人生の中でぶつかったことのない巨大な壁だった。
ライバルとしての立ち位置さえ掴めない、高さのわからない壁。
それゆえに、どうしたら自分も同じ土俵に上がれるのか考えこんでしまうのだった。
「いや、王族としての振る舞いを磨くことが良いかもしれない。マナーに力を入れるか。
…そうだ。まだ国外を知らないだろうから、そう言った話をするのもいいかもしれない。学院にいる留学生から話を集めてみるのも良いだろう。」
長々と部屋にこもって考えていると、次第に脱線して、次にあったらなに話そうと考え始めていた。
王族にも思春期はあるのだ。
「マナーや異国の知識で会話を磨き、剣術や馬術で体を鍛える。そして、帝王学を修めることで王族として洗練された完璧な存在になる。我ながら素晴らしい!!!」
立ち上がって、わなわなと歓喜に震えるアウグスト王子。
早速、家庭教師に相談しようと、メイドに呼んでくるように依頼した。
「ああ。素晴らしい。これなら対等どころか、年上の王族としての威厳があって格好良いぞ。ふはは。」
そう言って、満足そうに笑みを浮かべると、再びソファーに沈み込むように座った。
そして、メイドに連れられた家庭教師がやってきたので、今後のスケジュールについて、マナー、剣術、馬術、帝王学を学びたいと伝えた。
これならメイリーンに並び立てなくとも、同じ完璧な超人のカテゴリーに入れるだろうと息巻くアウグスト王子だったが、家庭教師は眉間にしわを寄せて考え込んでしまった。
「どうしたのだ?」
「いえ、公務と学院の授業以外でさらにこの科目数をきっちりこなすとなると…、不眠不休でも難しいですね。」
「そ、そうなのか…。」
「ええ。それにこなすだけではなく、せめてどれか一つに絞りませんと習熟度に問題があります。むしろ半端な知識となりましょう。」
「そうか…。」
愕然とするアウグスト王子だった。
メイリーンに己の能力を見せつける日はまだしばらく長い道のりがあるようだった。
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